路上で出会った男たちのコミュニティが生まれる場所。|DJ・大村達郎さん

DJ であり、役者であり、フードデリバリーの配達員。ひとつの職を全うし生計を立てるという昔ながらの常識を完全に無視して、社会に媚を売らず多方面で自由な活動を続けている大村達郎さん。そんな男のガレージに潜入。愛用品や、生活空間を見せてもらった。

DJ・大村達郎さん|色気のあるサウンドを用いたダンサンブルかつアダルトな演出を得意とするDJとして活躍する傍ら、 役者やイベントオーガナイザー、UBEREATS PARTNERなど、多方面で活動。2023年よりMulerというプロジェクトを開始。愛車はデリバリーバイクの他にリックマン・トライアンフのカスタムを進行中

UKファッションのメッセージ性の強さに魅かれます。

自宅ガレージは大村さんが路上で得た経験を元にプロジェクトやプロダクツをクリエイトする基地であり、仲間たちの溜まり場でもある

クルマ一台分の車庫の中身は大量のレコードと音響機器、さっぱりとした仕事机とソファが置かれたガレージ。この空間のオーナーはDJやフードデリバリー配達員など様々な顔を持つ大村達郎さん。そして、ここに集うのは路上やクラブなどで意気投合した仲間たち。シンプルな空間だが、趣味を通じて親交を深める仲間が、言葉と音楽を使って有意義な時間を過ごすのには十分なのだろう。

DJの演奏に欠かせないヘッドホンはパイオニア製を使用。様々なイベントを共に経験し、自然と体に馴染んだ愛用品だ

「どれが表の顔で裏の顔っていう意識はなくて、全部誇りを持って好きなことをやっていたら、似たライフスタイルの仲間との出会いが増え、様々なサブカルチャーを持つ人間が共存するようになりました。ココは他ジャンルで活動する人間との交流や路上で得た経験を、何かしらの形で発信する基地のようなイメージです」

レコードバッグはLOUIS VUITTONが最近のお気に入り。約2000枚のレコードから、イベントに合わせて厳選したレコードを収納

大村さんの愛用品として目立つのはUKカルチャーに紐づくアイテムだが、そこに共感するのには明確な理由があった。

「UKのストリートカルチャーに特に魅かれるのは、モッズにしてもスキンズにしても労働者のメッセージ性を強く感じるからです。その影響もあってか自分も言葉にこだわり、ミューラー(=運び屋)というプロジェクトを今年から始めました。表現の形に捉われず、プロダクツやイベントを通して自分が伝えたいメッセージを届ける活動をしていく予定です」

バイクに乗る時もクラブで遊ぶ時も着用率が高いレザージャケットはルイスレザーズのサイクロンとブロンクス。次はホースハイドのカラーレザーを狙っているとか
中央はスタイリスト・馬場圭介さんのブランド『NORMAN』のドンキーコート。どれも自身の世界観を表現するバッジでカスタムされている
ヘルメットはネイバーフッド×ポーターとオーシャンビートル製を使用。長時間運転を続ける際はベルトのスナップにマスクを装着している
愛用リングは眼球やスターなどの特徴的なモチーフモノからシンプルな結婚指輪など様々だが、全てグレートフロッグ製

大村さんのフェイバリット5枚をピックアップ。

1.Wired / Jeff Beck

「ROCKを感じるJAZZサウンドが、ジェフ・ベックを好きになったきっかけ。追悼の意を込めて」

2.The Royal Scam / Steely dan

「お気に入りは“Kid Charlemagne” と“The Fez”。ラリー・カールトンのギターにスリルと哀愁を感じます」

3.Doc Severinsen / DJ Harvey

「トランペット奏者、Doc Severinsenの名曲をDJ Harveyがエディットした2010年の名作」

4.Street Life/ Randy Crawford

「ここぞという時のために忍ばせている1枚。UBERで初めて月収100万円を超えた後の一服中にランダムでこの曲が流れた時は不意に涙しました」

5.Powder blue tux / Container Zero

「Jamiroquaiの初期メンバーで結成されたSamuel Purdeyが名義を変えてリリースしたシングル。ブリージンな現代版AORディスコサウンド」

Mulerプロジェクト始動。

Movement of Deliver with Subculture(サブカルチャーを持ちあわせたデリバリーボーイのムーブメント)をコンセプトに、言葉と音楽を使ってメッセージを届ける大村さんのニュープロジェクト。A面ではミュージシャンや役者、アパレルデザイナーなど、自由に活動する傍でB面で配達員の顔を持つ男たちのコミュニティを牽引する。

Muler第一弾のイベントは2月26日に神奈川県の日吉で開催された音楽イベント『RIOT CLUB』。オリジナルバッジは非売品で路上で出会ったクールな配達員に配っていく予定だとか。インスタグラムアカウントにて、様々なクリエイターたちのプレイリストをまとめた“Music Muler” 企画も進行中だ。

最強の二輪デリバリー仕様。

相棒はHONDA ベンリィ110にYAMAHAギアの屋根とボックスを装備し、マットブラックでペイントした都会的なフードデリバリー仕様。「ピザ店のデリバリーバイクを塗装したらイケてるのでは?」という着想からスピードの弱点を克服。

