世田谷代田のシューリペアショップが取り組む、次世代へ受け継ぐためのリペア&カスタム

ウエスタンブーツは、ワークというよりもドレス的なアプローチで製作されている特殊な立ち位置だ。そのためヴィンテージになると革にダメージを負っていることが多く、日常使いすると壊れてしまうことも珍しくない。ただ貴重なものであるし、次世代に残すべきウエスタンアーカイブを根本から再生するのがこの“REBORN”である。

Brass Shoe Co. Owner/松浦稔さん|1977年生まれ。東京都出身。エンジニアからシューリペア業界へ転職した異色の経歴を持つ。ハンドソーンウェルテッド製法を筆頭に職人の手作業を惜しまないオリジナルのCLINCHも展開する。

貴重なアーカイブを後世へ残すためのフルレストア

近年、トレンドとしてウエスタンに焦点が当たり、これまで人気の少なかったウエスタンブーツにも注目が集まっている。ただヴィンテージだと気をつける点があると松浦さんは語る。

「ウエスタンブーツはその立ち位置が特殊で、ドレスシューズのアプローチで製作されています。ヴィンテージだと革が薄い上に、当時の鞣しや経年劣化でダメージを負っているものが多い。それなら旧車をフルレストアする感覚で提案しているのが“REBORN”と名付けたリペアです。その特徴的な刺繍やインレイのシャフトを活かし、アッパーとソールは弊社のカウボーイブーツ向けのラストで0から作ります。個人的に思うのが、ヴィンテージは所有ではなく、預かるという感覚。靴が人の手を渡りながら、次の時代へ残っていくことが大切だと。そのお手伝いとして我々のリペア&カスタムという仕事があるんです」

想像を超える細かな職人技で再生される

ヴィンテージ市場で人気の高いACMEのブーツは1950-60年代頃の個体。アッパーのガラスレザーが割れ、いつ破けてもおかしくない状態。今回のREBORNでは、アッパーを茶芯のホースハイドでリペアし、オリジナルとまったく同じ刺繍パターンに。またシャフトとヒールの接続部分が破れやすいので革で補強。ソールにはラバー。REBORN¥88,000_

熟練の職人による手作業で、オリジナルを超える機能美が宿る

ウエスタンブーツの顔であるのが、シャフトのクリエイティブな装飾とトゥの刺繍だ。シャフトはオリジナルを活かすため、トゥの刺繍はリビルドするに当たり重要な要素。オリジナルとまったく同じにするたために職人の手でトレースし、できる限り再現する。左の写真は全頁で出てきた個体とは違うもので、オリジナルに準じて刺繍パターンを再生。

アウトソールを取り付ける前の一コマ。ウエスタンブーツはヒールが高いため、フロントのインソールが沈みやすい。そのため前オーナーの癖が強いため、履き心地は劇的に変化。

今回のアッパーにはCLINCHでも使われている茶芯のホースハイドを採用。シャフトのパターンに合わせてワンオフで型紙を作り、カットしていく。1足の靴を作る以上の労力だ。

シャフトとヒールの接続部分は履き込むことでシワが付き、ステッチやレザーが切れてしまうケースが多い。長く履くために裏からレザーで補強を施している。刺繍部分を避けるために、ここだけの型紙を製作した。

このREBORNでは、オリジナルの製法と同様に土踏まずまでリブ付き中底でウェルティングしている。木型の抑揚を保つために、手縫いで行う。

サンダーバードのシャフトデザインが特徴的なACMEのヴィンテージを完璧に直したサンプル。ベースの状態はそこそこよかったが、それでもアッパーのガラスレザーにダメージがあり、ハードに使えない状態だった。¥88,000_

(出典/「CLUTCH Magazine 2026年8月号」)

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