スクーターともバイクとも一線を画すルックス&走りが魅力【前編】

  • 2023.06.16  2023.06.15

2019 年、EICMA(ミラノショー)にその姿を現わすも、特異なスタイルから市販に懐疑的な目を向けられていたが、コロナ禍を乗り越えて国内デリバリーも開始。ここでは特異な機構が生み出す、ほかに類を見ない乗り味をお伝えしよう。

ITALJET DRAGSTER 200 のスタイリング

※撮影に使用した車両はファーストエディション。現在販売されているブラック×ゴールドとは仕様が異なる場合があります。

作り手の想いを感じる一貫したスポーティさ

バイクでドラッグスターといえば、ほとんどのライダーは大ヒットしたヤマハのクルーザーモデルを頭に思い浮かべるだろう。しかし、スクーターに詳しい人にとっては、イタルジェットが1998 年から2000 年代頭にかけて販売していた、超個性的なスクーターこそがドラッグスターなのだ。

その新型モデルがイタリアのEICMA(ミラノショー)で発表されたのが2019年。初代のスタイリングをオマージュしたハブセンター・ステアリングと、丸見えのトラスフレームを採用した独特なスタイルは、国内でもちょっとした話題になったことを覚えている人もいるだろう。当時は早々に発売されると思われていたが、新型コロナウイルスの影響などでなかなか生産が始まらず、発表から 2 年以上経って国内デリバリーが始まったという経緯がある。

現車を目の前にしてまず目を奪われたのが、ハブセンター・ステアリングやトラスフレームといった大きなポイントではなく、そのコンパクトに見せるデザインだった。同じホイールベースとなるヤマハ・NMAXやベスパ・GTSスーパーよりコンパクトに感じる車体は よくここまで削ぎ落とせたな と感嘆せずにはいられない。また、ハブセンター・ステアリングだとハンドルの切れ角が確保しづらいといわれているけれど、意外と切れて取りまわしがしづらい印象がなかったことにも驚かされた。

またがった際にちょっと違和感があったのはシートの硬さ。これまでさまざまな車両にまたがった経験から、スクーターのシートといえば適度に柔らかいのが一般的。しかし、ドラッグスターにはそのソフトさがないラバー仕様のレーサーに近い印象である。それが走り出すと気にはならなくなるのがこれまた あれっ“ ?”と思わさせられたポイントだ。残念ながら長時間乗ってはいないので、時間経過とともに痛みが出てくるのかもしれないが、1時間ほど普通に走り回った限りはお尻が痛くなるようなことはなかった。

エンジンを始動して、 やってくれたね“ !”とニンマリさせられるのが、けっこうイケイケな排気音と、そこそこの振動である。まさにスタイルから受ける印象どおりのフィーリングが、五感を刺激してくれるのだ。まるで車体から“スポーティに走れよ”といわれているようだ。とはいえスロットルをゆっくり開けていけばマイルドに走り出してくれるので、開け開けで行かなきゃと気負う必要はない。もちろんスロットルを急激に開ければ勢いのある加速を見せてくれる。そんなわけで、交通の流れが速い都市部の幹線道路においても、その流れを十分リードすることが可能だ。高速道路へのアプローチで加速不足を感じることもないし、スポーティな走りにも十分対応できる。

そして、スポーティな走りを実現するにあたって、駆動系とともに速度調整に重要なブレーキも十二分な性能を発揮する。キャリパーは前後ともレースからストリートまで幅広いステージで定評のあるブレンボ製が採用されていて安心感がある。さらにブレーキホースがステンメッシュのため、レバーを握り込んだ際のフィーリングはスーパースポーツをはじめとするスポーツ走行に特化したモデルのそれに近い、カチッとしたものとなっているのだ。その結果、レバーを握り込んでいった際の効き具合がわかりやすいし、絶対的な制動力も高い。

特異だけれど乗りにくくはないさ

乗り味の面で多くのライダーが気になっているのは、スタイル面での大きな特徴にもなっ ている、フロントサスペンションのハブセンター・ステアリングだろう。通常のフォークタ イプは、フロントブレーキをかけた際にフロント側が沈み込むノーズダイブが起きるのだ が、ハブセンター・ステアリングにはそれがない。それゆえ、多くのライダーは曲がる際 に最初は違和感があるに違いない。ただ、その沈み込みがないことでスムーズなコーナリングができないなんてことはない。フィーリングに慣れれば、タイトなコーナーもグイグ イ曲がれるし、車線分けされていない細い道でのUターンもまったく苦にならない。

ハブセンター・ステアリング同様目を引くトラスフレームは、低速だと硬い印象があるけれど、速度が上がってくるとその感覚は消える。そう、元気な駆動系と合わせて気持ちよくスポーティな走りを楽しめるパッケージなのだ。速度域に関係なく直進安定性に不満を感じることもなく、幅広いシチュエーションで楽しめるモデルといえる。そのほとんど外装のないルックスもあって、以外とオフロードでガンガン遊べるんじゃないかとすら思ったくらいだ。

一般的な体格の成人男性によるタンデム走行も試みたが、ライダー側は運転に支障が出ることはなかった。ただしタンデマーはコンパクトなタンデムシートに座り続けることが大変で、それ以上に上体を支えるために手をかける場所の確保が難しかった。ということでタンデムはあくまでも緊急用の手段としておく方がいいだろう。

乗る前は初代の印象もあってスクーターカテゴリーの1 台としてとらえていたのだが、乗り終えてみれば、スタイルと乗り味の両面から“スクーターともバイクとも異なる別の乗り物といってもいいんじゃない?”と思ったことも付け加えておこう。また、今回試乗したのは200のみだったので、125がどのようなパワー特性なのかも大いに気になるところだ。

ITALJET DRAGSTER 200 の足つき&乗車ポジション

身長:171cm/体重:70kg 両足を下ろしてヒザは伸び切るけれど、カカトまでベッタリつくので車体はしっかりと支 えられる。足も下ろしやすい。上体の起きたアップライトなリラックスした姿勢から前傾 姿勢まで自由度は高い。ハンドルまでの距離感もちょうどいい

スクーターともバイクとも一線を画すルックス&走りが魅力【後編】はコチラ

ITALJET DRAGSTER 200のスペック

全長×全幅×全高
1,890×750×-(㎜)
軸間距離
1,350㎜
シート高
770㎜
乾燥重量
124㎏
エンジン型式・排気量
水冷4ストロークDOHC4バルブ単気筒・181㎤
最高出力
12.9kW(17.5㎰)/8,000rpm
最大トルク
15.5N・m(1.58㎏f・m)/7,750rpm
燃料タンク容量
9ℓ
燃費(WMTC)
-㎞/ℓ
タイヤサイズ
F=120/70-12・R=140/60-13
カラーバリエーション
アンスラサイト/ホワイト/レッド、アンスラサイト/イエロー、ブラック/グレー、アンスラサイト/ホワイト/ブルー、トリコロール、ブラックゴールド、マロッシエディション
価格
81万4,000円 (マロッシエディション:84万1,500円) ※すべて税込

ITALJET DRAGSTER 200 製品ページ

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