1980年代から1990年代の限られたモデルに見られたのが「茶芯」。
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アメカジを志すものであれば一度は聞いたことのある用語「茶芯」。現代であれば一般的な言葉として認識されているが、いつ、どのようにして「茶芯」が生まれたのか。その背景には、「レッドウィング」の歴史が深く関わっているのだという。
現在、レッドウィング青山店のストアマネージャーであり、ブランドの一ファンでもある石井さんにその理由を伺った。
「厳密にいうと1980年代から1990年代の短い期間の中で、限られたモデルの中でも一部にだけ見られたものが俗にいう『茶芯』です。モデルでいうと[2268(PT83・PT91)]や[8179]で多く見られたそうです。その当時はブーツが流行しブラックレザーの需要が高く、アメリカ生産を貫く同社は生産効率を上げるためブラウンレザーと同じ茶色のクラストを使用、同モデルとして販売。
その結果、その靴を購入した人たちからこれまでの色の落ち方、エイジングの具合が違うという問い合わせがあったといいます。その時は、個体差があることであまり良しとされてはいなかったのですが、黒から茶色にエイジングする独特な革に魅せられる人が続出、その結果『茶芯』という言葉が生まれ定着していきました」。
現在、古靴市場で高い人気を誇り、コレクターがわざわざ捜し求めることも珍しくない「茶芯」。特別な魅力を放ち、いまなお多くの愛好家を魅了し続けている。
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履き込むごとに増すスタイリッシュさと無骨さ。お気に入りの一足は「ベックマン・フラットボックス」。
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「茶芯に初めて出会ったのは高校1年生の頃。その当時は茶芯という言葉も無く、そのブーツが茶芯であることも全く分からずに、原宿のキャットストリートで中古を買いました。『レッドウィング』の[8179]と[8173]でしたね」。
レッドウィングに勤め9年になるという石井さん。40足以上所有しているという『レッドウィング』からお気に入りの1足を紹介してもらった。
「7年ほど愛用している[ベックマン・フラットボックス]です。このブーツの良さはトゥにありますね。一般的なブーツは先芯が入っているのですが、このブーツには入っていません。履き込むうちに潰れるつま先が格好いいんです。スタイリッシュでブーツらしからぬスマートさが堪りませんよね。大のお気に入りの1足です」
(出典/「Lightning 2025年3月号 Vol.371」)
Text/Y.Namatame 生田目優 Photo/N.Hidaka 日高奈々子
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