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『F1/エフワン』の試写会を、Steve Jobs Theaterでやるなんて、僕向きのイベント過ぎる!
試写会が行われたのはWWDC 2日目、現地時間6月10日の夕方のこと。

Steve Jobs Theaterは、2017年のiPhone Xの発表会で初めて使われた場所で、地上に円筒形のガラスで支えられたカーボンの屋根を持つエントランスがあり、地下に1000人規模を収容できるステージがある。iPhoneの発表会は毎回ここで行われる。当然のことながら、非常に美しく巨大なディスプレイがあり、音響環境も、シートも非常に上質なものが調えられている。ここで映画を見られるのは非常にぜいたくなことだ。

上映前にはアップルのサービス担当シニアバイスプレジデントのエディー・キューと、本作のプロデューサーであるジェリー・ブラッカイマーの対談なども行われたそうだが、筆者はその時間に他の取材がスケジュールされており参加できず。映画が始まる直前に会場に滑り込んだ。
(以下、ストーリー詳細については語らないが、映画の内容に多少触れるので、完全にネタバレなしで映画を見たい方は6月27日視聴後にお読みいただきたい)
こんな映像が撮れるなんて!
実は、現場では日本語字幕はなく、英語が不得手な筆者はセリフが7割ぐらいしか理解できなかったが、それでも充分に楽しめた。
映像の迫力は想像以上。F2のシャシーの上に、F1を模したボディを架装した車両を全チーム分作ったとのことだが不自然な部分はないし、(ちょっと演出がある部分はあるが)ほとんど、実際のF1の中継と変わらない、もしくは(撮影専用の状況で撮っているので)それ以上の映像を満喫できる。観客席の写り込む部分など、一部の映像は実際にF1のレース開催時に撮影されたとのこと。昨年のシルバー・ストーンや、鈴鹿でも撮影されたことが報じられていた。

主人公のソニー(ブラッド・ピット)と、チームメイトのジョシュア(ダムソン・イドリス)が所属するチームAPX GP(エイペックス・ジーピー)は、まるで本当にそういう11番目のチームがあるかのようにF1サーカスに溶け込んでいた。
映画のストーリー自体は、ブラッカイマープロデュース作品の定番(フラッシュダンスや、デイズ・オブ・サンダー、アルマゲドン、トップガン マーヴェリック……などなど)の定石通りで、ロートル(もしくは何らかの不利な条件)を抱えてカムバックした主人公が、才能あるニューフェイスとぶつかりあいながら、最後には双方のいいところを認め合い、協力して感動のフィナーレへ……という話ではあるが、ハリウッド映画は定番通りだから爽快感があるという気もする。
F1好き向けに、細かいネタを拾ってみた
F1好きとして気がついたところ、面白かったポイントは以下の通り。
●全チームが出ている。さらに、ザク・ブラウンや、トト・ヴォルフもめっちゃ出演してセリフも言ってる。
●角田裕毅選手も出ている。どのぐらい出ているかは、ぜひ映画館でご確認を。
●チームは23年現在のもの。つまり、アルファタウリがいるし、ハミルトンはメルセデスにいるし、ペレスもレッドブルで活躍中。
●とりわけ、ノリス、ルクレール、ラッセルはよく出ている。当時今より若手だったから?
●反面、フェルスタッペンは協力的でない感じに見える。メルセデスのハミルトンが仕切っていたからか、そもそも協力的には見えない人なのか?
●現役レーサーが仮想のレーサーに抜かれるシーンがあるから『バリバリ伝説』のロン・ハスラムや、クリスチャン・サロンを思い出した。実際に抜かれる場面のあるルクレールやペレスは納得したのか? それともハミルトンが言うから仕方なかったのか?(笑)
●ソニーはゼッケン7、ジョシュアは9。以前はライコネンや、マゼピンが使っていた番号だけど、たしかに空き番号だものね。そういえば、WWDC Keynoteのオープニング画像でクレイグ・フェデリギが乗ってたのはゼッケン9。
●そういえば、来年キャデラックがF1参戦する。TOMMY HILFIGERがスポンサーだったりと共通点があるけど、何か関わりがあるの?
●冒頭のテストシーンで、『パープル! パープル! イエロー……』となって、がっかりするシーンがあるが、これはF1好きにしか分からない演出かも(笑)ちなみに『パープル』は区間タイムが全ドライバー中最速、『グリーン』が区間タイム自己ベスト、『イエロー』は自己ベストを更新できず、を意味する。当然パープルが続くとベストラップが出るが、イエローが入ると期待は薄い。
●レースはすべて決勝しかない。最近のF1が、FP(フリープラクティス)1〜3と、予選でほぼ決してしまうことを考えると、しっくり来ない。というのも、最近は20台のタイムが1秒以内に収まるぐらい僅差のレースが続いており、昔の『スリップストリーム』が使えた時代と違って、全走車の後ろは気流が乱れた『ダーティエア』としてタイムアップを阻む要素となっている。ゆえに、決勝での抜きつ抜かれつは非常に少なくなっており、予選順位がほぼすべてを決する。だから予選について語られないのは違和感があるのだ。
●今のF1では何回転もして炎上するような事故はほとんど起こらない。演出上そういう描かれ方をするのが、F1側が映画化をいやがる理由のひとつだろう。
●熱心なF1ファンは『現実の方が面白い』『現実の方がもっとドラマティック』と思うかもしれない。おそらくそれは事実だ。しかし、この映画をきっかけにF1を観るようになる人が増えるのはいいことかもしれない。そのうちフェルスタッペンも「ブラッド・ピットの映画に出てた人」と認識してF1ファンになる人も生まれるかもしれない。
●アップルが制作に携わっている映画だから、Googleがスポンサードしているマクラーレンや、hpがスポンサードしているフェラーリは写りにくいのかと思ったが、そんなことはなかった(笑)
アメリカンレーシング+F1
背景には、現在のアメリカのF1ブームというものもあるだろう。
昔は、「アメリカ人はNASCARやインディなど楕円のコースを走るシンプルなレースが好きで、複雑なコースを走るF1は好まれない」と言われたものだが、今、アメリカでは空前のF1ブームで、1国1開催の基本を破ってアメリカGP、マイアミGP、ラスベガスGPの3回が行われている。背景には、IT企業を中心としたスポンサーにとって、アメリカでのプレゼンスが重要であるということもあるだろう。
この映画も、実は冒頭にデイトナやBaja(バハ)の話が出てくる。
実は、筆者はバイク雑誌時代に、当時のボスだった元世界GPレーサーがフロリダのデイトナのレースに出場した際に、メカニック(というほどではないが、手伝い……でもタイヤ交換とかも)をしていたことがあるのだ。

ゆえに、冒頭のデイトナのシーンが懐かしくて……。Bajaはメキシコのバハ・カリフォルニア半島を走るデザートレース。Baja 1000が有名で1000マイル(1600km)を一気に走るというすさまじくタフなレースなのだけど、やっぱり知り合いが参加した経験があって近しい気がする。
F1という最近アメリカでも流行り始めたレースを、どっぷりアメリカンなレースでサンドイッチした構造で、やっぱりアメリカ人にF1文化を知って欲しいっていうことなんだなぁ……という映画だった。
(村上タクタ)
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