手作業で描く、時間と色気。
手を加えるほどに“生きた表情”を帯びていく、アツレザーワークスの革ジャン作り。今回フィーチャーするのは白と黒の革を採用するシングルライダースにアツレザーワークスの“時間を超越するギミック”を加えたモデルだ。
白の革ジャンは綺麗目な印象が強く、質実剛健なアメカジコーデに取り入れるのはややハードルが高い印象だが、力強い皺が刻まれ、ところどころ茶芯が現れたこの1着には、白革の常識を覆す荒々しく生きた表情が浮かび上がる。一方黒の革は、使い込んで深みのを増す艶と“The Ore”による純銀の装飾が織りなすモノトーンの輝きを個性とする。
そして、白と黒、光と影とも言える抽象的な革色のイメージを繋ぐのは、死者の日をモチーフとした“生と死”を連想させるカラベラパッチ――。メキシコの風刺画から生まれたカラベラは、死者の日の文化と結びつき、死を恐れず生きる喜びを讃える象徴である。それは、使うほどに味わいを深め、時を重ねて生きる革という素材とどこか重なるように感じられる。
アツレザーワークスのモノ作りは、単に装飾のために革を加工するのではなく、革に手作業で時間を刻むアートの側面が付随する。アツレザーワークスが仕立てるのは、革を素材とした時間と色気の造形なのだ。

レザーカービングへ純銀や鉱物を定着させる “The Ore” を武器とする外山篤さん。レザークラフトにおける新旧の技法をミックスし、独自のオリジナリティを演出。レザーを舞台にアートを表現する匠。

トラディショナルなレザーカービングは、ATSU LEATHER WORKSのジャケットやハットなど、様々なアイテムに見られるが、数十種類の刻印を使い分け、手作業で描き上げる繊細な技術なのだ。

“Tony”の最大のアイキャッチであるカラベラパッチはATSU LEATHERの代名詞である“The Ore”で死者の微笑みを表現。伝統的な技術と独自の感覚を融合させた外山さんならではの手仕事だ。
ATSU LEATHER WORKS SINGLE RIDERS “Tony”
国内タンナーでなめした、丘染で仕上げた革厚1.3㎜の渋なめしステアハイドをレザーを使用するシングルライダース。手作業のエイジング加工によって波打つ皺や顔料から浮かび上がる革の茶芯が強調され、長年着込んだような風合いを漂わせる。同デザインのブラックレザー/ホワイトレザーだが、革の表情で全く異なる雰囲気に仕上げられているのも見所だ。最大のアイキャッチである、“死者の日”をイメージソースとしたカラベラのパッチは独自開発の調色技法“The ore”でフィニッシュ。シンプルがゆえに、革の表情を操る匠の業が光るジャケットだ。23万4300円




肉厚なステアハイドのホワイトレザーに配されるカラベラパッチは、ヌメ革のベースにターコイズを用いた“The Ore”とブラスパーツでスカルの微笑みを描く。ホワイトレザーに現れる皺や茶芯が顔を出すダイレクトな経年変化と共に、パッチもツヤやコントラストが増し、新たな表情を演出。上品に捉えられがちなホワイトレザージャケットに、クラシカルな質感と社会風刺のユーモアを交えたハンドメイドの技術が宿る。





ブラックステアハイドを採用するこちらのモデルは、純銀を用いた“The Ore”でカラベラを表現。ブラックレザーのツヤと純銀の輝きが交差する。ホワイトレザー×ヌメ革×ターコイズの華やかさとは対照的に、モノトーンのシックな表情が際立つスタイルだ。ブラックレザーの顔料が剥がれ落ちた茶芯から荒々しく顔を出すエイジングは外山さんの手作業ゆえ、全く同じ表情はふたつとないワンオフのアートである。
【問い合わせ】
アツレザーワークス
TEL03-6455-1351
https://atsuleatherworks.com/
(出典/「Lightning 2025年12月号 Vol.380」)
Text/Y.Kinpara 金原悠太 Photo/K.Hayashi 林和也
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- 2025.10.30
生きたレザーの表情を活かす。これまでになかった唯一無二の革ジャン、「ストラム」の流儀。