『SKS JAPAN 2025——Global Foodtech Summit』
https://unlocx.tech/sksj2025/
我々の生活と切り離せない『食』を取り巻く数多くの問題
『食』は、我々と我々の未来にとって非常に重要なテーマだ。人類約80億人、日本人約1億2000万人。誰ひとりとして、食と関係なく生きている人はいない。
今なお、安全で栄養のある食事を得られない人は約30億人と言われるし、今後気候変動や人口増により食料供給の問題はさらに深刻になっていくと言われている。日本に限って言えばカロリーベースの食料自給率は4割を下回っており、食料安全保障という意味では非常に危険な状態にある。肉を生産するための環境負荷は非常に大きく、また世界的に見て中国など人口の多い国が裕福になったことから肉食が増え、供給できる肉が不足し、代替タンパク質の開発も重要なテーマになってきている。
また、単に『栄養源』としてだけでなく、食べ物の『美味しさ』を追求することも大事だし、『食文化』という側面もある。これら多くの課題に対してテクノロジーができることは少なくない。SKS(元々は、スマート・キッチン・サミットと言っていた)は、これらの課題に英知を持ってあたるために、多くの人、企業を集めて、さまざまなセッションや、情報交換の場を提供している。ちなみに、一般向けの会場パスは13万円(各種割引あり。詳しくはSKSのサイトを参照のこと)。
『食×テクノロジー』で何が解決するか?
初日の基調講演では、UnlocXの田中宏隆氏とThe SpoonのMichael Wolf氏が登壇し、「日本のフードテック産業は第2ステージに突入した」と語った。世界では食由来の社会課題、たとえばフードロス、タンパク質危機、飢餓といったテーマが緊急度を増しており、それを技術と共創で解決するためには、これまで以上に産業・地域・国を超えた取り組みが必要だという。 また、三井不動産の七尾克久氏、三菱UFJ銀行の鈴木進介氏、さらにニューヨークの社会起業家Stephen Ritz氏が登壇し、都市・金融・教育が「食」を軸にリンクしていく構図が示された。
ここでは、すべてのセッションについて語ることはできないが、NTTデータによる香りの解析、都市開発と食、ジビエのレトルト化による地域創生、AIキッチン、キッチンOS、長寿と食、第一次産業衰退という課題、アグリテック、調理家電、医療と食、世界のフードテックエコシステムとの連携、宇宙と食、日本の食農の伝統技術、日本の食の多様性、醗酵・培養技術、小売り、外食産業……などなど多様で興味深いテーマに関してセッションが開催された。
3日目には、衆議院議員の鈴木憲和さんが登壇されるはずだったのだが、高市内閣で農林水産大臣に就任されたばかりということで、さすがに動画でご挨拶。

……と思ったら、なんとご本人登場!

就任したばかりでお忙しいはずなのに、実際に日本の農林水産大臣が足を運ばれるということに、このイベントの重要性が見て取れる。また、農林水産大臣が食について深く考えていらっしゃるというところに心強さを感じた。

来年は11月5〜7日に開催
外食産業に関するお話には、外食産業の実際に詳しいレストラン予約システム・トレタ代表の中村仁さんも登壇。

最後に主要メンバーが登壇して、来年のイベントについて告知。

来年は、11月5〜7日に開催されるとのこと。食、フードテックにまつわるさまざまなことに興味のある方は、ぜひこのスケジュールを空けておいていただきたい。
ブース展示と開かれた『食のみらい横丁』によるフードエクスペリエンス
このイベントには、オンラインでは楽しめない多様なブース出展もある。
NTTデータと香味醗酵が一緒に開発した「匂いを送信する仕組み」や、Panasonicの調理家電、東洋製罐グループのジビエのカンヅメ他、大企業から小さな地方の会社にいたるまでたくさんのブースが展示されており、見ていて飽きない。

こちらは、池田糖化工業の『大豆のかつお節』。試食させてもらったが、まったくかつお節としか思えない。もっとも、これから出汁をひくことはできないそうだが。

こちらは捨てられることの多い『おから』をベースに、フィッシュフライや、唐揚げ、ギョウザを作った企業。『ディーツ』とネーミングしたそうで、企業名もディーツフードプランニング。
フィッシュフライを試食させていただいたが、まったく違和感のない味だった。ヘルシーだし、普通のフィッシュフライと近い価格で入手可能になるなら、むしろ積極的に食べたい。

屋外には『食のみらい横丁』としてさまざまなフードが食べられる場所が設けられた。

筆者は、プラントミートによる『森のきのこバーガー』と、生湯葉と茶蕎麦のまぜ蕎麦、玄米うどんなどを食べたがどちらも美味しかった。

ちょっと残念だったのは、通りがかった人たちには、これがフードテックの展示だと分かりにくかったこと。おそらく単なるキッチンカーのイベント出店だと思って食べていた人も多いのではないだろうか? 来年は、フードテックの展示であり、それぞれのフードにはどういう意味があるのかを分かりやすくアピールする方法の模索が必要な気がする。

とても、この短いウェブ記事では魅力を伝え切れないのだが、我々80億の人類を取り巻く食の環境には、テクノロジーを使って改革していかないと破綻しそうなところまで切迫した問題が数多く存在する。ぜひ、来年はこの場所に来て、さまざまなセッションを聞いて、展示品を試食してみていただきたい。
(村上タクタ)
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