AirPods Pro 3
https://www.apple.com/jp/airpods-pro/
※この記事は、発売に先行して貸与された機材と、発表会での取材を元に執筆している。
9年前に初代AirPods、6年前に初代AirPods Pro
9年前、2016年の秋に、筆者がはじめてアップルのUSでの発表会に呼ばれた時に、サンフランシスコのBill Graham公会堂で、ヘッドフォンジャックが廃止されたiPhone 7と一緒に発売されたのが初代iPhoneだった。
実は高機能なAirPodsに注目【発表会現地レポート】
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それまで、完全ワイヤレスイヤフォンといえば、ペアリングに手間がかかる、充電キャパシティが少ないなど、手間のかかる存在だったが、このAirPodsがすべてを変えてしまった。当初は『耳からうどん』と揶揄する人もいたが、現在の普及度合いは御存じの通り、世界で一番愛されているイヤフォンであることに異論を唱える人はいないだろう。
続いて、完全ワイヤレスなのにノイズキャンセリング機能を搭載したAirPods Proが登場したのが2019年秋。つまり6年前だった。メディア向けに貸し出しを受けたAirPods Proを、家に帰るのも待ち切れず、六本木ヒルズのベンチで装着し、オンになった途端に広がった静寂は今も忘れられない。
AirPods Proは、突然の静けさであなたの集中力を最大限に引き出す
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続いて、2022年の秋にはAirPods Pro 2が発売された。
ノイキャン性能2倍、低音の音質爆上がりの第2世代AirPods Pro先行レビュー
https://dig-it.media/thundervolt/article/766714/
その後も、ヒアリングサポートに対応したりと、AirPodsはソフトウェア面でもずっと進化を続けており、ヘルスケアデバイスとしての側面も持つようになってきていた。
AirPods Pro 2の新機能『ヒアリングサポート』を、難聴のある人に試してもらった
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低音の広がりが大きく向上。ノイズキャンセリング効果も2倍
そこに、今回、AirPods Pro 3の登場である。もう音質も十分に良いし、進化のしようがないように思えるし、さらに搭載チップはAirPods Pro 2と同じくH2だというから、今回は大きな変化はないのかと思ったのだが……甘かった。またしてもAirPods Proは大きく進化してきていたのだ。
まず驚くのはその音質。H2チップ搭載ということで処理能力は変わらないはずなのだが、音響設計の修正によって、音質は誰にでも分かるぐらい大きく進化してきた。
設計変更されたのは、空気が外側へ抜ける部分の容量や形状のようなのだが、ベースやバスドラムのような低音の広がり、リアリティが大きく向上している。
Apple Parkでの試聴時には、まず最初に先の映画『F1/エフワン』で使われた、クリス・ステイプルトンの”Bad As I Used To Be”を聞いて、その低音に驚かされた。
次にセバスチャン・イングロッソの”A New Day(feat Céline Dion)”で、低音の響きと広がり、そしてボーカルの抜けの良さを体験できた。続いてアレクサンダー・グラントの”BLUH BLUH BLUH”でアコースティックサウンドの再現性の高さと、低音の響きの迫力、超高音ボーカルの美しさを体験できた。このアップルの選曲、AirPods Pro 3を購入したら、ぜひ試してみていただきたい。
進化の秘密はハードウェア的な音響設計にある
ノイズキャンセリング性能も2倍になっているという。
歴代のAirPodsの美点は自然さにある。音も、ノイズキャンセリングも、どこかの性能が尖っているのではなく、ニュートラルできれいなサウンドが楽しめる。悪くいえば特徴がないのかもしれないが、有線のEarPodsの時代からアップルのサウンドチューニングはずっとそうだ。
考えてみれば、世界中でずば抜けてたくさん販売されているイヤフォンなのだから、そこから回収されて、次期モデルに投じられる開発費もずば抜けているのだろう。外観があまり変わらなくても、同じH2チップが搭載されていてもこれほど変わるのだから驚いてしまう。
ちなみに、AirPods Pro 3の本体は2より若干小さくなっていて、より多くの人の耳にフィットするようになっている。イヤーピースの設計変更は音質に大きな影響を及ぼしているそうだが、互換性はない。
