スタイリングのプロフェッショナルが考える、紺ブレコーデ今っぽい3スタイル

「金ボタンのネイビーブレザーを使って、今の気分で自由にコーディネイトを組んでください」。3人のスタイリストに投げたお題はたったのこれだけ。セカンド編集部で用意したのは、背景紙とトルソーのみ。スタイリングに使うアイテムの選定はもちろん、トルソーの角度からシューズの置き方に至るまで、各スタイリストに一任した。そんなシンプルな条件と自由度の高いテーマだからこそ、それぞれに個性が爆発したスタイリングが際立つ。アメカジ、ドレス、古着、アイビー……。得意分野も年齢もまったく異なるプロたちは、2023年のいま、一体どうブレザーを捉えるのか。

1.梶雄太|「いまのブレザースタイルは、あえてこんな感じ?」スタイル

ブレザー14万3000円/サウスウィック(シップス 銀座店TEL03-3564-5547)、ジップアップパーカ 参考商品/ジャージーズ(FTLジャパン)、ユーズドのTシャツ4400円/フルーツオブザルーム(サファリ1号店+ TEL03-5929-9225)、ユーズドのデニム2万1780円/リーバイス(リオールTEL 03-6454-6802)、マウンテンブーツ10万4500円/パラブーツ(パラブーツ青山TEL 03-5766-6688)、サングラス2万7280円/レイバン(ルックスオティカジャパン カスタマーサービスTEL0120-990-307)、その他スタイリスト私物

最近ブレザーが流行っていますよね。だからなのかな?結果的にこんなスタイリングになりました(笑)。たとえば1シーズン前だったら、ブレザーはトレンドのアイテムでなかったからこそ王道に合わせるのが良かったんですが、いまは流行の渦の中心にいるからこそ、遊び心のあるスタイリングが良い。

逆に言えば、ブレザーが世間の流行と近い時に、スタイリングも王道をやると、直球ストレートすぎる。ブレザーが流行から離れているときにハズしをやってしまうと、今度は少し分かりづらくなる、ということなんです。TPOにもよりますが、「中心との理想の距離感」というのがあって、そこに落とし込むイメージですね。ここまで感覚的で分かりづらい話になりましたが(笑)、理解するには時間がかかります。

だからこそ僕のスタイリングを見て、表面だけ真似してもらえれば入り口としてはそれでいい。「ブレザーとブラックデニムの合わせいいな」とか。ただ、いつか「距離感」を意識できるようになれば、ファッションはより楽しくなります。そして、その感覚を得るためには「本当に服を好きになること」が大事。

好きになると、背景まで知りたくなって、色々なことを俯瞰して見られるようになっていくと思います。俯瞰しないことには、世間との距離感を冷静に観察なんてできませんから。僕のスタイリングを見て、そういう楽しみ方に辿り着く人が増えればいいなと思います。

【ポイント】
・フーディとビーニーでストリートな合わせ

・ブラックカラーのレイヤード
・あえて足元はマウンテンブーツで

梶雄太|1998年よりスタイリストとしての活動を始め、ファッション誌、広告、映画などで幅広く活躍。ブランドディレクションや執筆なども手掛ける大御所

2.シュンサク|「トラッドへのリスペクトを忘れず、世代感を意識しました」スタイル

ブレザー4万1800円/D.C.ホワイト(ステイオアゴーTEL03-6447-5095)、シャツ5万9400円/フレイ(バーニーズ ニューヨーク カスタマーセンターTEL0120-137-007)、ニットタイ1万6500円/ブルックス ブラザーズ(ブルックス ブラザーズ ジャパンTEL0120-02-1818)、シャツ2万5300円/リップラップ(リップラップTEL03-3865-2454)、パンツ1万4300円/グラミチ(インスTEL0120-900-736)、ベルト1万6500円/トリーレザー(メイデン・カンパニーTEL03-5410-9777)、ソックス3Pで2420円/レディースのレイルロードソック(メイデン・カンパニーTEL03-5410-9777)、ローファー1万7600円/ケンフォード ファインシューズ(https://the-kenford-fineshoes.com)、ポケットの中のサングラス1万9800円/パンティードロッパー(@pantydropper_tokyo)、ポケットの中のグローブ6930円/シップス(シップス 銀座店TEL03-3564-5547)、キャップ1万8700円/ストックホルム サーフボード クラブ(エドストローム オフィスTEL03-6427-5901)、トートバッグ1万6500円/リップラップ(リップラップTEL03-3865-2454)

