2ページ目 - 50代は、そろそろ“アガリ”の紺ブレが欲しいところ。ファッション通たちの最後の一着とは?

紺ブレはトレンドどうこうのアイテムじゃなく、絶対に廃れない存在

瀬山 思えば大学時代はドリス ヴァン ノッテンとかダーク・ビッケンバーグみたいな欧州デザイナーズ系も着てたし、名著『ラルフ ローレン物語』に感化されて卒業旅行にLAのブルックスに行って紺ブレも買った。ベルベストなんかのイタリアのサルトものにも袖を通してきたし、とにかく色々なジャンルの服に触れてきました。もしかしたらそうやってある程度経験を積んだからこそ、紺ブレを思い切りお洒落にキメなくても、自然体で着られるようになったのかもしれません。

 たしかに親しんできた服の変遷によって選びの視点は変わりますよね。石原さんがアガリに選ぶ紺ブレにもすごく興味があります。

石原 実は僕も忖度返ししてるみたいで言いにくいんですけど(苦笑)、自分なら平さんが手がけている「ラファーボラ」を選ぶと思いました。

 本当に!? なんだか出来レースみたいだなぁ(苦笑)。

瀬山 相思相愛ですね(笑)。

石原 いや本当にまっさらな気持ちで選びましたよ。まず自分のなかでは、首から肩にかけての吸い付きが、最初に見るべきポイントでした。ひと通り試着しましたけど、やっぱりここが美しくない製品は単純に着たくないなと。次に自分のなかで重視したのは、しっかり進化していること。

瀬山 進化ですか。

石原 はい。紺ブレって男服の永世定番じゃないですか。だからこそクラシックなものこそ正統みたいな風潮があると思うんですけど、個人的には30〜40年前のヴィンテージを引っ張り出してきて、それをそのままトレースして作った製品は、単なる懐古趣味なんじゃないかなって。もちろんリプロダクトとしての素晴らしさには敬意を払いますけど、個人的には好みじゃない。スタイルとしてのアメリカントラッドは大好きだけど、製品が昔のままなら、“学生時代に着てたな”と思っちゃう。

瀬山 ラファーボラにはその進化を感じ取れたと。

石原 はい。クラシックに見えてしっかり個性があるし、着心地もすごく軽やかで、年齢を重ねた身体にも優しい。純粋に着た時の見映えも凄く美しいし、素材も仕立ても、あらゆる部分が計算されていることがわかる。ハッキリ言ってダントツに好みでした。

 たしかに面と向かって褒められると照れますね(笑)。

石原 思えば僕にとって紺ブレは大学時代からこだわりをもって着用してきた定番品目。大学時代なんか、所属していた体育会のラグビー部で支給された紺ブレがダサすぎてどうしても着たくないからって、ラルフの2型の紺ブレ買って、エンブレムを付け直して着てたくらいですから(笑)。

 それはまたすごいこだわりですね。でも気持ちはわかります。僕らの世代って色々なトレンドを見てきたじゃないですか。それこそDCブランドブームなんかも経験してますし。何度も何度も流行が移り変わる様子を体感してきたからこそ、スタンダードを極めたいって思ってる人が多いような気がする。

瀬山 たしかにそう考えると結局紺ブレって、それこそジーンズみたいなものかも。トレンドどうこうのアイテムじゃなくて、絶対に廃れない存在ですよね。

 特別ありがたがるものではないけれど、ないと成立しないと思います。

瀬山 服が好きな50代で持ってない人はいませんもんね。

石原 多分これから何年経ってもクロゼットからなくならない気がします。もっと年をとって背中が曲がっても、また紺ブレ着て集まって服談義に花を咲かせましょう(笑)。

平さんチョイス「スウェットのような感覚で気張らずに羽織りたい」

 

アイビーリーグのスポーツチームで着用されていたブレザーがイメージソース。ウール100%のメルトン素材を使いつつ、アームホールや身幅など、要所をリラックスシルエットに構築することで、ストレスフリーな着用感に。D.C.WHITE 4万1800円(ステイオアゴーTEL03-6447-5095)

瀬山さんチョイス「王道をとっつきやすくモダナイズしていて犬の散歩なんかにも羽織りたくなる」

1960年代のスポーツコートをベースに、フィッティングを現代的にアップデートした定番モデル。ウール×ポリエステルの混紡素材を使用した国産サージ生地は、ハリコシがありシワにも強い。紺ブレ然とした伝統意匠も満載。BEAMS PLUS 4万6200円(ビームス プラス 原宿TEL03-3746-5851)