購入時には標準のMサイズが装着されているが、予備で付属するイヤーピースはXXS、XS、S、Lの4種類、合計5種類となっており、よりさまざまな人にフィットするようになった。日本人は耳の穴の小さい人が多いそうなので、これまでXSを使っても窮屈だったという人も、よりフィットする可能性が高くなっているかもしれない。
ちなみに、フィットしていると思っても、それはユーザーの思い込み……ということもあるので、設定アプリの中にある『音響の密閉状態をテスト』という機能を使ってみて欲しい。「実はもっと大きい(もしくは小さい)イヤーピースを使ってみるべきだった」ということもあるかもしれない。
あなたのドキドキも伝える
本機の特徴的なのは光学式の心拍計を搭載していることだ。
Apple Parkの中を、AirPods Pro 3を装着して、散歩して心拍の計測を体験するセッションがあった。あいにく珍しく雨が降っていたので、フィットネスセンターの階段と軒先を歩いただけだったが、それでも心拍が変化するのを体験することができた。
Apple Watchユーザーとしては、「Apple Watchで測るから別にAirPodsで測らなくても……」と思うのだが、世間ではApple Watchユーザーより、はるかにAirPodsユーザーの方が多いだろうから、散歩やジョギングの時により多くの人が心拍データを取れるようになるということで歓迎すべきことだろう。
また、IP57の防水規格に対応したので、汗や急な雨でも安心なので、よりジョギングなどのアクティビティに使いやすくなっている。

いよいよ『ほんやくコンニャク』が実現。ライブ翻訳デビュー。ただし、日本語は『年内』
そして、私のような英語の不得手な人間にとっては非常に楽しみな機能が『ライブ翻訳(ベータ)』だ。つまり、ドラえもんの『ほんやくコンニャク』がついに実現したような機能だ。
ちなみに、この機能はApple Intelligenceの機能なので、iPhoneがApple Intelligenceに対応している必要がある。AirPods側は、最新バージョンにアップデートすればAirPods Pro 2、やAirPods 4でも使うことができる。
相手の話している音声のボリュームを抑制して、翻訳した言葉をイヤホンに流してくれる。こちらの回答は、話せばiPhoneに表示されるし、タップすれば再生することもできる。また両者がAirPods Pro 3を使っていれば、よりスムーズに会話できる。
ライブ翻訳
Apple-Event-AirPods-Pro-3-Live-Translation-Conversation-v
英語、フランス語、ドイツ語、ポルトガル語、スペイン語は発売後すぐに使えるようになり、年末までに日本語、イタリア語、韓国語、中国語(簡体字)に対応するという。
この開発中の英語-日本語のライブ翻訳を体験することができた。
どのぐらいのレベルかというとなかなか表現が難しい。
言語の翻訳は良くできているから、相手が対応してくれるつもりがあればかなり上手くコミュニケーションが取れるだろう。もちろん、こうした道具の常で、相手が対応してくれる気がなければ使い物にはならない。つまり、海外旅行時の買い物や地元の人とのコミュニケーションになら、かなり上手く使えると思う。しかし、『ハードな交渉』に使うのは難しいだろう。
おおよそは、上のムービーの通りなのだが、相手の原語での話から注意を反らして翻訳された言葉だけを聞こうとするのが(自分の能力として)なかなか難しいものだ。慣れればできるのかもしれないが。特に英語だと簡単な会話は直接話した方がやりやすいから、その切り替えが難しい。挨拶までは直接話して、複雑な話になるとこちらがイヤフォンの翻訳音声を聞いている……ということを、相手が理解してくれるといいのだが。
あと、動画のように英語-スペイン語のような場合はまだスムーズだが、日本語は語順が違うので、相手が話し終わってから翻訳が始まる。このタイミングのズレをコミュニケーションで吸収できるといいのだが。
来年のiPhone発表会取材の時に、英語話者の方の話を直接聞けるかなと期待したが、周りから多くの話し声が聞こえる状況で、どのぐらい相手の話にフォーカスして翻訳してくれるのかは未知数。
AirPods Pro 2からの買い替えもアリ
一見、AirPods Pro 2から大きく変わっているように見えないかもしれないが、使ってみると激変である。もちろん、AirPods Pro 2が問題なく動いているなら買い替える必要もないかもしれないが、「ちょっと調子が悪い」というようなことであれば、「いいタイミング」である。
特に2022年の発売時にAirPods Pro 2を買った人は、今年で3年。こういうデバイスに搭載される超小容量のリポは劣化も早いので、そろそろ買い替え時ではないだろうか? AirPods Pro 3は、2から買い替えても満足できる製品に仕上がっている。
(村上タクタ)
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