テーマが「アメトラ」ということで、自分にとってのアメトラスタイルをどう表現すべきかすごく悩みました。ただ、今回一番大事にしたかったのは、トラッドをリスペクトしつつ、「どう崩すか」ではなく「自分たちの世代ならどう表現するか」。

まずリスペクトの部分で言えば自分も昔から着ている〈ブルックス ブラザーズ〉は使いたかった。パープルカラーのニットタイがそれです。世代感の表現に関しては、僕らの世代は良くも悪くも雑食なので、異素材の組み合わせを使ったり、国籍を問わないブランドの組み合わせ方を意識しています。素材はニットタイ、ジャージー素材のシャツ、シャンブレーシャツ、ボンディングパンツなど。これらの組み合わせは、自分らしさがよく出ていると思います。

あとは色。これは僕個人の好みでもあると思うのですが、小物で表現している淡い色味の組み合わせもポイント。ほかにもファッションスナップブログ「ミスターモート」が普段SNSにアップしているような「着飾らない良さ」だったり、パッと見いつの時代のものかわからない無時代性のあるスタイリングだったり、最近僕が1番好きな〈リップラップ〉というブランドを入れていたり。

今回の企画において最年少である自分が、自分の世代らしさを全部入れ込んだうえで、あくまで「トラッド」というところに落とし込めた良いコーディネイトになったと自負しています。

【ポイント】
・ニットやジャージーなど、異素材の組み合わせ

・「着飾らない抜け感のあるトラディショナル」を意識
・淡いペールトーンの色合わせ

シュンサク|1996年、埼玉県生まれ。大学在学中からスタイリストとして活動を開始。雑誌や広告、ミュージックビデオなどで幅広く活躍中。アーセナルファン

3.四方章敬|「これが四方流のブリティッシュアメリカンです」スタイル

ブレザー13万2000円、オルタネイトシャツ2万5300円、タイ1万6500円/すべてポール・スチュアート(ポール・スチュアート 青山本店TEL03-6384-5763)、チーフ9680円/シモノゴダール、シューズ5万9400円/ブライスランズ × ボウヒル&エリオット(ともにブライスランズ&コーTEL03-6721-0133)、パンツ5万7200円/ベルナール ザンス(ビームスF TEL03-3470-3946)、ソックス3740円/パンセレラ(真下商事TEL03-6412-7081)

これまでブレザーで色々な合わせを試してきました。ただ、「やりすぎた感」があって、そろそろ正統に戻りたいなと。マイブームはブリティッシュアメリカン。少し歴史の話をすると、〈ブルックス ブラザーズ〉のブレザーが市民権を得たあと、「周りと差別化を図りたい」という人が出てきた。30〜50年代ごろのことです。

彼らは英国でブレザーをオーダーするようになるんですが、やはり作りが違うんですよ。構築的でシェイプも効いてて。これが、まさにブリティッシュアメリカンなブレザーで、〈ポールスチュアート〉や〈ラルフ ローレン〉のようなスタイル。

いま「ミックススタイル」が流行っていますが、ブリティッシュアメリカンはこれをいち早くやっていた。だから、僕も今回は英国×アメリカのミックスを試みました。一見、正統派な英国スタイルにも見えるんですが、シャツはアメリカの香りも漂うタブカラー、シューズはアメリカンなローファーを英国的に解釈したルームシューズ、といったようにアメリカに寄せています。

こういうミックスって感覚だけでやってると説明できないし、持続性もない。何も知らずに「ミックスされちゃってる」のと、意識して「している」のでは、雲泥の差があるんです。なので、知識をつけるというのがすごく大事で、僕の理想は「お、今日ブリティッシュアメリカンっぽいね」みたいな会話が世の中に増えることなんです。

【ポイント】
・アメリカの香り漂うタブカラーシャツ

・構築的なブリティッシュアメリカンブレザー
・ルームシューズはローファーの英国的な解釈

四方章敬|武内雅英氏に師事し、2010年に独立。ドレススタイルに精通し、多数のファッション誌やブランドディレクションなどで活躍中のトップスタイリスト

※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。

(出典/「2nd 2023年12月号 Vol.200」)

この記事を書いた人
パピー高野
この記事を書いた人

パピー高野

断然革靴派

長崎県出身、シティーボーイに憧れ上京。編集部に入ってから服好き精神に火がつき、たまの散財が生きがいに。いろんなスタイルに挑戦したい雑食タイプで、ヨーロッパからアメリカものまで幅広く好む。家の近所にある大盛カレーショップの名を、あだ名として拝借。
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