実際のところ、web3、NFT、DeFi、DAO、ブロックチェーン、メタバース……なんていう専門用語を聞くと、世間では拒否反応を示す人も多いのではないだろうか? そういう用語を操る人たちが「アタマの悪いヤツは分からなくていい」と思うのもまた驕慢というものだと思う。
ドットコムバブル以来、テクノロジーが巨万の富を得る手段になっているのも確かだが、最先端のテクノロジーに関わる人、ベンチャーキャピタリストの中には本当にテクノロジーを活用して「悩み多き世界を変えたい」「困ってる人を救いたい」「未来の地球をより良いものにしたい」と願ってる人もいるのだ。
テクノロジーに関わるアタマのいい人は、極力我々のような庶民にも分かるように説明して欲しいし、一般の方も斜めに見ずに(金もうけの種だけだと思わずに)用語をひも解いて、理解しようとして欲しい。ITへの一般の理解の浅さが、今の日本の凋落をもらたしていることは確かなのだから。
Twitterを日本にもたらしたDigital Garageのカンファレンス
というわけで、Digital Garageの主催するNew Context Conference 2022( #NCC2022 )に取材に行ってきた。Digital Garageはいわゆるネット関連のベンチャー企業に投資するだけでなく、マーケティングから育成を行う企業。NCCは、そのデジタルガレージが力を入れているカテゴリーの最新情報を提供するために、世界中から識者を集めて講演・討論を行うイベント。
New Context Conference 2022
https://ncc.garage.co.jp/
今回のテーマは『web3 Summer Gathering——未来からのテクノロジーの波をサーフしろ』というもので、はっきりいって筆者レベルではタイトルからして意味が分からない(笑)
しかしながら、Web2.0の中心となった(そして今も世界を動かしている)Twitterに大きな投資をして、日本に持ってきたのはDigital Garageだし、価格.com、食べログなどを運営し、ブロックチェーン金融サービスを提供するCrypto GarageもDigital Garageの関連会社だっていうことを考えると、ここから未来を展望する何かが育ちつつあるのかもしれない。
(Twitterだって、Digital Garageが日本に持ってきた。そういえば、このEvan Williamsが来日したMeet Up、筆者も取材に行った……)
web3は『join』するインターネット
冒頭はDigital Garageの共同創業者、元MITメディアラボ所長の伊藤穣一さんの基調講演から。いろいろあって実現しなかったが、この人が日本のデジタル庁のデジタル監になっていればまた違ったかもしれないと思う。
まず、web3についての話だが、伊藤穣一さんの話によると、Web 1.0はread。つまり、多くの人が読むことができるようになったインターネット。そして、Web 2.0は、今我々が享受しているAmazonや、アップル、Google、TwitterやFacebookなどのビッグテックによって実現している一般ユーザーも書き込み、情報発信できるようになった世界。
それに対して、web3は『join』つまり参加できるインターネット。
ブロックチェーン技術などを使い、様々な情報を中央集権的な企業に渡さず、暗号化して埋め込む分散型ウェブの世界なのだという。これにより、ユーザー自身がデータを保持して、誰かが支配することなく誰もが透明性を持って検証可能で、収益を得られる世界が来るのだという。
芸術品などに使われ価値を証明することを可能としているNFTや、それ自身が価値を保証する情報を持ったビットコインなどの暗号通貨、同じような仕組みを組織運営に活用しフラットな組織を実現するDAOなど、web3的技術を運用することで、ビッグテックから再び開かれた平等なインターネットを取り戻せるのだという。
テクノロジーにうとい我々からすると、NFTやビットコインだって、誰か知らない人が儲けてるような話にしか聴こえないが(それこそWeb 2.0がが行き着いた場所かも)……本当にそれが民主的なテクノロジーなのだったら、web3に耳を傾けてもいいのかもしれない。
ちなみに、デジタルガレージ的にはWeb 1.0とWeb 2.0は大文字の『W』で始まり、『.0』が付く。これはソフトウェアのバージョン番号を模しているから。それに対して『web3』なのは、そういう古い(ちょっと前に新しかった)レトリックを廃して、権威主義的な大文字ではなく小文字の『w』で始まるのがオフィシャル表記ということである。
