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App Storeは本当に独占的? アップル担当者と日本の開発者のラウンドテーブルを取材して考えた

  • 2025.08.10

来日したApp Store担当者の方々と、日本の有名なiPhoneなどのアプリ開発者のラウンドテーブルを取材する機会があった。ワールドワイドのアプリプラットフォームを運営する人達に意見を言えるのは、滅多にない機会だ。

App Storeのワールドワイドなシニアディレクターが来日

ラウンドテーブルに参加したのは、特務機関NERV防災、ポケモンスリープなど、5つのアプリの開発者と、アップルからカーソン・オリバーさんと、アン・タイさん。

カーソン・オリバーさんはApp Storeの世界展開担当シニアディレクター。iPhone、iPad、Mac、Apple Watch、Apple TV、Vision Proのアプリを世界に届けている。

「我々のチームは世界中の開発者をサポートしており、世界175カ国のお客様にアプリを発見してもらう機会を作るために、編集者やマーケターのチームを持っています。私は13年間App Storeで働いていますが、仕事の中で一番好きなことはApp Storeを特別な存在にしているアプリやゲームのクリエイターのみなさんにお会いすることです」と挨拶をした。

Appマーケットプレイスプラットフォーム&テクノロジー担当シニアディレクターのアン・タイさん(左)と、App Storeの世界展開担当シニアディレクターであるカーソン・オリバーさん(右)。

アン・タイさんはAppマーケットプレイスプラットフォーム&テクノロジー担当シニアディレクター。

「アップルに入社して15年近くになりますが、App Storeの立ち上げ当初から関わってきました。最初は500本しかなかったアプリが、世界で180万本のアプリへと成長していく過程を見守ることができ、大変嬉しく思っています。私の仕事の大きな部分は、ユーザーにとって安全で信頼できるマーケットプレイスを構築することです。App Store Connect(開発者がApp Storeにアップロードするための仕組み)、TestFlight(開発中のアプリを、他の人にテストしてもらうための仕組み)、Game Center(ゲームをソーシャルに楽しむ仕組み)、StoreKit(アプリ内課金や、App Store内でのセールスをプッシュするための仕組み)は、私たちがみなさんのアプリを多くのユーザーにお勧めするための仕組みの一部です。今回は、みなさんの開発の原動力や、大切にされていることを聞くのが楽しみです」と語った。

『NERV防災』の石森さんはアクセシリビリティ思想を評価

まずは『特務機関NERV防災』を開発したゲヒルン株式会社の石森大貴さん。御存じのように、『特務機関NERV』はアニメ・エヴァンゲリオンシリーズに出てくる組織(余談だが、英語圏の人はNERV(ネルフ)を、ナーブと読むらしい)。東日本大震災の際に、Twitter(現X)で、NERV風に情報発信してたところ、多くの人に信頼を寄せられるようになり、公式にエヴァンゲリオン製作者であるスタジオ・カラーなどから許諾を得られたという経緯がある。

「東日本大震災をきっかけにXで情報発信をするようになったんですが、他エリアの川の氾濫など、ご自身には危険のない情報も大量に流れ込んでしまうという問題から、アプリを開発するようになりました。私が元々色覚異常があって、幅広い人に認識しやすい配色というのを意識しています。iOSやmacOSのアクセシビリティの思想というのは、そういう意味で大変参考になっています」と石森さんは語った。

 

ヘルスケアを使うことで、ポケモンスリープはApple Watchとも連携

株式会社ポケモンのポケモンスリープ推進室シニアディレクター小杉要さんは、「iOSは、ベッドの上で朝起きてポケモンの寝顔を集めるという、このアプリの全ての体験をカバーできる重要なデバイスだと考えています。Apple Watchとも重要な関わりがあります。ヘルスキットをポケモンスリープに適用したことで、Apple Watchで計測した睡眠データをiOSのヘルスケアを通じてポケモンスリープに連携することができて、睡眠計測の部分でより自然な形でユーザーがゲーム体験できます。実際にApple Watchユーザーの継続率は、通常のスマートフォン、iPhoneユーザーよりも高い継続率を示しています」と語った。

App Storeのおかげで、小さな会社でも世界を相手にビジネスできる

「FirstSeed Calendar」「FirstSeed Tasks」という、生産性向上アプリを開発しているのが、株式会社ファーストシードの大榎一司さん。偶然このラウンドテーブルの直前に、150の国と地域で『今日のアプリ』として取り上げられたという。

