父親の代から50年以上も続けている生き字引的な職人
メガネの素材は大まかにメタルとプラスチックに分かれるが、メタルに分類される素材に「サンプラチナ」がある。これは、昭和の時代には高級素材としてメガネ生地に使用されていたものの、80年代に登場したチタンの加工のしやすさから一気に採用されることの少なくなった素材だ。しかし、頑丈で経年劣化が少なかったり、独自の光沢を持っていたりと、サンプラチナにしかない魅力もある。
この素材を使ったメガネづくりを、父親の代から50年以上も続けている生き字引的な職人、坂本和彦さん。彼は「マル」というブランドの製造も一手に担っている。
仕事場は、鯖江にある「定次」という町に佇む、一見何の変哲もない一軒家。しかし扉を空けてみればそこには、旧きよき家内工業を体現する、メガネづくりの原風景が広がる。そのなかで、年季の入った道具を使いこなす彼の姿は、まさに「職人」以外の何者でもない。その巧技をここに記す。
これが昭和期に主流とされていたサンプラチナ素材
「マル」のメガネを構成するサンプラチナ素材。作るメガネのパーツによって、棒状から板状まで、使う形状は様々だ。いまではこの素材を取り扱うメーカーも限られる。
「マル」ブランドのメガネは、サンプラチナという素材の良さを活かした、装飾のないシンプルなデザインが魅力。一山や縄手などのクラシックなディテールも備える。
(出典/「2nd 2024年4月号 Vol.203」)
Photo/Akihito Mizukami Text/Shuhei Takano
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