雨や極寒の時期など、配達員が少なくなる時間が稼ぎ時。天候に左右されずオールマイティに走れるカスタムが大村さんの機動力をサポートする。

リアに搭載するボックスには2種類の保温保冷バッグを入れておくことで、あらゆるサイズのフードをスマートに収納することができる。

(出典/「Lightning2023年3月号 Vol.347」)

この記事を書いた人
Lightning 編集部
この記事を書いた人

Lightning 編集部

アメリカンカルチャーマガジン

ファッション、クルマ、遊びなど、こだわる大人たちに向けたアメリカンカルチャーマガジン。縦横無尽なアンテナでピックアップしたスタイルを、遊び心あるページでお届けする。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

今っぽいチノパンとは? レジェンドスタイリスト近藤昌さんの新旧トラッド考。

  • 2025.11.15

スタイリストとしてはもちろん、ブランド「ツゥールズ」を手がけるなど多方面でご活躍の近藤昌さんがゲストを迎えて対談する短期連載。第三回は吉岡レオさんとともに「今のトラッド」とは何かを考えます。 [caption id="" align="alignnone" width="1000"] スタイリスト・...

グラブレザーと、街を歩く。グラブメーカーが作るバッグブランドに注目だ

  • 2025.11.14

野球グローブのOEMメーカーでもあるバッグブランドTRION(トライオン)。グローブづくりで培った革の知見と技術を核に、バッグ業界の常識にとらわれないものづくりを貫く。定番の「PANEL」シリーズは、プロ用グラブの製造過程で生じる、耐久性と柔軟性を兼ね備えたグラブレザーの余り革をアップサイクルし、パ...

今こそマスターすべきは“重ねる”技! 「ライディングハイ」が提案するレイヤードスタイル

  • 2025.11.16

「神は細部に宿る」。細かい部分にこだわることで全体の完成度が高まるという意の格言である。糸や編み機だけでなく、綿から製作する「ライディングハイ」のプロダクトはまさにそれだ。そして、細部にまで気を配らなければならないのは、モノづくりだけではなく装いにおいても同じ。メガネと帽子を身につけることで顔周りの...

スペイン発のレザーブランドが日本初上陸! 機能性、コスパ、見た目のすべてを兼ね備えた品格漂うレザーバッグに注目だ

  • 2025.11.14

2018年にスペイン南部に位置する自然豊かな都市・ムルシアにて創業した気鋭のレザーブランド「ゾイ エスパーニャ」。彼らの創る上質なレザープロダクトは、スペインらしい軽快さとファクトリーブランドらしい質実剛健を兼ね備えている。 日々の生活に寄り添う確かなる存在感 服好きがバッグに求めるものとは何か。機...

時計とベルト、組み合わせの美学。どんなコンビネーションがカッコいいか紹介します!

  • 2025.11.21

服を着る=装うことにおいて、“何を着るか”も大切だが、それ以上に重要なのが、“どのように着るか”だ。最高級のプロダクトを身につけてもほかとのバランスが悪ければ、それは実に滑稽に映ってしまう。逆に言えば、うまく組み合わせることができれば、単なる足し算ではなく、掛け算となって魅力は倍増する。それは腕時計...

Pick Up おすすめ記事

この冬買うべきは、主役になるピーコートとアウターの影の立役者インナースウェット、この2つ。

  • 2025.11.15

冬の主役と言えばヘビーアウター。クラシックなピーコートがあればそれだけで様になる。そしてどんなアウターをも引き立ててくれるインナースウェット、これは必需品。この2つさえあれば今年の冬は着回しがずっと楽しく、幅広くなるはずだ。この冬をともに過ごす相棒選びの参考になれば、これ幸い。 「Golden Be...

今こそマスターすべきは“重ねる”技! 「ライディングハイ」が提案するレイヤードスタイル

  • 2025.11.16

「神は細部に宿る」。細かい部分にこだわることで全体の完成度が高まるという意の格言である。糸や編み機だけでなく、綿から製作する「ライディングハイ」のプロダクトはまさにそれだ。そして、細部にまで気を配らなければならないのは、モノづくりだけではなく装いにおいても同じ。メガネと帽子を身につけることで顔周りの...

着用者にさりげなく“スタイル”をもたらす、“機能美”が凝縮された「アイヴァン 7285」のメガネ

  • 2025.11.21

技巧的かつ理にかなった意匠には、自然とデザインとしての美しさが宿る。「アイヴァン 7285」のアイウエアは、そんな“機能美”が小さな1本に凝縮されており着用者にさりげなくも揺るぎのないスタイルをもたらす。 “着るメガネ”の真骨頂はアイヴァン 7285の機能に宿る シンプリシティのなかに宿るディテール...

【ORIENTAL×2nd別注】アウトドアの風味漂う万能ローファー登場!

  • 2025.11.14

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【ORIENTAL×2nd】ラフアウト アルバース 高品質な素材と日本人に合った木型を使用した高品質な革靴を提案する...

今っぽいチノパンとは? レジェンドスタイリスト近藤昌さんの新旧トラッド考。

  • 2025.11.15

スタイリストとしてはもちろん、ブランド「ツゥールズ」を手がけるなど多方面でご活躍の近藤昌さんがゲストを迎えて対談する短期連載。第三回は吉岡レオさんとともに「今のトラッド」とは何かを考えます。 [caption id="" align="alignnone" width="1000"] スタイリスト・...