“ナンタケットもの”に偏愛! 「グレース」三浦知也さんの偏愛古着論。

古着愛溢れるがゆえに集めた、一癖も二癖もある古着コレクション。真の服好きは大抵、古着に精通する。アメリカ上流階級に人気の避暑地、ナンタケット島とその一帯の湾(サウンド)は、プレッピーなリゾートアイテムの宝庫だった。その小粋かつ素敵な色合いに魅せられた「グレース」三浦知也さんに偏愛を語り尽くしてもらった。

品のいいピンクに 一目で恋に落ちた。

「グレース」三浦知也さん|20代半ばにしてアメリカントラッドに精通し、同店の店長を務める。東京に若いトラッド好きが増えている背景には、三浦さんの影響は無視できない!

目が覚めるようなサーモンピンクのウエアたち。若手トラッドマンの旗手である三浦さんが偏愛しているのは、ナンタケットサウンドにちなんだ古着群だ。

ナンタケットサウンド|サウンドとは湾の意で、マサチューセッツ州南西部に位置する鉤状の半島ケープコッドと、その南沖に位置するナンタケット島などに囲まれた沿岸エリア一体を差す。冷涼な気候で、夏の保養地として人気

「ナンタケットサウンド関連の服を初めて目にしたのは、3年半ほど前の夏のこと。僕が働いているグレースに、日本ではおよそ見かけないような色合いのショーツが入荷したんです。そのショーツ自体は店に並べる商品だったので自分のものにすることはできなかったのですが、小粋かつ素敵な色味にひと目惚れしてしまいました」

グレース|渋谷は神南に構えるアメリカンヴィンテージストア。もちろんトラッドアイテムも大得意。ナンタケットサウンドものも定期的に入荷する

バイイングを担当したオーナーに聞いたところ、それはナンタケット島という島発祥のトラッドアイテムだった。マサチューセッツ州ケープコッド沖に佇むナンタケット島は、優雅だけれども華美ではない、趣きのある上品なリゾート地。古着好きの虫が騒いでディグってみると、ニューイングランド地方の旧きよき心象風景が体現されたような街並みで、アイビーリーガーを輩出する名家の避暑地としても知られているという。

「港町なので、ヨット文化のバックボーンもあって。そんな島ならではのアイテムが、ナンタケットレッドと呼ばれるフェードした赤色の服だったんです。潮風と紫外線とで美しく褪せたサーモンピンクの色味で、かの『オフィシャル・プレッピー・ハンドブック』(1980年代に「新世代のアイビーファッションのルールブック」として刊行されたベストセラー。エリートたちをカリカチュアし風刺する姿勢で編集されていたが、意に反してプレッピー・ファッションの教科書として世に広まり、邦訳もされその影響力は日本にまで波及した)でも、プレッピーが穿くべき赤のコットンパンツとして紹介されていました」

手持ちのワードローブの色と被らず、それでいて合わせやすい。「今の気分」だというニューイングランドスタイルとの相性の良さは言わずもがな。三浦さんがナンタケットレッドのアイテムに傾倒するまで時間はかからなかった。

一瞬抵抗を感じても、合わせてみたら意外なほど着やすい。

「1.シャンブレーハットは、ブランドタグの類が付いていないのですが、裏側に『ヨットクラブ』とプリントされています。詳細は不明ですが、おそらく島のクラブメンバー向けのユニフォームか何かだったのではないでしょうか。2.マークフォア&ストライクは、知る人ぞ知るアイビーブランド。ナンタケットサウンドに位置するショップではないのですが、明らかにナンタケットレッドを意識したカラーリングです。アメリカ人のナンタケット島への憧憬を感じさせてくれます」

この手のナンタケットレッドのパンツに紺ブレを羽織った、ナンタケットトウェディングと呼ばれるトラッドなフォーマルスタイルがあり、ボストンっ子にはお馴染みなのだそう。そのため、

「3.フィッシャーマンスタイルのネイビースウェットもナンタケットサウンドらしいカラーリング。19世紀までは捕鯨で栄えていた島なので、マリンアイテムも特色のひとつと言えます。4.フィッシャーマンキャップも潮の薫りのするアイテムで、ナンタケット島に店舗を構えるショップ、マレーズ(タケットレッドという色名を商標登録しているショップ、およびそのオリジナルブランド。美しく褪色する『フェード保証』を謳っている。ナンタケットスタイルのオーソドックスを追求するなら外せない存在だ)のオリジナル。エナメル素材の長めのつばが日除けになった、オイスターマンハットというスタイルです。ちなみに今一番欲しいのがこのブランドのショーツなんですよ」

ナンタケットレッドを全面に押し出すコーディネートも好みだが、5.バナナリパブリックのロングスリーブシャツや、6.アローのBDシャツのように、レイヤードしてインに利かせることのできるアイテムも所有。アクセントカラーながら悪目立ちせず、品よくまとまるので重宝している。

「ナンタケット島だけでなく、その周辺の島々や本土側の湾も含めてナンタケットサウンド。どこか同じような薫りのするアイテムが見つかります。

7.スーベニアトートは本土側のケープコッドにそびえるノスタルジックな灯台をプリントしたもの。観光地としても人気のスポットだそうで、これは1996年に内陸寄りへ灯台を移設したことにちなんだグラフィックです。僕が同じ1996年生まれという縁も感じて入手しました。

