イーストウッドがバイクに乗る、旧いB級作品も一見の価値あり。
最近、日本のアニメ『ダンダダン』の主人公、オカルンの名前にちなんで、世界規模で注目された日本人俳優、高倉健さん。海外での反応としてSNSでのコメントを見ると、意外や“日本のクリント・イーストウッド”という意見が多くあった。まぁご両人とも、60年代からアウトローなイメージで活躍して土台を築き、歳を重ねるとともに磨き上げた演技と存在感で、名実ともに、各々国を代表するような大御所なのは間違いない。
ちなみに高倉健といえば、実は俳優としてメジャーになる以前は、有名な古着屋「シカゴ」がまだ渋谷の道玄坂にあったころ、そこの店員をしていて、アメリカのヴィンテージに関してはデニムからレザー、ミリタリーからフォーマルに至るまで深い造詣の持ち主だったとか。それゆえ、原宿辺りの古着業界の黎明期を支えた大御所たちから“見習うべき存在”とまでいわれ崇敬を集めているという。
さて、話をイーストウッドに戻そう。ネットでは一部に「イーストウッドが反日だった」という話があるが、コレも実際には根拠不明のトンデモ話だろうねぇ、単に古臭いアメリカ人というイメージからそこに繋がったんだろうけどね、しかし、イーストウッドがTV番組『ローハイド(59)』で知名度を上げながらも、ハリウッドからはTV俳優と格下に見られていた状況から、一躍世界的な映画スターへと押し上げたのは、セルジオ・レオーネ監督のマカロニ・ウエスタン、『荒野の用心棒(65)』であり、それは日本の黒澤明監督作品の『用心棒(61)』を無断で焼き直した作品。
黒澤明監督をして「腹立たしくて観る気にもならん!」と言わしめたものだが、これには後日談があり、黒澤監督が『夢(90)』でカンヌ映画祭に招かれてレッドカーペットを歩んでいるとき、そこでイーストウッドは群衆の中から単身飛び出して黒澤監督の前に跪き、「私の現在があるのは貴方のお陰だ」と深く感謝を述べたという。こんな真似、反日の人ならやらんよな。
加えていえば代表作の『ダーティー・ハリー(71)』もその物語は黒澤の『天国と地獄(63)』に影響されていると思しき話だし、『ダーティー・ハリー2(73)』に至っては望月三起也の漫画『ワイルド7(69)』からインスパイアされていると思しきもの。なんか『硫黄島からの手紙(06)』以前に、イーストウッドは日本に強く縁のある俳優でもあったんだよなぁ。
さて、そんな御大の映画でバイクが登場する映画では『マンハッタン無宿(68)』のトライアンフTR6が印象的だが、ナックルのチョッパーに乗る『ガントレット(77)』もなかなかに印象的だ。また、敵役にバイカー軍団が登場する『ダーティファイター(78)』とその続編『ダーティファイター 燃えよ鉄拳(80)』なんてのもある。大御所絡みとして数多の名作に隠れがちだが、この辺りの旧いB級作品も一見の価値はあるんだよな。
『ガントレット』
原題:The Gauntlet
制作年:1977年
製作:ワーナー・ブラザース(アメリカ)
監督・主演:クリント・イーストウッド
共演:ソンドラ・ロック
1976年当時『ガントレット』の撮影でエキストラとして動員されたのは、ネバダを拠点とする「The Noblemen M/C」。1970年代のリアルなバイカーたちの姿が写されている。
『ダーティファイター』
原題:Any Which Way You Can
制作年:1978年
製作:ワーナー・ブラザース(アメリカ)
監督:ジェームス・ファーゴ
共演:クリント・イーストウッド、ソンドラ・ロック
『アウトロー(1976)』以来、夢グループの社長と演歌歌手のような関係を長く続けたソンドラ・ロックとの共演は今作で2度目。荒くれ刑事の被害者となるバイカーから奪ったナックルのチョッパーは、後の1980年デビューのFXWGのイメージともよく重なる。
(出典/「CLUB HARLEY 2025年10月号」)
text/T.Kurokawa 黑川銕仁
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