ラザール・ステュディオのアレクサンドル・カトンに聞いた、「侘び寂び」を湛えるアイウエアの正体。

2020年に誕生、日本では2022年よりグローブスペックスが初めて取り扱いを開始したフランス発のブランド、ラザール・ステュディオ。「侘び寂び」をテーマにしたコレクションを発表するなど、日本独自の感覚をものづくりに落とし込む独自性が魅力だ。デザイナーであるアレクサンドル・カトンのマインドを通し、ラザール・ステュディオが展開するユニークなプロダクトの真髄に迫る。

デザイナー/アレクサンドル・カトン|2003年よりアイウエアデザインに深く関わり始める。その後、国際的な眼鏡学校で講師を務め、コンサルタントも経験したのち満を持して自身のブランドを始動

完全性と不完全性のバランスに魅了される。

中央の[フリーマン]はブランドのアイコニックなモデルの一つ。そのカラー名は“wabisabi”。その重厚感とどこか憂いのある佇まいはもちろん、独自の機構を用いた丁番の仕様やテンプルエンドなどが個性的。右/[jung]6万3800円、中/[freeman]9万2400円、左/[gopnik 47]5万3900円(グローブスペックス ストアTEL03-5459-8377)

渋谷の「グローブスペックス」でそれまでに見たこともなかった〈ラザール・ステュディオ〉のメガネを目の当たりにしたのは、半年ほど前のことだった。明らかにほかとは違うメガネの雰囲気。ブランドの話を聞けば聞くほど気になる、デザイナーのアレクサンドル・カトンという存在。カラー名に「侘び寂び」と名付けるフランス人のデザイナーは、いったいどんなことを考えているのかが知りたくなったのだ。あれから半年ほどが経ち、奇しくもその機会を手にすることができた。

「侘び寂びという言葉を初めて耳にしたのは、何年も前に友人たちと情熱やこだわりについて話していたときだった。モノに対する私の情熱やノウハウ、モノに囲まれることで得られる喜びを彼らに説明していたとき、友人のひとりが侘び寂びの精神について教えてくれた。この哲学を学んだあと、私は自分の周りの場所や人々だけでなく、モノを理解するうえでも、自分のなかにこの精神があることに気づいたんだ。私はあらゆるもののバランスにとても敏感。たとえ自然でさえも、人工的な環境と同じように、それらが考え抜かれ、完璧なバランスをそなえているとき、私はそれらに魅了される。完全性と不完全性の絶妙なバランスは、私を心地よい満ち足りた状態に導いてくれるんだ」

アレクサンドルが侘び寂びを感じるモノ5選。

1.knife

毎日の料理に欠かせないパートナー。「仏コルシカ島のバイク旅で持ち帰ってきた。島のカトラリー職人たちの伝統を受け継いでいる、地元のクラフトマンが作ってくれたものだ」

2.tabacco joke

手巻きタバコなどを収納するケースは、どこへでも持ち歩くという。「パリのパレ・ロワイアル広場にある、愛煙家のためのクラシックな店で買った。イタリア製のハンドメイドさ」

3.coffee mug

毎朝をともにするマグカップは、余計な装飾もなにもないプレーンなデザイン。「何年も前のことになるけれど、人生で初めて東京に行ったときに購入したものだ」

4.bracelets (jewelry)

シルバーアクセサリー類。おもにブレスレット。「ファッション関連のものはあまり多くは持ってないが、これは手放さない。私のシルバー925への愛は永遠なんだ」

5.bag

レザー製の大きなボストンバッグ。「これなしでは何も始まらない。フランス・パリで探したんだけど、結局出会ったのは日本製のボストンバッグだったね」

アレクサンドルへ。メガネ以外の7の質問。

——どんな服が好き?

シンプルでウェルメイドな服。そして、自分の購入するものが、どうやって、どんな生地で作られているか、ということに細心の注意を払っている。なぜならそういった服を着ることで得られる喜びが大きいことを知っているからね。

ちなみに、服はほとんど持っていないし、新品の服を着るのもあまり好きじゃない。白いTシャツは複数枚持っているけど、すべて無地で高品質なコットン製。これを毎日着ている。

——あなたの美的感覚に影響を与えた人を3人挙げるなら?

時代を超越したオブジェクト、ミニマルで機能的なネオ・レトロ・アプローチ、そして「優れたデザインの10原則」を提唱したディータ—・ラムス。

洗練された生理学的なアプローチを組み合わせて、丁寧かつ美的価値の高い家具を制作したレイ&チャールズ・イームズ。

最後はエルヴィン・オラフ。彼の写真世界の美しさと、彼自身のキャラクターから発せられる雰囲気に影響を受けた。

——自分の特徴で好きなところは?

ディテールへのこだわりや、極私的な美に対するバランス感覚かな。

——どんなときにアイデアが浮かぶ?

最高のアイデアが思い浮かぶのは、シャワーを浴びているときだね。ただし、このアイデアを発展させ、具体的な形にしていくには、ラザール・ストゥディオのチームがいるオフィスが欠かせない。

——映画が好きとのことだが、クリエイティブな影響はある?

常に私を魅了してやまない西部劇の世界はさておき、私はマーティン・スコセッシの作品、クエンティン・タランティーノの奇抜な世界観、コーエン兄弟のオフビートな雰囲気に大きな敬意を抱き、そこから多くのインスピレーションを得ている。私は人生で本当に多くの映画を見てきたんだ……。それぞれの年代にはそれぞれのスタイルがあり、私に満足感とインスピレーションをもたらしてくれる。

のちにハリウッドの主流となった40年代のフィルム・ノワール、50年代のクラシックな世界の美しさ、物議を醸す題材をかつてないほど率直に探求した60年代、70年代のロードムービーとスピルバーグやジョージ・ルーカスの始まり、オリバー・ストーン、ジム・ジャームッシュ、デヴィッド・リンチといった若い才能が活躍した80年代のインディペンデント映画、そして90年代の信じがたいスリラーなどなど……。

——音楽は好き?

集中したりリラックスしたりするために、クラシックで軽快なジャズを聴くのが好き。それも、ホテルのバーの奥で、年老いたピアニストが演奏しているようなジャズ。聞き流せる音楽が好きなんだ。

——メガネのほかに、どんなことに興味がある?

20年以上も前からクラシックなアイウエアに魅了され続けているけど、それ以外にも私の興味は多くのテーマに及んでいる。幼少期から慣れ親しんできた現代アートと写真(父がちょっと異常なコレクターだったから)。10代のころに職業にしたいと思っていた家具や建築について。私に多くの満足を与えてくれたオートバイと車への愛もあるし、政治や時事の問題だったり……。とにかくたくさんだね。

【問い合わせ】
グローブスペックス ストア
TEL03-5459-8377

(出典/「2nd 2023年9・10月合併号 Vol.198」)

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パピー高野
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パピー高野

断然革靴派

長崎県出身、シティーボーイに憧れ上京。編集部に入ってから服好き精神に火がつき、たまの散財が生きがいに。いろんなスタイルに挑戦したい雑食タイプで、ヨーロッパからアメリカものまで幅広く好む。家の近所にある大盛カレーショップの名を、あだ名として拝借。
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