俺にとって最高の「旅の道具」。
俺は今、ロンドンの安宿の一室で、表の喧騒をBGMにこの原稿を書いている。外は雨だが、さほど湿気は感じない。この原稿を書き終えたら、パブにビールでも飲みに行こう……。う〜ん、この書き出し、沢木耕太郎の『深夜特急』の一節みたいではないか。実は今回のロンドン出張に、学生時代に読み耽った『深夜特急』をもう一度読み返そうと持ってきているのだ。
俺が海外に行く際に必ず持っていくのが、その土地を舞台にした小説。『深夜特急』はユーラシア大陸をバスを使ってロンドンまで行く話だし、今回はその他にシャーロック・ホームズも持ってきている。とはいえロンドン到着以来、ほとんどホテル内にカンズメでライトニングの原稿を書いているので、全く読めてないが……。
そして俺にとってのもう一つの旅の必需品が「財布」。日本から持っていった財布はそのままスーツケースにしまい、カードや現地の金を別の財布に入れて行動する。
こういう時、これまでは空港の売店で売っていた三つ折りのベルクロ留めのベリベリいう安っぽい財布を使っていたのだが、これがなんとも味気ない。
しかし今回の旅からは、素敵な財布が俺のお供となった。それがvascoのアンカーログブック。かつての船乗りが使っていた航海日誌をアレンジした、vascoらしい「旅の道具」なのだ。これならパスポート、お金、ノートなどをまとめて持ち歩くことができる。ぶっちゃけレバ、使い勝手は以前のベリベリ財布の方がいいかもしれない。
しかし、それがなんだというのだ。このアンカーログブックには、旅人の気持ちを盛り上げる“浪漫”が詰まっている。旅を続けるほどに革の風合いがまし、旅の記憶が刻まれていく。俺は今回の旅から、こいつとともに歩んでいくことに決めた……。さ、原稿を書き終えたことだし、こいつと一緒にパブにビールを飲みに行くとするかーー。
(出典/「Lightning 2023年9月号 Vol.353」)
Photo/S.Kai 甲斐俊一郎
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