坂本龍馬と同じ「160年前の技術」で写真を撮ってみた【田村写真】

スマホやデジカメが便利になりすぎて、フィルムカメラを使う機会が少なくなってしまった。技術が進歩し、スマホでもキレイに撮れるのだが、時々フィルムからプリントした写真を見ると、デジタルでは出せない重厚感があって、やっぱりアナログはいいなと思う。

だから気合を入れて撮る時は、あえてアナログ写真にこだわるというのもいいかもしれない。今回はそんなアナログ写真でも、原点ともいえる「湿板」という技法で作る写真に注目してみた。

湿板写真は1851年に発明された技法で、ガラス板などにコロジオンという薬剤を塗り、さらに硝酸塩を化合させて感光材を作る。それをフォルダーに入れて撮影するというもので、乾燥させずに濡れた状態で撮るから「湿板」と呼ばれている。

日本では幕末に輸入され、有名な坂本龍馬の写真なども、この方法で撮られている。こうした古典的な写真技法を研究し、現代的にアレンジしている「田村写真」で、実際に湿板写真を撮ってもらった。

湿板写真を撮るために必要なもの。

湿板写真を撮るにはざっとこのような薬品などが必要となる。

1.ガラス板 2.コロジオン溶液(3、5、6、8、9を混ぜ合わせたもの) 3.コロジオン 4.硝酸第一鉄 5.よう化カリウム 6.臭化カドミウム 7.硝酸銀 8.ウォッカ 9.エチルエーテル 10.コーティング用ニス(11、12を混ぜたもの) 11.サンダラック樹脂 12.ラベンダーオイル 13.炭酸カルシウム

湿板写真の撮影方法。

準備

まず、研磨したガラス板にコロジオン溶液を垂らし、ガラス板を傾けて全体にまんべんなく伸ばす。

ガラスを硝酸銀溶液に浸して数分待つと、表面に感光膜ができあがる。この作業は暗室で行う。

専用のフォルダーにガラス板をセットして、フタをしっかり締める。

撮影

今回使用するのは木製のビューカメラ。レンズと背面のガラスの位置を前後させてピントを合わせる。

カメラのレンズを通すと左右、天地が反転した像として映る。

フォルダーをカメラにセットして、露光面のカバーを外す。

「田村写真」代表・田村政実さん

レンズやカメラにシャッターが付いていないため、レンズにかぶせているキャップを外して撮影する。

現像

再び暗室でフォルダーからガラス板を取り出し、硫酸第一鉄の溶液を感光面にかけると、徐々に像が浮かんでくる。

ある程度像が出てきたら、ハイポ(チオ硫酸ソーダ)の溶液に入れて画像を定着させる。

数秒すると、表面を覆っていた乳白色の膜が取れていく。

赤血塩を使ったファーマー減力液で画像を調整する事で全体のバランスが良くなり黒も締まる。

よく水洗したらアルコールランプで乾かす。

完全に乾いたら露光面にニスを垂らし、全体をコーティングできるように傾けて伸ばす。このニスがラベンダーの匂いがするのは防虫効果があるからだ。

完成!

完成した湿板写真は、フィルムでいうとネガのような状態になっているため、裏側に黒の布などを敷き、その上にガラス板を載せると、一般的なモノクロ写真のような像になるので、そのまま額装するのがオススメだ。

湿板写真は基本的にはガラス板1枚分の写真だけしかできないが、ポジフィルムをスキャニングするための透過原稿用スキャナを使えばパソコンに画像を取り込んで、プリントアウトも可能。こんな雰囲気の写真が出来上がる。

背景のボケ感が被写体を浮き立たせた雰囲気は、まさに歴史の教科書で見た坂本竜馬の写真のよう。時代観を合わせてクラシカルな格好をするのもよし、あえてモードなファッションで撮影してギャップを愉しむのもよし。一生の記念となること間違いなしのサービスである。

【DATA】
田村写真
TEL03-3404-6646
東京都港区六本木5-11-32岩崎ビル2F
営業/9:00~18:00
休み/土・日曜
http://www.tamurasyasin.com/

田村写真では一般的なフィルムの現像やプリントなどの他、ガラスに写真を焼き付ける「湿板写真」、「プラチナパラジウムプリント」、「サイアノタイププリント」など、古典的な技法を研究し、写真の製作をしている。また月に一回それぞれのワークショップも行なっているので、自分の手で古典技法で撮影、現像することもできる

※掲載情報は取材時のものです。

この記事を書いた人
めぐミルク
この記事を書いた人

めぐミルク

手仕事大好きDIY女子

文房具、デザイン、ニッポンカルチャーなどのジャンルレスな雑誌編集を経てLightningへ。共通しているのはとにかくプロダクツが好きだということ。取材に行くたび、旅行するたびに欲しいものは即決で買ってしまうという散財グセがある。Lightningでは飲食、ハウジング、インテリアなどを担当。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

雑誌2ndがプロデュース! エディー・バウアー日本旗艦店1周年を祝うアニバーサリーイベント開催決定!

