開催場所や、方式の変化も大きい
筆者は2017年から WWDCを現地取材しているので、早いもので9年目ということなる。9年前は、まだサンノゼのマッケナリーコンベンションセンターで開催されており、開発者の方も(参加料が高額だったとはいえ)一般から募集されていたので、世界中から6000人もの人が集まっており、大変にぎやかだった。
また、マッケナリーコンベンションセンター時代は、すぐ横のホテルに宿泊していたので、ホテルで原稿を書いていて、取材時だけ会場に(Keynote以外にもいろいろと取材がある)行けば良かったので、仕事はしやすかった。今は、Apple Parkで開催されており、シャトルバスで2〜30分かけて会場に移動するので、気軽に往復ができず、Apple Park Visitor Centerで原稿を書かなければならない時間も長いのだが、たいていカフェエリアは満席で少々不便を囲っている。とはいえ、Apple Parkの設備は素晴らしく、そこに出入できるだけでもとても楽しいのだが。
ともあれ、そんな会場の変化の様子も含めて、9年前からその歴史を振り返ってみよう。
WWDC 17 黒いiMac Pro登場
筆者が初めて招待いただいたWWDCは、サンノゼのマッケナリーコンベンションセンターで開催されていた。前年の2016年秋のiPhoneの発表会は、サンフランシスコ市内のモスコーンセンターだった。つまり、この頃は公共の施設を使って発表会を行っていたのだ。どちらの会場も街中だったので、街中での飲食も楽しみのひとつだった(まだ円高だったし、サンフランシスコ市内の治安も良かった)。
この年は、黒いiMac Proが発表された。iOS 11にファイルアプリが設けられたり、watchOS 4にSiri文字盤が設けられだいぶ使い勝手が良くなった。また。VRアプリがしきりに紹介されはじめ、今から思えばこの頃からVision Proの基礎開発が始まっていたのだと思う。また、Sneak PreviewとしてHomePodがチラ見せされた。
また、Apple Parkはすでに建設途中で、筆者は現場を見に行って壁越しにのぞき込んで、建設中の写真を撮ってレポートしたりした。
WWDC 18 Macの内部コードのiPadとの共通化発表
前年9月のiPhone発表会は、完成したApple ParkのSteve Jobs Theaterで行われたのだが、WWDCは変わらずサンノゼのマッケナリーコンベンションセンターで開催された。Steve Jobs Theaterは(目算で)1000人規模しか入れないので、世界中から(目算で)6000人の開発者が集まるWWDCには使えなかったのだ。
この年もVR系の機能がいろいろと発表された。iPhoneのカメラに写して長さを測れる『計測』アプリや、iPad用のレゴアプリが発表されたのもこの年だ。Siriのサジェスチョンやショートカット、スクリーンタイム、MeMojiなども発表された。macOS 10.14 Mojaveにはダークモードが追加された。
そういえば、Apple Watchのアクティビティの機能が大幅に充実したのもこの年だ。
Sneakとしては、macOSとiOSの内部構造が共通化されていくことが発表された。
WWDC 19 アルミ削り出しが特徴的なMac Pro登場
ハードウェアとして華々しくモジュラー型のMac ProとPro Display XDRが発表された。フルセットで700万円以上になると話題になった。
この年に、iPadOSがiOSと分離することが発表された。macOSに続いてiOSにもダークモード導入。写真編集機能の強化などが発表された。
macOSではiTunesアプリがMusic/TV/Podcastの3つに分離した。そしてSidecarが導入され、Macの外部ディスプレイとして、iPadが使えるようになった。
WWDC 20 オンライン開催。Apple Silicon発表
2020年には世界的なパンデミックが起こり、リアルでのWWDCは開催されずオンラインのみとなった。Keynoteもこの年から事前に収録された動画となった。
しかし、そんな中、Apple Siliconというビッグニュースもあった(さぞかしこのビッグニュースをFace to Faceで発表したかったことだろう)。そして、2020年の秋にM1チップを搭載したM1 MacBook Airが発表される。
WWDC 21 オンラインでのコミュニケーションの進化
2021年のWWDCもオンライン開催。
FaceTimeの進化が発表されたり、Apple Watchのマインドフルネスアプリが発表されたりしたのが、自由に戸外に出られなかった厳しい時代だったとことを思い出させる。iPadのマルチタスクUIが強化されて、MacとiPadが接近していった時代だった。
WWDC 22 現地取材復活、M2 MacBook Air登場!
