プライドが感じられる、「ウエアハウス」の特別なワークウエア。

ミクロレベルまで研究し、古着と見間違うほどのプロダクツを現代に蘇らせるウエアハウス。当時の生産技術や時代背景までも丁寧に掘り下げられて完成した服は、限りなくヴィンテージに近い存在だ。
そんな彼らが生み出す服こそ、オーセンティックと呼ぶにふさわしい。

「鉄道員」に向けた専門的なウエア

鉄道の労働者は、車掌や駅長のように乗客と定期的に顔を合わせる乗員と、鉄道システムそのものの運営、機関車・鉄道車両に携わる乗員に分けられる。その中でも機関士、消防士、ブレーキマンは、特に誇り高い存在として讃えられてきた。それは紛れもなく、彼らの業務が多くの人命の安全を請け負っているだけでなく、自身の生命を賭ける危険な業務であったからに他ならない。

機関車にエアブレーキが導入される以前のブレーキマンは、急な上り坂や下り坂では、車両の上部によじ登り、前進して各ボックスカーにブレーキをかけなければならなかった。晴天の場合でも非常に危険な作業だ。また、ボックスカーにヒッチハイクしようとするホーボー(放浪者)を寄せ付けないように、車掌と協力して貨車の連結や連結解除を行うことも重要な任務だった。そして最も羨望の眼差しを向けられたのが、機関車を実際に運転する機関士だ。そのキャリアは火夫から始まる。機関士と並んで足台に乗り、石炭で炉を焚くのが仕事だ。旅の途中で何トンもの石炭を移動させなければならないこともあった。それは当然のごとく骨の折れる仕事だが、それを卒業すると、いよいよ最も重責がのしかかる機関士としての業務が始まるのだ。

巨大な蒸気機関車を一人で操り、すべての信号に従いながら、会社の時刻表に定められたダイヤを守るため、線路のすべての区間で適正な速度を保つようにしなければならない。しかし、絶対に列車を遅れて到着させるわけにはいかない。その葛藤の中で、蒸気機関車という巨大な鉄の塊を、機関士以外にも多くのパートの乗務員たちが協力して運営しているわけだ。接客と操縦という分野に分かれるものの、彼らが着るユニフォームにはプライドを感じさせるものがあった。

ワークウエアであるカバーオール、オーバーオール、ウエストオーバーオール、そしてシャツに至るまで、「鉄道員」に向けた専門的なウエアは、彼らに好んで着用された。生地もデニムだけでなく、ヒッコリーストライプやウォバッシュストライプといわれるものが生まれた。彼らが他の業種とは一線を画す、仕事への「責任とプライド」を持っていることに目をつけたマーケティングの賜物であることは確かである。

1920s FREE LAND CHORE JACKET

インディゴデニム

アメリカでも早くから鉄道の要衝であったペンシルバニア州のワークウエアブランド『フリーランド』のカバーオール(チョアジャケット)。主に鉄道員によって着用されることが多かったようで、ヒッコリーストライプの柄と袖口のカフスにその気品とプライドが感じられる。カバーオールで袖口にカフスが付くものは極めて珍しく、戦前には消滅するディテールである。4万700円

ヒッコリー

1920s FREE LAND WAIST OVERALL

インディゴデニム

こちらもペンシルバニア州の『フリーランド』が手がけたウエストオーバーオール。ベルトループが付けられて間もない時代のため、サスペンダーボタンも残っている。堅牢なトリプルステッチで縫製されながらも、鉄道員の「矜持」を誇るかのようなスタイリッシュなシルエットが、東部のワークウエアブランドらしい気品に満ち溢れている。3万5200円

ヒッコリー

【問い合わせ】
ウエアハウス
http://www.ware-house.co.jp

(出典/「Lightning 2025年6月号」)

この記事を書いた人
Lightning 編集部
この記事を書いた人

Lightning 編集部

アメリカンカルチャーマガジン

ファッション、クルマ、遊びなど、こだわる大人たちに向けたアメリカンカルチャーマガジン。縦横無尽なアンテナでピックアップしたスタイルを、遊び心あるページでお届けする。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

“黒のコロンビア”って知ってる? オンオフ自在に着回せる、アップデートされたコロンビアの名品を紹介!