分からないと思いがちなweb3は、多くの人に役立つ技術
NCC2022で語られたことの詳細は取材しながら投稿したこのtweet以下の約100本の投稿をご覧いただきたい。片耳で(不得手な)英語、片耳で同時通訳の日本語を聞きつつ、右手で写真を取りながら左手で投稿しているので、いろいろ意味の通らないところがあったり、よく理解している方からすると間違っているのではないかと思うが、その前提で流し読みいただけると幸いだ。
今日は終日、Digital Garageさん主催の、New Context Conferenceに終日取材に来ています。
Web3、NFT、メタバース……ちょっと難しいお話も多いかと思うのですが、分かる範囲で投稿していきたいと思います。#NCC2022 #DG #Web3SummerGathering #Steve_Jobs_Theater pic.twitter.com/Xgs7TRX8kG
— ThunderVolt(新ガジェットメディア始まります) (@ThunderVolt_mag) June 14, 2022
1日、こうやって話を聞いて思ったのは、多くの一般の人にNFTやブロックチェーン、DAOなど、『web3』というのはワケの分からんものだ……と思われがちだが、実際に多くの人のために役立つテクノロジーなのだと言うこと。
NFTも無名の絵が突如高額で取引された話とか、有名ブランドが広告施策で扱ったような話ばかりが取り沙汰されるが、ゲームであるとか、さまざまな個人の作品にしっかりした価値付けができるようになりそうだ。今は投機的に取り扱われ、価値が急上昇したバブルのような話ばかりが聞こえて来ることが逆に信頼を損なっているのかしれない。DeFiにしても、DAOにしても、もっと一般的に使われるようになれば、世の中いろいろ変わってくるのではないかと思われる。
ベルリン在住のコンピュータゲーム会社Klang Gamesの共同設立者Mundi Vondiさんの「所有の概念はメソポタミアで生まれた。それ以来、所有権の強い国が経済的に成長した。そして、今、世界がよりバーチャルになって、バーチャルな所有権が議論になっている」という話はプレゼンのスライドもユニークで興味深かった。
ベルリン在住の、コンピューターゲーム会社Klang Gamesの共同設立Mundi Vondiさん。
所有の概念はメソポタミアで生れた。所有権の強い国が経済的に成長した。世界がよりバーチャルになって、バーチャルな所有権が議論になっている。#NCC2022 #DG #Web3SummerGathering pic.twitter.com/54M589aFJS
— ThunderVolt(新ガジェットメディア始まります) (@ThunderVolt_mag) June 14, 2022
筆者はNFTというとバブルな感じがしていたが、スプツニ子!さんやKawaii SKULLさん、VERBALさん、草野絵美さんの話を聞いて、有史以来何らかのパトロン、出資者、システムに保証されることが必要だったアーティストの権利が、はじめて独自に得られるかもしれないという話なのだと分かった。
Session 2は「NFTの真の価値と未来のアーティスト」として対談。
モデレーターはSean Bonnerさん。対談に参加するのは、スプツニ子!さんと、Kawaii SKULLさん。#NCC2022 #DG #Web3SummerGathering pic.twitter.com/vnpqlAew72
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次のパネルディスカッションは、モデレーターがJaeson Maさん。対談するのはVERBALさん、草野 絵美さん。
テーマは『アーティストのWeb3における可能性』#NCC2022 #DG #Web3SummerGathering pic.twitter.com/SLPuiAOr2Q
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Cegaファイナンスの豊崎亜里紗さんの話からは、『Defi=分散型金融』が、世界のすべての人に開かれた、ブロックチェーン上の金融サービスであるということが分かった。これまた、新たな大きな可能性を孕んでそう。
午後、最初のSessionは、Cegaファイナンスの豊崎亜里紗さん。Difi、DAOとデリバティブに関してお話。
Defi=分散型金融=世界のすべての人に開かれた、ブロックチェーン上の金融サービス。