「エンジニア3人、デザイナー2人の小さなチームでアプリを開発しているが、App Storeのおかげで、世界中のユーザーにプロダクトを届けることができて、たいへん感謝しています。決済も担ってもらっているので、各国の税制などを気にする必要もないです」と感謝の意を述べた。

セキュリティが担保されているところこそ、アップルプラットフォームの美点

『みてね』は株式会社MIXIのアプリ。祖父母など離れたところに住む家族とも子どもたちの写真を共有できるアプリとして絶大な人気を持つ。ラウンドテーブルに参加したのは同社みてね事業本部の本部長佐藤僚さん。mixiは20周年、みてねは10周年を迎えるという。

「英語名はFamily Albumと言いますが、10年前にMIXI創業者の笠原健治に子どもが生まれてまして、すごく写真を撮ったとのことです。で、この写真を上手く整理したり、離れたところに住むおじいちゃん、おばあちゃんに共有できるアプリを作りたいということになり、同じような課題を抱えているメンバーでチームを作って開発を始めました。ユーザーの40%は祖父母、つまり高齢者の方なのでシンプルなUIを保つ必要があります。また、現在グローバルでのユーザー登録数は2500万人です。それだけの数のお子さんの成長記録を扱ってるので、プライバシーというのは非常に重要だと思っています。プライバシーを守りながら使いやすいUXを提供するという面で、アップルのプラットフォームは設計が閉じているので、セキュリティの面で非常にアドバンテージがあります」と、佐藤さんは語った。

「マネタイズの面でも、App Storeには助けられています。先ほども話題に出てましたが、『みてね』は世界中のお客様にサブスクリプションで使っていただいています。各国の税制に合わせたタックスの処理などを自分たちでやろうとしたら、とても大変ですが、それをApp Storeではプラットフォーム側で処理してくれる。これはものすごく助かるし、ビジネスとして成立しやすくて価値があると思います」

マネライズの濱北さんは、プロモーション手法について質問

株式会社マネライズの濱北哲郎さんは、家計簿アプリ『マネライズ』の他、『手帳Mix』というスケジュール帳アプリ、『ルーティン』という習慣化アプリなどシンプルだけれど便利なアプリを数多く作っている。

「SwiftUIを使えば、ひとつのコードからiPhone、iPad、Macなどに自動的に対応したインターフェイスを生成できるのが我々のような小規模な開発者にとってはとても便利。iPhoneだと17ポイントの文字のところが、もっと細かい文字を見られるMacの場合は13ポイント……など、自動的に調整してくれる」と濱北さんは語った。

また、彼からは「アプリを成功させるには、どのようなアプローチが必要か? アプリ市場も成熟してきて、数多くのアプリがある中で埋もれてしまいがちです。若い人が今からスタートしても多くの人に知ってもらえるようにするためにはどうしたらいいですか?」という質問があった。

それに対して、タイさんはこう答えた。

「成功するアプリとは、開発者自身が抱える問題を解決しているアプリです。我々は開発者がストアでのパフォーマンスを把握するのに役立つ分析機能も提供しています。『Peer Group Benchmarks』という機能では、ストア内で同様のビジネスモデルを持つ他のアプリと自社アプリのパフォーマンスを比較できます」

「さらに、『プロモーションコード』、ソーシャルメディアマーケティングアセットを作成するための『App Store Connectツール』、『編集記事へのアプリノミネート機能』などを用意しています。App Storeには世界各国に数十人規模のチームがおり、世界中のお客様のために新しいアプリやゲームのテストとキュレーションに専念しています。 私たちは、App Storeの『Today』タブ、『Apps』タブ、『ゲーム』タブなど、様々な方法で、適切なお客様に向けてアプリの情報をお伝えすることに多くの時間を費やしています」と語った。

この、安全で先進的な環境を『スマホ新法』が破壊する不安

いずれの開発者の方も、安定したプラットフォームで、世界中に販売することができ、セキュリティも担保されていることに大変感謝されていた。もちろん、販売の競争はあるので、どうすれば効果的にプロモーションできるかは悩まれているようだったが、それに関しては、ツールなどに関するアドバイスがあった。

今後『スマホ新法(スマホソフトウェア競争促進法)』で、このApp Storeの環境が日本においては制限されていく可能性がある。特に、セキュリティの面での影響は大きく、機能の開放を盾にMetaやGoogleなど広告で収益を上げている企業が、アップルデバイスからも情報を獲得しようと、アプリ機能に圧力をかけている動きもある。

すでに、Androidという選択肢もあるのだから、多少リスキーでもオープンがいいという人はそちらを選べばいい。どうか公正取引委員会はアップル製品の安全性を破壊しないでいただきたい。

(村上タクタ)

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