【リノベーション倉庫⑦】オールドウイスキーが眠るモルトバー「SILENCE BAR」。|香川・丸亀

神戸や横浜の波止場にある酒場を渡り歩いてきたオーナーが出会ったのがオールドウイスキーの元倉庫だった。まるで映画の世界を復元したかのように、ここだけ雰囲気が異なる。そんな空間に夜な夜な足を運んで、ハードボイルドにキメるのもいい。香川県にある男の隠れ家を紹介しよう。

訪れる者を魅了する、波止場の隠れ家バー。

瀬戸内海の島と丸亀を結ぶフェリーが行き交う港の埠頭に建つ。昼間は息を潜めるように佇み、そこが元倉庫を 利用したモルトバーと気付く人は少ない。夕陽が沈み始める頃、濃縮した空の色を背景に郷愁を誘う景色と化す

時がいくつ流れても記憶は消えないものなのか――。幼き日に祖父母と歩いた神戸のメリケン波止場、横浜港近くの友人のバーへ通った日々。17歳で東京へ出て都内のキャバレーや大阪のバーなど、夜の酒場を渡り歩いてきた丸岡俊文さんが、オールドウイスキーと出会い、自身の店を持つためにたどり着いた先は、やはり港だった。

船舶が行き交う丸亀港の埠頭に佇む倉庫。夜のとばりが下りる頃、「SILENCE BAR」の電飾が灯り、そこがモルトバーであることを知らせる。扉を開くと中は薄暗く、店の奥へ歩を進めるとカウンター席の棚を埋め尽くすウイスキーの景色が目に飛び込んだ。

ハードボイルドな映画のワンシーンに登場してきそうな大人の空間。L字に配したカウンターの奥をウイスキーを中心に1200種以上のボトルが埋め尽くす景色に圧倒される

こちらも照明は最小限に抑えられ、店内に窓はひとつもない。ウイスキーに禁物な太陽光を遮るために内壁を張り替え、窓はすべて塞いだという。だが、頭上に広がる高い天井が倉庫の面影を留めている。

「イメージはウイスキーが眠る樽の中。ここに集う人間の魂もまた熟成し、よい飲み手になっていくことを願いながら店をやってます」と丸岡さん。2017年に30周年を迎え、店も年代物のオールドボトルの域に達した。店の隅々に過ぎし日々の記憶を留めながら、これからも変わらず建ち続ける。

倉庫時代の内壁を取り払って赤煉瓦を積み上げた壁に改修し、蒸留所のような雰囲気に。鉄を使ったランプシェードをコーディネイトしてさらにクラシカルな雰囲気をプラス
店内の一角に増築した中2階席。階段に沿って流線的にデザインした鉄の手すりがインダストリアルな表情を伝える。カウンター席が満席だったときのウェイティングルームとして活用している

埠頭に佇む無骨な建物。夕方から夜かけてに建物を眺めると、まさに映画のワンシーンのよう。内装は、倉庫をそのままというよりも波止場の酒場をイメージし、赤煉瓦などを使って雰囲気を出した大人の空間に仕上がっている。強いお酒を静かにゆっくり飲みたいときに訪れたい、そんなお店が香川にありました。

【DATA】
SILENCE BAR
香川県丸亀市港町307 23埠頭
TEL0877-24-3646
営業/19:00~25:00
休み/不定休

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(出典/「Lightning 2018年2月号 Vol.286」)