紺ブレはトレンドどうこうのアイテムじゃなく、絶対に廃れない存在
瀬山 思えば大学時代はドリス ヴァン ノッテンとかダーク・ビッケンバーグみたいな欧州デザイナーズ系も着てたし、名著『ラルフ ローレン物語』に感化されて卒業旅行にLAのブルックスに行って紺ブレも買った。ベルベストなんかのイタリアのサルトものにも袖を通してきたし、とにかく色々なジャンルの服に触れてきました。もしかしたらそうやってある程度経験を積んだからこそ、紺ブレを思い切りお洒落にキメなくても、自然体で着られるようになったのかもしれません。
平 たしかに親しんできた服の変遷によって選びの視点は変わりますよね。石原さんがアガリに選ぶ紺ブレにもすごく興味があります。
石原 実は僕も忖度返ししてるみたいで言いにくいんですけど(苦笑)、自分なら平さんが手がけている「ラファーボラ」を選ぶと思いました。
平 本当に!? なんだか出来レースみたいだなぁ(苦笑)。
瀬山 相思相愛ですね(笑)。
石原 いや本当にまっさらな気持ちで選びましたよ。まず自分のなかでは、首から肩にかけての吸い付きが、最初に見るべきポイントでした。ひと通り試着しましたけど、やっぱりここが美しくない製品は単純に着たくないなと。次に自分のなかで重視したのは、しっかり進化していること。
瀬山 進化ですか。
石原 はい。紺ブレって男服の永世定番じゃないですか。だからこそクラシックなものこそ正統みたいな風潮があると思うんですけど、個人的には30〜40年前のヴィンテージを引っ張り出してきて、それをそのままトレースして作った製品は、単なる懐古趣味なんじゃないかなって。もちろんリプロダクトとしての素晴らしさには敬意を払いますけど、個人的には好みじゃない。スタイルとしてのアメリカントラッドは大好きだけど、製品が昔のままなら、“学生時代に着てたな”と思っちゃう。
瀬山 ラファーボラにはその進化を感じ取れたと。
石原 はい。クラシックに見えてしっかり個性があるし、着心地もすごく軽やかで、年齢を重ねた身体にも優しい。純粋に着た時の見映えも凄く美しいし、素材も仕立ても、あらゆる部分が計算されていることがわかる。ハッキリ言ってダントツに好みでした。
平 たしかに面と向かって褒められると照れますね(笑)。
石原 思えば僕にとって紺ブレは大学時代からこだわりをもって着用してきた定番品目。大学時代なんか、所属していた体育会のラグビー部で支給された紺ブレがダサすぎてどうしても着たくないからって、ラルフの2型の紺ブレ買って、エンブレムを付け直して着てたくらいですから(笑)。
平 それはまたすごいこだわりですね。でも気持ちはわかります。僕らの世代って色々なトレンドを見てきたじゃないですか。それこそDCブランドブームなんかも経験してますし。何度も何度も流行が移り変わる様子を体感してきたからこそ、スタンダードを極めたいって思ってる人が多いような気がする。
瀬山 たしかにそう考えると結局紺ブレって、それこそジーンズみたいなものかも。トレンドどうこうのアイテムじゃなくて、絶対に廃れない存在ですよね。
平 特別ありがたがるものではないけれど、ないと成立しないと思います。
瀬山 服が好きな50代で持ってない人はいませんもんね。
石原 多分これから何年経ってもクロゼットからなくならない気がします。もっと年をとって背中が曲がっても、また紺ブレ着て集まって服談義に花を咲かせましょう(笑)。
平さんチョイス「スウェットのような感覚で気張らずに羽織りたい」
アイビーリーグのスポーツチームで着用されていたブレザーがイメージソース。ウール100%のメルトン素材を使いつつ、アームホールや身幅など、要所をリラックスシルエットに構築することで、ストレスフリーな着用感に。D.C.WHITE 4万1800円(ステイオアゴーTEL03-6447-5095)
瀬山さんチョイス「王道をとっつきやすくモダナイズしていて犬の散歩なんかにも羽織りたくなる」
1960年代のスポーツコートをベースに、フィッティングを現代的にアップデートした定番モデル。ウール×ポリエステルの混紡素材を使用した国産サージ生地は、ハリコシがありシワにも強い。紺ブレ然とした伝統意匠も満載。BEAMS PLUS 4万6200円(ビームス プラス 原宿TEL03-3746-5851)
石原さんチョイス「軽くて美しくて個性的。クラシックをしっかり進化させている」
平さんがデザイナーを務めるラファ―ヴォラの代表作[セミダブル]は近年の新潮流である“シャツ感覚の紺ブレ”のお手本のような一着。あらゆる副資材を省き、至極軽やかに仕上げながら巧みなテーラリングも感じられるバランス。20代の部でも強い印象を残し、本企画のハイライトに。la favola 7万9000円(ラファーヴォラTEL050-5218-3859)
※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。
(出典/「2nd 2023年12月号 Vol.200」)
Photo/Ryota Yukitake Text/Masato Kurosawa
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