  • 2025.11.21

エディー・バウアー日本旗艦店の1周年を祝うアニバーサリーイベントを本誌がプロデュース。新作「ラブラドールコレクション」や本誌とのコラボなど、ブランドの情熱が詰まった特別な9日間を見逃すな! 来場者には限定のブランドブックを配布! 今回のイベントに合わせ、「エディー・バウアー」をもっと知ってもらうため...

今こそマスターすべきは“重ねる”技! 「ライディングハイ」が提案するレイヤードスタイル

  • 2025.11.16

「神は細部に宿る」。細かい部分にこだわることで全体の完成度が高まるという意の格言である。糸や編み機だけでなく、綿から製作する「ライディングハイ」のプロダクトはまさにそれだ。そして、細部にまで気を配らなければならないのは、モノづくりだけではなく装いにおいても同じ。メガネと帽子を身につけることで顔周りの...

「アイヴァン」からニューヨークに実在する通りの名前を冠した新作アイウエアコレクション登場

  • 2025.11.21

ニューヨークに実在する通りの名前を冠した「アイヴァン」の新作コレクション。クラシックな要素をサンプリングしながらも現代の空気感を絶妙に捉え服と同等か、それ以上にスタイルを左右する究極のファッショナブルアイウエア。 Allen 2023年、NYに誕生した「ビースティ・ボーイズ・スクエア」。その付近で出...

今っぽいチノパンとは? レジェンドスタイリスト近藤昌さんの新旧トラッド考。

  • 2025.11.15

スタイリストとしてはもちろん、ブランド「ツゥールズ」を手がけるなど多方面でご活躍の近藤昌さんがゲストを迎えて対談する短期連載。第三回は吉岡レオさんとともに「今のトラッド」とは何かを考えます。 [caption id="" align="alignnone" width="1000"] スタイリスト・...

決して真似できない新境地。18金とプラチナが交わる「合わせ金」のリング

  • 2025.11.17

本年で創業から28年を数える「市松」。創業から現在にいたるまでスタイルは変えず、一方で常に新たな手法を用いて進化を続けてきた。そしてたどり着いた新境地、「合わせ金」とは。 硬さの異なる素材を結合させるという、決して真似できない新境地 1997年の創業以来、軸となるスタイルは変えずに、様々な技術を探求...

Pick Up おすすめ記事

決して真似できない新境地。18金とプラチナが交わる「合わせ金」のリング

  • 2025.11.17

本年で創業から28年を数える「市松」。創業から現在にいたるまでスタイルは変えず、一方で常に新たな手法を用いて進化を続けてきた。そしてたどり着いた新境地、「合わせ金」とは。 硬さの異なる素材を結合させるという、決して真似できない新境地 1997年の創業以来、軸となるスタイルは変えずに、様々な技術を探求...

グラブレザーと、街を歩く。グラブメーカーが作るバッグブランドに注目だ

  • 2025.11.14

野球グローブのOEMメーカーでもあるバッグブランドTRION(トライオン)。グローブづくりで培った革の知見と技術を核に、バッグ業界の常識にとらわれないものづくりを貫く。定番の「PANEL」シリーズは、プロ用グラブの製造過程で生じる、耐久性と柔軟性を兼ね備えたグラブレザーの余り革をアップサイクルし、パ...

着用者にさりげなく“スタイル”をもたらす、“機能美”が凝縮された「アイヴァン 7285」のメガネ

  • 2025.11.21

技巧的かつ理にかなった意匠には、自然とデザインとしての美しさが宿る。「アイヴァン 7285」のアイウエアは、そんな“機能美”が小さな1本に凝縮されており着用者にさりげなくも揺るぎのないスタイルをもたらす。 “着るメガネ”の真骨頂はアイヴァン 7285の機能に宿る シンプリシティのなかに宿るディテール...

今っぽいチノパンとは? レジェンドスタイリスト近藤昌さんの新旧トラッド考。

  • 2025.11.15

スタイリストとしてはもちろん、ブランド「ツゥールズ」を手がけるなど多方面でご活躍の近藤昌さんがゲストを迎えて対談する短期連載。第三回は吉岡レオさんとともに「今のトラッド」とは何かを考えます。 [caption id="" align="alignnone" width="1000"] スタイリスト・...

【UNIVERSAL OVERALL × 2nd別注】ワークとトラッドが融合した唯一無二のカバーオール登場

  • 2025.11.25

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【UNIVERSAL OVERALL × 2nd】パッチワークマドラスカバーオール アメリカ・シカゴ発のリアルワーク...