石原さんチョイス「軽くて美しくて個性的。クラシックをしっかり進化させている」

平さんがデザイナーを務めるラファ―ヴォラの代表作[セミダブル]は近年の新潮流である“シャツ感覚の紺ブレ”のお手本のような一着。あらゆる副資材を省き、至極軽やかに仕上げながら巧みなテーラリングも感じられるバランス。20代の部でも強い印象を残し、本企画のハイライトに。la favola 7万9000円(ラファーヴォラTEL050-5218-3859)

※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。

(出典/「2nd 2023年12月号 Vol.200」)

この記事を書いた人
2nd 編集部
この記事を書いた人

2nd 編集部

休日服を楽しむためのマガジン

もっと休日服を楽しみたい! そんなコンセプトをもとに身近でリアルなオトナのファッションを提案しています。トラッド、アイビー、アメカジ、ミリタリー、古着にアウトドア、カジュアルスタイルの楽しみ方をウンチクたっぷりにお届けします。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

時計とベルト、組み合わせの美学。どんなコンビネーションがカッコいいか紹介します!

  • 2025.11.21

服を着る=装うことにおいて、“何を着るか”も大切だが、それ以上に重要なのが、“どのように着るか”だ。最高級のプロダクトを身につけてもほかとのバランスが悪ければ、それは実に滑稽に映ってしまう。逆に言えば、うまく組み合わせることができれば、単なる足し算ではなく、掛け算となって魅力は倍増する。それは腕時計...

今こそマスターすべきは“重ねる”技! 「ライディングハイ」が提案するレイヤードスタイル

  • 2025.11.16

「神は細部に宿る」。細かい部分にこだわることで全体の完成度が高まるという意の格言である。糸や編み機だけでなく、綿から製作する「ライディングハイ」のプロダクトはまさにそれだ。そして、細部にまで気を配らなければならないのは、モノづくりだけではなく装いにおいても同じ。メガネと帽子を身につけることで顔周りの...

【UNIVERSAL OVERALL × 2nd別注】ワークとトラッドが融合した唯一無二のカバーオール登場

  • 2025.11.25

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【UNIVERSAL OVERALL × 2nd】パッチワークマドラスカバーオール アメリカ・シカゴ発のリアルワーク...

今っぽいチノパンとは? レジェンドスタイリスト近藤昌さんの新旧トラッド考。

  • 2025.11.15

スタイリストとしてはもちろん、ブランド「ツゥールズ」を手がけるなど多方面でご活躍の近藤昌さんがゲストを迎えて対談する短期連載。第三回は吉岡レオさんとともに「今のトラッド」とは何かを考えます。 [caption id="" align="alignnone" width="1000"] スタイリスト・...

Pick Up おすすめ記事

「アイヴァン」からニューヨークに実在する通りの名前を冠した新作アイウエアコレクション登場

  • 2025.11.21

ニューヨークに実在する通りの名前を冠した「アイヴァン」の新作コレクション。クラシックな要素をサンプリングしながらも現代の空気感を絶妙に捉え服と同等か、それ以上にスタイルを左右する究極のファッショナブルアイウエア。 Allen 2023年、NYに誕生した「ビースティ・ボーイズ・スクエア」。その付近で出...

グラブレザーと、街を歩く。グラブメーカーが作るバッグブランドに注目だ

  • 2025.11.14

野球グローブのOEMメーカーでもあるバッグブランドTRION(トライオン)。グローブづくりで培った革の知見と技術を核に、バッグ業界の常識にとらわれないものづくりを貫く。定番の「PANEL」シリーズは、プロ用グラブの製造過程で生じる、耐久性と柔軟性を兼ね備えたグラブレザーの余り革をアップサイクルし、パ...

決して真似できない新境地。18金とプラチナが交わる「合わせ金」のリング

  • 2025.11.17

本年で創業から28年を数える「市松」。創業から現在にいたるまでスタイルは変えず、一方で常に新たな手法を用いて進化を続けてきた。そしてたどり着いた新境地、「合わせ金」とは。 硬さの異なる素材を結合させるという、決して真似できない新境地 1997年の創業以来、軸となるスタイルは変えずに、様々な技術を探求...

【ORIENTAL×2nd別注】アウトドアの風味漂う万能ローファー登場!

  • 2025.11.14

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【ORIENTAL×2nd】ラフアウト アルバース 高品質な素材と日本人に合った木型を使用した高品質な革靴を提案する...

今っぽいチノパンとは? レジェンドスタイリスト近藤昌さんの新旧トラッド考。

  • 2025.11.15

スタイリストとしてはもちろん、ブランド「ツゥールズ」を手がけるなど多方面でご活躍の近藤昌さんがゲストを迎えて対談する短期連載。第三回は吉岡レオさんとともに「今のトラッド」とは何かを考えます。 [caption id="" align="alignnone" width="1000"] スタイリスト・...