2ページ目 - ファッションの分野からアーティストへ転向。服飾の技術を活かしながら生み出される、山口大樹のファンタジックな世界。

── これまでの経歴について伺います。山口さんは多摩美術大学のテキスタイルデザイン専攻を卒業されていますが、美大に進学したきっかけは何だったのでしょうか?

高校時代に先輩に連れて行ってもらった古着店がきっかけで洋服に興味を持つようになり、そこから雑誌を読んだり、先輩にいろいろ教えてもらったりして、服を作りたいと思うようになりました。進学を考えたときに服飾の専門学校も候補にありましたが、親や先生から大学に行くことを勧められ、美術大学の中でも服作りに関わることができるテキスタイル専攻を選びました。

── 服作りは高校生の頃からしていたんですか?

高校2年生のときに、クライ・ムキの本に載っていたメンズジャケットのパターンを使って、家にあったバスタオルやシャツを解体してジャケットを作りました。手縫いと、母のミシンを使って見よう見まねで作ったのが最初の作品ですね。

── テキスタイル専攻では、どのような勉強をされたのですか?

大学では染めや織りをひと通り学びましたが、とにかく縫うのが好きだったので、縫製ばかりしていました。高校生のときに作ったジャケットの延長で、自分なりに作れるものを追求していた感じですね。

── 卒業後はアパレル関連に進まれたそうですね。

最初は地元のスーツの補正会社でアルバイトをしていました。当時はコム・デ・ギャルソンに入りたかったので、他の企業は受けずに1年間バイトをしながら準備し、翌年応募したんですが落ちてしまって。また1年後に再挑戦し、アルバイトとして入社することができました。

── ファッションへの思いが伝わったんですね。コム・デ・ギャルソンではどんな仕事をされていたんですか?

レディスとメンズのコレクションの縫製を担当していました。メンズはシャツ、レディスは細かいパーツを手縫いで作ることが多かったですね。精密な作業が求められるので、技術はかなり磨かれました。

── そこからアートの道へ進まれたのはなにかきっかけがあったのでしょうか?

ギャルソンで働きはじめてから、日々見ている世界があまりにも目まぐるしく、社員になると制作する時間が確保できないと感じました。それで退職し、アーティストの村上隆さんが運営する会社、カイカイキキに入りました。ギャラリーやグッズショップで働きながら、アーティストの作品に触れる機会が増え、アルバイトを続けながら自分の制作を優先させるためにどうしたらいいか考えて、アーティストへの道を本格的に始めるきっかけになりました。

── その後、2019年の初個展や今年の発表へとつながっていったんですね。個展を終えた今、一番やりたいことなんですか?

早く次の展示をやってみたいですね。今回は、特にストーリーを決めて作ったわけではないのですが、次はひとつの展示のなかで、物語を見ているような感覚になってもらえるようなものにしたいです。それから絵本を描くのもやってみたいです。とにかく、作ること自体が好きなので、どんどん作品制作に集中していきたいです。

ARTEMIS

個展のメインとなったF100号サイズの作品。下絵はなく、何度も色と図形を描き重ねて出てきた形からモチーフを定めるそう。

FROG PRINCESS RIVER CRUISE

具象画のようだが形は曖昧で掴みどころがなく、よく見ると下にも別の形が隠れているのに気づく。描くことで形が生まれてくるという山口さんの制作スタイルが垣間見える。

FANG

Wilsonのヴィンテージ服を使った王冠型の立体作品。2018年制作。古着店で見つけた服を「作品にしたい」と購入することもあるそう。

TWISTED DRAGON RSJ

スタジアムジャンパーを解体して作られたドラゴン。革を割いて三つ編みにしたり、ジャンパーの袖口を脚にするなど、素材の違いが生かされている。

MIND FLAYER

2月にアパレルショップで展示販売していたというキーホルダーは端切れなどを使っているそう。手縫いのステッチや布の組み合わせに技術が光る。

(出典/「2nd 2025年6月号 Vol.212」)

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