8.ブラックドッグのキャップは、ナンタケットサウンドに面しているもうひとつの島、マーサズ・ヴィニヤード島発祥のブランドです。同島にあったレストランのオリジナルアイテムが由来で、 この犬のマスコットが人気。ナンタケットレッドとのコントラストも素敵ですよね」

9.ニットはナンタケット関連では貴重な秋冬向けのアイテム。詳細は不明のノーブランド品だが、フィッシャーマンスタイルながら赤系色というのが珍しい。「旧きよきアメリカの品を感じさせてくれる島の雰囲気が唯一無二。近い将来、実際にこの足で闊歩してみたい。そのときはもちろん、ナンタケットレッドのショーツスタイルで!」

(出典/「2nd 2023年3月号 Vol.192」)

この記事を書いた人
2nd 編集部
この記事を書いた人

2nd 編集部

休日服を楽しむためのマガジン

もっと休日服を楽しみたい! そんなコンセプトをもとに身近でリアルなオトナのファッションを提案しています。トラッド、アイビー、アメカジ、ミリタリー、古着にアウトドア、カジュアルスタイルの楽しみ方をウンチクたっぷりにお届けします。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

2ndとEDWIN両チームの世代の異なる4人が集結! EDWINと考えるトラッド学

  • 2026.09.15

本誌でも何度も紹介してきたEDWINのコンセプトショップ限定アイテムは、普遍的なデザインとそのクオリティの高さから2ndが理想とするトラッドスタイルともばっちりハマる。今回は初の試みとして、2ndとEDWIN両チームの世代の異なる4名で“EDWINで作るトラッド”を考えてみた。 20代らしくアクティ...

無垢の金属、輝く伝統。純金や純プラチナを使った「市松」の究極の逸品

  • 2026.09.25

純金や純プラチナなど、純度100%の軟らかい金属をアクセサリーにするためには非常に高い技術が必要だ。それを可能にするのが「市松」。約30年にわたって培った“叩く”技術が可能にする唯一無二のリングの輝きに迫る。 熟練の技なくしては完成しない究極の逸品 原材料高騰の影響もあって、希少性が高まっている純金...

トラッドの相棒にドゥニームのジーンズを! ウエアハウスが1988年のクラボウデニムを再現

  • 2026.09.17

1980〜90年代に日本のセルビッジジーンズの先駆けとして一世を風靡したデニムブランド「ドゥニーム」。同ブランドの創業当時のレシピをもとに、再始動を手掛けたのが「ウエアハウス」だ。彼らの徹底的な研究・解析によって生み出された至極の1本は、まさにオーセンティックそのもの。そして、本当の意味での“良い色...

いつもの装いに、頼れる履き心地。この秋は、コートスニーカーとチロリアンシューズがあればいい

  • 2026.09.18

トラッドな装いになら、足元はやっぱり品よくいきたい。でも、履き心地だってこだわりたい。そんな欲張りな気分に応えてくれるのが「ロックポート」。クラシックな佇まいと快適さを両立した2足を紹介する。 品よく履けて、しっかり快適 「お洒落は我慢」とは言うけれど、格好よさも履き心地も譲れない。そんなわがままに...

Pick Up おすすめ記事

Why Banana Republic? 2nd編集部イチ押し「バナナ・リパブリック」アイテムと、ブランドの魅力を徹底解説

  • 2026.09.16

1978年にアメリカ・カリフォルニア州で創業したバナナ・リパブリック。クラシックとモダンが共存する唯一無二のスタイルや歴史を紐解くことで、我々が彼らのプロダクトを手に取るべき“理由”が見えてくる。(記事をご覧いただいた方への特典を最後に紹介しています) [caption id="attachment...

【連載】ビートルズのことを考えない日は一日もなかった

  • 2024.02.05

80年代、私的ビートルズ物語。 ビートルズ研究と収集に勤しむビートルデイズを始めて早44年(Since1980)。 なにをするにもビートルズが基準だった『昭和40年男』編集長のビートルズ史を、 当時の出来事とともに振り返ります。

毎日に、最良の定番。B.V.D.の「GOLD」は昔ながらの良さと、いま欲しいバランスを兼ね備えたTシャツ

  • 2026.09.16

長く愛されてきた定番には、変わらない理由がある。B.V.D.の「GOLD」もそのひとつ。肌着として培ってきた心地よさをそのままに、今の気分で一枚でも着られるリラックスフィットが加わった。昔ながらの良さと、いま欲しいバランス。その両方を備えた、新しい定番のかたちを見ていこう。 変わらない着心地にゆとり...

日本の技で蘇る、旧きよきアメリカンベーシック。100年前の起毛機を使った「DISCUS」のスウェット

  • 2026.09.18

「ディスカス アスレチック」の「MADE IN JAPAN」プロジェクト。和歌山で受け継がれる約100年前の起毛機とそれを支える職人の技。そのこだわりから生み出されるスウェットの魅力を追った。 スウェットの裏側に宿る百年起毛 1973年、アメリカで誕生した「ディスカスアスレチック」。その歴史を日本の...

名作[ハリケーントップ]誕生から40周年! 「CHUMS」の「ハローウェア」が再登場

  • 2026.09.23

「チャムス」の名作[ハリケーントップ]の誕生から40年を迎える今年、「ハローウェア」が再登場する。そのコレクションを紹介する前に、まずはブランドが歩んできた歴史を紐解いていこう。これまでの歩みを知れば、「ハローウェア」をもっと楽しめるはずだ。 ハロー、懐かしくて新しいチャムス サングラスを川に落とさ...