  • 2025.10.21

電車や車といった快適な空間から、暑さや寒さにさらされる屋外へ。都市生活は日々、急激な気温差や天候の変化に直面している。実はその環境こそ、自然で磨かれた「コロンビア」の技術が生きる場だ。撥水性や通気性といったアウトドア由来の機能を街に最適化し「コロンビア ブラックレーベル」は、都市生活者の毎日を快適に...

【Punctuation × 2nd別注】手刺繍のぬくもり感じるロングビルキャップ発売!

  • 2025.10.29

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【Punctuation × 2nd】ロングビルキャップ[トラウト] 温もりのある手仕事が特徴の帽子ブランド「パンク...

2nd

良質な素材感とシルエットが美しい、東洋エンタープライズが展開する「ゴールド」。

  • 2025.10.17

東洋エンタープライズが展開する「ゴールド」。白黒の世界で際立つ良質な素材感とシルエットをご堪能あれ。 質感、シルエット、美しいミリタリー&ワークウエア 米軍同様のへビーナイロンツイルを使ったMA-1。軽量性・保温性・防寒性を備えたクライマシールドの中綿でスペックは現代的だが、エイジング加工によってヴ...

【J.PRESS×2nd別注】こんなイラスト、二度と出会えない。 著名イラストレーターとのコラボスウェット。

  • 2025.10.21

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【J.PRESS×2nd】プリントスウェットシャツ【AaronChang】 アメリカにある優秀な8つの大学を総称して...

進化と伝統、どちらもここに。「L.L.Bean」のアウトドアと日常の垣根を超える名品たち。

  • 2025.10.17

100年以上にわたり、アウトドアと日常の垣根を越える名品を生み続けてきた「エル・エル・ビーン」。誠実なモノづくりと顧客への真摯な姿勢は、現代まで脈々と受け継がれている。伝統を守りながらも進化を恐れない、その精神こそが、今も世界中の人々を魅了し続ける理由だ。 愛される理由は機能美とその誠実さ 100年...

Pick Up おすすめ記事

2nd

良質な素材感とシルエットが美しい、東洋エンタープライズが展開する「ゴールド」。

  • 2025.10.17

東洋エンタープライズが展開する「ゴールド」。白黒の世界で際立つ良質な素材感とシルエットをご堪能あれ。 質感、シルエット、美しいミリタリー&ワークウエア 米軍同様のへビーナイロンツイルを使ったMA-1。軽量性・保温性・防寒性を備えたクライマシールドの中綿でスペックは現代的だが、エイジング加工によってヴ...

【J.PRESS×2nd別注】こんなイラスト、二度と出会えない。 著名イラストレーターとのコラボスウェット。

  • 2025.10.21

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【J.PRESS×2nd】プリントスウェットシャツ【AaronChang】 アメリカにある優秀な8つの大学を総称して...

いつものトラッドがこんなにも新鮮に!ジャパンデニムの雄エドウインが提案する、クラシックな黒

  • 2025.10.18

“黒”という色はモードファッションとの結びつきが強い。故にトラッドスタイルとの親和性は低いように思われる。しかし、エドウインの提案する“黒”は実にクラシックである。 クラシックなトラウザーズが黒とトラッドを身近にする ブレザー、ボタンダウンシャツ、スラックス……。アメリカントラッドを象徴するアイテム...

進化と伝統、どちらもここに。「L.L.Bean」のアウトドアと日常の垣根を超える名品たち。

  • 2025.10.17

100年以上にわたり、アウトドアと日常の垣根を越える名品を生み続けてきた「エル・エル・ビーン」。誠実なモノづくりと顧客への真摯な姿勢は、現代まで脈々と受け継がれている。伝統を守りながらも進化を恐れない、その精神こそが、今も世界中の人々を魅了し続ける理由だ。 愛される理由は機能美とその誠実さ 100年...

【Punctuation × 2nd別注】手刺繍のぬくもり感じるロングビルキャップ発売!

  • 2025.10.29

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【Punctuation × 2nd】ロングビルキャップ[トラウト] 温もりのある手仕事が特徴の帽子ブランド「パンク...