伝統的金融の欠点を補填し、個人のエンパワーメントを行う。#NCC2022 #DG #Web3SummerGathering pic.twitter.com/Xl1DW1Gwmz
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QuantstampのAPACリージョナルマネージャー、小田啓さんは、ブロックチェーン上で意思決定できるDAOの話。ヒエラルキーのないフラットな組織、フラットな意思決定って、空虚な理想論のような気もするし、いろいろ問題も孕んでいる気がするが、実現すれば素晴らしいことだ。
小田啓さん、QuantstampのAPACリージョナルマネージャー。
次の10億人のためのWeb3を作る。DAOの面白いところは分散していても意思決定できる。チェーン上で投票ができる。ヒエラルキーのないフラットな組織。#NCC2022 #DG #Web3SummerGathering pic.twitter.com/S9mQHMegnf
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「web3の世界のSuperApp」だというOP3Nの共同創業者であるJaeson Maさんの話も面白かった。Web 2.0の世界だと、YouTubeや、インスタ、SPOTIFY、TikTokなど少数のプラットフォーマーが大部分の利益を握っていたがweb3の世界では、クリエイターが直接利益を得られるようになる。
ちょっと違う筋の話だが、このテクノロジー、メディアには使えないのだろうか? 一次ソースである取材者、一次メディアの記事が、いろんなところにシェアされ、拡散されていく現代のメディアの問題は、そのシェアされた先から一次メディアが収益を得られないことにある。キュレーションメディアや、大手ニュースサイトが得た広告収益が、末端の記者に行き渡らないから、地方や僻地に取材者を置くことが難しくなっている。これって、このブロックチェーンの仕組みで解決しないのだろうか? 取材が終わってからスマートニュース メディア研究所の瀬尾さんと話したら、同じことをおっしゃっていた。我々メディア業界の人間がそう思うのだから、他の業界でもこのブロックチェーンで解決する問題はあるのではないだろうか?
Web3では自分たちの持っているものをお金に替えることができるようにあった。Web2のTIKTOK、インスタ、SPOTIFYなどではわずかしか得られなかった。Web3だと違う。 pic.twitter.com/Q0ygd59D6y
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ポルトガルのリスボンに住むweb3Foundationの大日方祐介さんは、日本がweb3の世界で価値ある存在になる可能性について語っていた。2017年頃にその可能性があったのに、一度その可能性は失われた。でも返り咲く可能性はあるという。
『Web3 in Japan:過去、現在、そして未来』というテーマで、web3Foundationの大日方祐介さん。
大日方さんは、日本のWeb3エコシステムの立ち上げに注力し、イーサリアムジャパンをスタート。#NCC2022 #DG #Web3SummerGathering pic.twitter.com/ZySFX3M8Bq
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なんだって、最初は変わり者のツールだった
分散に意味があるweb3の中心は、Web 2.0の中心であったシリコンバレーでなくなる。コンテンツに価値が生じる世界。だからコンテンツ大国である日本には可能性があったし、これからも立ち後れなければ可能性はあるとのこと。規制環境や、税制の問題さえ解決すれば日本が立ち直れる可能性もあるが……とのこと。
今や誰もが使うインターネットだって、Twitterだって、最初は少数の人が使う「先鋭的な変わり者のツール」だった。
web3も、NFT、ブロックチェーン、DeFi、DAO……なども、現在はバズワードと化してしまっているが、そうやって一度鎮静化してから、我々の生活を支えるシステムとして徐々に浸透していくのかもしれない。ということを考えると、あまり拒否反応を示さずに、徐々に知識として習得しておいた方がいいのかな……と分からないなりに学んだイベントだった。
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