「Lee」の『WESTERNER』は、カウボーイの正装から着想を得た比類なきヘリテージプロダクツ

純正なるカウボーイウエアではなくとも、その歴史の中で“名作”として受け継がれているプロダクトが存在する。それが、Leeが1961年に発表した「WESTERNER」だ。「カウボーイのドレスアップウエア」という打ち出しのもと稀有な発展を遂げた同モデルを深く掘り下げてみよう。

カウボーイの正装として生まれたユニークな存在

アメリカ3大デニムブランドのひとつとして名を馳せるリー。カウボーイカルチャーとの結びつきという観点で見ると同列のラングラーに軍配が上がるし、どちらかといえばワークウエアメーカーとしての側面が強かったリーであるが、実はカウボーイスタイルを語るうえで欠かすことのできない名作を今日に残している。

それが「WESTERNER(ウエスターナー)」である。同ブランドの名作「101」シリーズのライダースジャケットとジーンズを光沢のある白のコットンサテンに置き換えたセットアップで、正式にこのモデル名が付けられたのが1961年のこと。打ち出しは「カウボーイのドレスアップウエア」であった。「WESTERNER」をアメリカ国内の文脈から直訳すると、「アメリカ西部の人」といった意味合いとなることからも、この名作がアメリカ西部のカウボーイを意識して誕生したことを推測することができる。

現在では、白や生成りのデニムジャケットは珍しくはないものの、60年代前半(プロトタイプは50年代後半)から展開していたという点は、かなり画期的なものであった。また、ワークウエアとしての側面が強く、カジュアルな存在であったデニム素材のセットアップを上品でクリーンなバランスに仕上げ、かつマーケティングの面からも成功を収めたという点においてもリーの右に出るブランドは存在しないだろう。

同モデルの誕生から程なくして、アメリカの名門大学に通う学生たちの由緒正しきカレッジスタイル・アイビールックにおいても定番アイテムとして注目されるようになり、従来のワークウエアやウエスタンウエアの枠を超えて注目を集めるようになる。つまり、この「WESTERNER」は従来のワークウエアをカウボーイスタイルと結びつけたうえで巧みな打ち出しを行い、ファッションへと変換することに成功した非常に稀有な存在であるといえる。

そしてこの写真のセットアップはそんな「WESTERNER」の初期モデルに当たる1962年にリリースされた個体を復刻したものだ。ワーク、カウボーイ、カレッジ……。様々なカルチャーを背景に持つこの不朽の名作に俄然興味が湧いてきたのではないだろうか。次頁では、同モデルの誕生から発展までの流れをより詳しく紹介したいと思う。

独自の市場戦略から唯一無二の存在に。WESTERNERが名作となるまでの道のり

「WESTERNER」が誕生したのは1961年のこと。1860年代〜90年代の西部開拓時代に活躍した“真のカウボーイ”へのアメリカ国民の尊敬と憧憬に着目し、「カウボーイのドレスアップウエア」として発表され、その後ファッションシーンに定着するまでの流れをLeeのクリエイティブディレクター・細川秀和さんに聞いた。

まずは「WESTERNER」がどのような経緯で誕生したのか。そこには時代背景や国民思想を巧みに捉えたリーのマーケティング戦略があった。

「ウエスターナーが正式に発表されたのは1961年ですが、58年に『RIDERS』のモデル名で白のコットンサテンのモデルが登場していました。実は同じ時期にリーバイスからもピケ素材のトラッカージャケットが登場し、こちらもウエスターナーと同様にアイビーリーガーがこぞって身につけることとなるのですが、ウエスターナーの方がよりマーケティングに成功したと言えると思います。そもそもアメリカの国民の潜在意識の中に“カウボーイ”への憧れがあります。1900年代以降もカウボーイは存在しますが、それは牧場作業員を指す“ストックマン”としての側面が強く、国民の憧れの対象は1900年以前のオリジナルのカウボーイでした。鉄道網の発展とともに、捕獲したロングホーンを馬で誘導して鉄道に乗せ、都市部へと売るということを生業としている人々のことです。1920〜30年代のアメリカ映画においても登場するヒーローの多くはカウボーイですし、アメリカ人にとってのカウボーイは自由や正義の象徴でした。そんな国民の憧れの対象であるカウボーイの“ドレスアップウエア”として打ち出したリーのマーケティング戦略が功を奏したのです」

「WESTERNER」が大きな成功を収めたもうひとつの理由が国民(主に東海岸の人々)のジーンズ、ひいてはデニムに対する意識にあるのだという。

「1950年代にはアメリカにおけるジーンズが若者の間で“反逆者の象徴”という立ち位置を築くようになっていきます。マーロン・ブランドやジェームズ・ディーンが劇中でリーバイスやリーのジーンズを着用したことも大きいでしょう。由緒正しき東海岸の家庭では、親が子に『ジーンズを穿かせたくない』というほどでした。そもそも東海岸のホワイトカラーの間では、ジーンズはブルーカラー(労働者)のものという意識が根付いていたということもあり、ブルージーンズが敬遠される傾向があったのだと思います。そこに上品で清潔感のある白のコットンサテンのウエスターナーがうまくマッチし、軌道に乗ったのです」

このような時代背景もあり、登場から「WESTERNER」は瞬く間に勢力を拡大。『荒野と荒馬』(61年)、『野のゆり』(63年)、『いとこにキッス』(64年)など映画の劇中衣装としても採用されるようになり、完全なるファッションアイテムとしての地位を確立していったのである。

リー/クリエイティブディレクター・細川秀和さん|アメリカンジーンズに傾倒し、1990年にエドウインに入社。物流センターから工場研修までを経験した後、1992年からリーの担当となる。

WESTERNER 100-Z

「101-Z」をベースとしながら光沢のあるコットンサテンを採用。初期モデルにあたる1962年にリリースされたアーカイブを忠実に再現している。ドレスコードにも対応する上品な佇まいからアイビーリーガーたちにも愛された歴史を持ち、フロントフライはグリッパージッパー、タグはユニオンメイドの記載がある最も旧いラベルを採用。31,900円

WESTERNER 100-J

「100-Z」とのセットアップを想定した「RIDERS 101」のデザインを踏襲し、同じく白のコットンサテンで再構築。斜めに配置された胸ポケットや前立てのステッチワーク、ボタン仕様のサイドアジャスターが主なディテール。「100-Z」と同様に1962年のアーカイブをリバイバルしており、全体としてクリーンな印象だ。49,500円

「WESTERNER」の当時の広告写真。左にはセットアップで着用したハンサムな男性、右側には街中でのひとコマとロデオのイラストが描かれており、「街へ出かけるときも、ロデオへ向かうときもスマートで快適な着心地を保ちながら、本格的なウエスタンスタイルを楽しむことができる」という謳い文句が記されている。生地の頑丈さに触れられている点も見逃せない。

「WESTERNER」の名で正式にリリースされる1961年より前の1958〜60年に製造されたプロトタイプ。主なディテールや設計は同じだが、タグのそもそもの色やデザインが大きく異なる。当時は糸を染める染料の堅牢性が今ほど高くなく、使い込むことで生地が白くなっていくのが特徴だという。

こちらの広告はパンツにフォーカスしたもの。左の男性は「Lee RIDERS」、右の男性は「Lee WESTERNER」を着用していることがわかる。中央には「今やウエスタンスタイルにはふたつの選択肢がある!」との文言が記されているように、伝統的なロデオ・カウボーイのデニムパンツと洗練された都会向けのウエスターナーが強く、そして同列の扱いで紹介されている。

(出典/「CLUTCH Magazine 2026年8月号」)

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