久々に現地で開催されたWWDC。
国外への移動、大規模な人が集まるイベントとあって、非常に慎重な対策がさまざま取られ、これまで我々メディアも入ることができなかったApple Parkの一部を開放し、 Mac Caféというカフェテリア部分と、その外の芝生エリアを使った開催方式となり、以後この開催方式が定着する。
一般のエンジニアの参加はオンライン中心となり、ごく限られた人数の招待エンジニアのみが現地参加するイベントとなった。
我々メディアも、日本、出発前、会場に入る前、帰国前……と毎日PCR検査をして参加しており、アップルオリジナルのマスク(ティム・クックが使用しているもの)などが配布されたりした。
この年はiPadOSにステージマネージャーが導入され、前年よりさらにMacとiPadが近づいた年だった。
またオールニューボディのM2 MacBook Airが発表された。最初からMシリーズチップを搭載することを考えたファンレスモデルで、非常に静かなのが特徴だ。
WWDC 23 Vision Pro/visionOS発表!
Vision Proが発表された衝撃的なイベントだった。
現地取材に行ったメディアでも8人だけが、中庭に作られた特設の仮設リビングルームでこのデバイスを体験できた。装着写真なども撮れない非常に限られた取材だったが、非常にインパクトのある発表だった。
すぐに手に取れるハードウェアとしてはM2 MacBook Airの15インチモデルが発表された。
WWDC 24 Apple Intelligence発表!
世間が、AI一色染まる中、後追いではあったがApple Intelligenceが発表された。この時点ではまだかなり完成度は低かったのか、Apple Intelligenceをその後1年近くをかけて徐々に機能公開されていった。
では、WWDC25はどうなるのか?
こうやって振り返ってみると、たった9年でも、会場が変遷し、開催方式が変わり……と激動の9年だった。
明日の会場はまだ正確には発表されていないが、おそらく2022年からのMac Caféの外の特設ステージで開催されると思われる。もしそうなら、4年目の同ステージでの開催だ。また、ハードウェアがあればKeynoteのあとにメディア向けのタッチ&トライがSteve Jobs Theaterで行われるだろう。
過去を振り返ってみると、やはり2018年のmacOSをiOS(iPadOS)に近づけるという発表、2020年のApple Silicon発表、2023年のVision Pro、2024年のApple Intelligenceの発表のインパクトが大きかった。
現状を考えると、Apple Intelligence、visionOSのさらなる進化が一番期待されることだろうか? 歩み寄りを見せ続けているMacとiPadの融合がさらに進む可能性もある。
ハードウェアの発表はある年と、ない年があるが、世界中からメディアを集めて動画を見るだけ(ではないが)……というのもツライものがあるので、何がしか『現地に来た甲斐がある』発表を期待したいところ。
開幕は日本時間10日午前2時。現地からまずはXで速報をお伝えするので、まずはフォローして楽しみにお待ちいただきたい。
X(ThunderVolt)
https://twitter.com/ThunderVolt_mag
(村上タクタ)
関連する記事
-
- 2025.06.05
Apple Watchを使っている理由【新CM登場人物インタビュー】
-
- 2025.04.24
本日、 Apple Storeで『リングを完成させようグローバルデー』のピン配布
-
- 2025.04.25
Apple Watch登場10周年。この10年で何が変わった?
-
- 2025.04.15
Apple Watchバンドのチタニウムミラネーゼループが、すこぶるいい