一度廃れ2000年代に復活。時代の究極を目指す現代のチョッパーに求めるべきものとは?

70~80年代にかけて一度は廃れ、滅んだかのように見えたチョッパーという存在を2000年代に復活させ、再び息を吹き込んだスタイルがここに紹介するネオチョッパーだろう。その正しき理念についてここでは語りたい。

新たな時代に向けたチョッパーにまつわる提言

ここまでの特集で「ロングフォーク」「オールドスクール」、そして「フリスコスタイル」などさまざまなスタイルのチョッパーを解説してきたが90年代後半から2000年代にかけてJ・ジェームス率いる「ウェストコーストチョッパーズ(WCC)」が登場しなければ世界のチョッパーシーン、その姿は確実になかっただろう。

例えばチョッパーといえば、多くの人がロングフォークのページに登場した“キャプテン・アメリカのソレ”を思い浮かべるのだろうが、過去にパウコ社のレプリカや本物と称される車両に触れた経験を語る限り、ハンドリングや各部の作りなどはズバリいってしまえば辟易する類のもの。チョッパーがなぜ70年代に滅びの道へ向かっていったのかが強く伝わるものだったのだが、しかし、この記事で紹介するWCCの車両はそうでない。

一般的に見ればフォークが長いというだけで“昔ながらのチョッパー”と同列に語られてしまうのだろうが、トレールを算出し、強度を確保すればバイクとしてマトモに走らせることは可能だ。例えばいま、世界的にオールドスタイルのチョッパーが流行しているが、ツボを押さえれば改善は可能だろう。その点を留意してほしい。

チョッパーを復権させた時代の寵児「Jesse James」

ボルトオンカスタムが主流だった90年代当時の業界でハンドメイドのチョッパーという概念を復活させ、隆盛へと導いた立役者といえば間違いなくこのJ・ジェームスだろう。事実、彼の登場以降、世の中にはアメリカのみならず世界中で『CHOPPERS』という屋号を掲げるショップが増加。ひとつの時代を築いたことは記憶に新しい。現在、彼はテキサス州在住。

欧州から米国へ逆輸入されたハイテックの流れ

2000年代に大々的にチョッパーが復活したということをここでお伝えしたが、それ以前からロングフォークを作り続けていたビルダーの代表格といえるのがこのパット・ケネディーだろう。その彼の作風は、いわゆるスウェディッシュスタイルのチョッパーでアメリカのデンバーズに影響を受けた北欧の人々が独自に発展させたものであり、正しいトレールの算出による真っ当な走行性であることが特徴だ。それを米国に逆輸入したケネディーズの功績も大きい。

WEST COAST CHOPPERS|Ultra Boots

2000年代初頭に一大ムーブメントを巻き起こしたネオチョッパーだが、この車両はまさにその典型といえる仕様。スタイルは2000年にジェシーがディスカバリーチャンネルの番組内で走らせた『エル・ディアブロ』を彷彿とさせるもので、ハイマウントのタンクや少しだけ長いフロントフォークなどは、まさしくチョッパーの定石に則ったシルエット。

ビレットパーツを散りばめたハイエンドカスタムといえば、あえていえば上品なイメージなものが多かったが、このマシンにはそこはかとなく不良くさいムードが漂っている。ヘルベントエキゾーストパイプやアイアンクロスのエアクリーナーカバーなどのディテールも実に懐かしい。https://westcoastchoppers.com

KEN’S FACTORY|Velvet Fang

パトリックレージング製のビレットエンジンやマグナチャージャー製ブロワーなど、どちらかといえば「ネオ・ディガー」と呼びたいこのマシンは名古屋の「ケンズファクトリー」による「Velvet Fang」。

ドイツのカスタムショーや米国の「カレンダーショー」、そして2008年の「HCS」の王座など、実績は日本を代表するものだが、別の特集ページで紹介するマシンたちをどことなく『和』を感じるもので固めたゆえ、あえてこちらに掲載したことをご了承願いたい。https://www.kens-factory.com

CUSTOM WORKS ZON|PROGRESSO

「カスタムワークスゾン」に2007年のスタージス「ラッツホール」で優勝をもたらせた片持ちスイングアームのチョッパー、「Hadal」の流れを感じるこの「PROGRESSO」は、同店一連のプロアームチョッパーで頂点の一角を占めるといっても過言でないクオリティを誇る。

エンジンはショベルの腰下にSTD製パンを組み合わせたものだが、ご覧のとおりフィニッシュはオールドスクールのソレではなく、美しくもハイテックな佇まい。この一台も日本のカスタム史に名を残す秀作。https://cw-zon.com

TRIJYA|Excalibur

2017年に千葉県の幕張メッセで開催された「ベイエリアカスタムショー」のフリースタイル部門で頂点に立ったのが大阪の「トライジャ」によるこのネオチョッパー。タンクからフェンダーまで一体化された圧巻のメタルワークによって仕上げられたスタイルは、どちらかといえば「ユーロ系ロングフォーク」の流れを感じさせるものとなっている。テクノロジーを注ぎ込むことも、この手のマシンの基本だ。https://trijya.com

Tom Foster’s|Captain Insane-O

車体を塗りつぶし、シルエットだけになった姿を想像してみると「ネオ・フリスコ」と呼んでも差し障りのないこの一台は米国のビルダー、トム・フォスターの手によるもの。事実、このマシンはエンジュニティモーター製エンジンを搭載し、リアタイヤをかき鳴らすほどのパワーを誇るのだが、求めたのはかつてのフリスコと同じく“走り”の要素である。

BAD LAND|HARDCORE : SUPER SPEC VERSION

1990~2000年代にかけて頭角を現したマーカス・ウォルツ率いるドイツの「ハードコアサイクル」だが、そのフレームにイタリアのレブフィニ製アルミスイングアームを組み合わせたこの一台は横浜の「バッドランド」が製作。

ドロップダウンされたシートレールや極太のワイドタイヤなど、まさに正統なユーロドラッグスタイルとなっているのだが、サイドビューからの姿を見る限り、これもネオチョッパーといえるだろう。https://www.badland.net

(出典/「CLUB HARLEY 2025年10月号」)

この記事を書いた人
CLUB HARLEY 編集部
この記事を書いた人

CLUB HARLEY 編集部

ハーレー好きのためのマガジン

ブランドとしての知名度が高く、独自のアパレルにもファンが多いハーレーダビッドソンは、バイクにあまり馴染みのない『ごく普通の人』にも大変な人気を博しています。バイクの知識がない人はもちろん、今日ハーレーのことが気になり始めた人、そしていまハーレーが好きで好きで仕方ない人たちも満足のいく情報を詰め込んだ雑誌が『クラブハーレー』です。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

「アイヴァン」からニューヨークに実在する通りの名前を冠した新作アイウエアコレクション登場

  • 2025.11.21

ニューヨークに実在する通りの名前を冠した「アイヴァン」の新作コレクション。クラシックな要素をサンプリングしながらも現代の空気感を絶妙に捉え服と同等か、それ以上にスタイルを左右する究極のファッショナブルアイウエア。 Allen 2023年、NYに誕生した「ビースティ・ボーイズ・スクエア」。その付近で出...

【ORIENTAL×2nd別注】アウトドアの風味漂う万能ローファー登場!

  • 2025.11.14

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【ORIENTAL×2nd】ラフアウト アルバース 高品質な素材と日本人に合った木型を使用した高品質な革靴を提案する...

今っぽいチノパンとは? レジェンドスタイリスト近藤昌さんの新旧トラッド考。

  • 2025.11.15

スタイリストとしてはもちろん、ブランド「ツゥールズ」を手がけるなど多方面でご活躍の近藤昌さんがゲストを迎えて対談する短期連載。第三回は吉岡レオさんとともに「今のトラッド」とは何かを考えます。 [caption id="" align="alignnone" width="1000"] スタイリスト・...

この冬買うべきは、主役になるピーコートとアウターの影の立役者インナースウェット、この2つ。

  • 2025.11.15

冬の主役と言えばヘビーアウター。クラシックなピーコートがあればそれだけで様になる。そしてどんなアウターをも引き立ててくれるインナースウェット、これは必需品。この2つさえあれば今年の冬は着回しがずっと楽しく、幅広くなるはずだ。この冬をともに過ごす相棒選びの参考になれば、これ幸い。 「Golden Be...

上野・アメ横の老舗、中田商店のオリジナル革ジャン「モーガン・メンフィスベル」の凄み。

  • 2025.12.04

ミリタリーの老舗、中田商店が手掛けるオリジナルブランド、「MORGAN MEMPHIS BELLE(モーガン・メンフィスベル)」。その新作の情報が届いたぞ。定番のアメリカ軍のフライトジャケットから、ユーロミリタリーまで、レザーラバー垂涎のモデルをラインナップしているのだ。今回は、そんな新作を見ていこ...

Pick Up おすすめ記事

2025年秋冬、「ジェラード」から厳選されたヴィンテージモチーフが息づく至高のコレクションが到来!!

  • 2025.12.12

2025年秋冬、ジェラードらしいネイティブアメリカン、ミリタリー、クラシックなワークウエアなど、厳選されたヴィンテージモチーフが息づく至高のコレクションが到来。Lightningがその中からおすすめアイテムを厳選して紹介する。 Salem Coat [Lot No_AG12420] 6年ぶりのリリー...

今こそマスターすべきは“重ねる”技! 「ライディングハイ」が提案するレイヤードスタイル

  • 2025.11.16

「神は細部に宿る」。細かい部分にこだわることで全体の完成度が高まるという意の格言である。糸や編み機だけでなく、綿から製作する「ライディングハイ」のプロダクトはまさにそれだ。そして、細部にまで気を配らなければならないのは、モノづくりだけではなく装いにおいても同じ。メガネと帽子を身につけることで顔周りの...

時計とベルト、組み合わせの美学。どんなコンビネーションがカッコいいか紹介します!

  • 2025.11.21

服を着る=装うことにおいて、“何を着るか”も大切だが、それ以上に重要なのが、“どのように着るか”だ。最高級のプロダクトを身につけてもほかとのバランスが悪ければ、それは実に滑稽に映ってしまう。逆に言えば、うまく組み合わせることができれば、単なる足し算ではなく、掛け算となって魅力は倍増する。それは腕時計...

【連載】ビートルズのことを考えない日は一日もなかった

  • 2024.02.05

80年代、私的ビートルズ物語。 ビートルズ研究と収集に勤しむビートルデイズを始めて早44年(Since1980)。 なにをするにもビートルズが基準だった『昭和40年男』編集長のビートルズ史を、 当時の出来事とともに振り返ります。

上野・アメ横の老舗、中田商店のオリジナル革ジャン「モーガン・メンフィスベル」の凄み。

  • 2025.12.04

ミリタリーの老舗、中田商店が手掛けるオリジナルブランド、「MORGAN MEMPHIS BELLE(モーガン・メンフィスベル)」。その新作の情報が届いたぞ。定番のアメリカ軍のフライトジャケットから、ユーロミリタリーまで、レザーラバー垂涎のモデルをラインナップしているのだ。今回は、そんな新作を見ていこ...