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Macintosh生誕40周年に考える『Macの本質とは何なのか?』

あの『1984年』にMacが生れてから40年が経った。この歳月はMacにとってどんな40年だっただろうか? 筆者はMacintosh 40周年を祝う為に集まった多くのMac愛好家の方々や、先人ライター、編集者の方々とお会いする機会を得た。そこで教えていただいたことを元に、何がMacを特別なものにしてきたのか考えてみよう。

Macintosh発売40周年記念日を祝う有志の会開催!

Macintosh発売40周年記念日を祝う有志の会開催!

2025年10月27日

MacintoshからMacへ、40年間の飛躍的進歩

あの伝説的なCM『1984』が流れて、40年前の1月24日に初代Macintoshが発売された。

IBMという巨大企業の寡占に、西海岸のスタートアップであるアップルが楔を打ち込むという物語だ。

初代Macintoshは、9インチ(512×342ピクセル)のモノクロディスプレイを持ち、プロセッサーはMotorolaの68000、メモリは128Kバイトだった。ハードディスクはなくて、400KBのフロッピーディスクをストレージとして使っていた。

初代のMacintoshは9インチのモノクロディスプレイを持つ、オールインワンパソコンだった。

つまりはディスプレイ解像度はApple Watch(Series 9で396×484ピクセル)と変わらず、ストレージをすべて使っても、現在iPhoneで撮影する普通の写真(約4MB)の1/10しか扱えなかったということだ。

そこから、40年。すべての性能は飛躍的に向上し、Macは素晴らしい処理速度で、大量のデータを処理できるようになった。

こうしてみると、初代Macintoshと、現在のM3には直接的な繋がりはないように思う。

MacをMacたらしめているものは、何なのか?

ちょっとマニアックな話になるが、ハードウェア的な心臓部であるプロセッサもまったく違ったものになっている。最初のMotorola製から、アップル、IBM、Motorolaの3社連合によるPowerPCになり、インテル製CPUを経て、現在のApple Siliconへと、これまで4種類のまったく違うプロセッサーへの移行を経験しているのだ。

今からちょうど20年前、ジョブズがいない時代に20周年を記念して作られた20th Anniversary Mac。PowerPC 603eを搭載していた。ジョブズが戻ってきた時に窓から投げ捨てたという伝説がある。

さらに、OSも、当初のSystem(Classic Mac OS)から、NEXTSTEPの技術を使ったMac OS X(現行macOS)へと移行しており、外見上はあるていどの連続性を保っているが、内部的にはまったく違うものになっている。

では、何がMacをMacたらしめているのか? Macが好きな人は、なぜMacを使い続けるのか?

実際のところ、現在のmacOSとWindows 11に実用上の大きな差はない。同じようなGUIを持ち、同じようなマルチタスクが可能で、同じように動くアプリもたくさんある。何が違うのか?

40年を経て、ハードウェアもソフトウエアもまったく違うものになった

Macintoshはアップルやスティーブ・ジョブズが作った最初のパソコンではない。

アップルの創業は1976年。つまり、Macが登場する8年も前からアップル社は存在して、『コンピュータ』を作ってきた。

ご存知のように、一番最初に作られたのはApple Iだ。このコンピュータはおよそ200台が販売された(文字通りガレージで作られた、基板のみのコンピュータだった)。そして、より多くの資金を集めて翌年にApple IIを発売。このApple IIは売れに売れたのだそうだ。最終的には200万台が販売され、ジョブズやアップルに巨万の富をもたらした。

極初期の製品であるApple II。たいへん成功して、アップルに繁栄をもたらした。

しかし、続くApple IIIや、Lisaは商業的に失敗したのだそうだ。

1980年の秋にLisaの開発チームから外されたジョブズは、ジェフ・ラスキンが立ち上げた『1000ドル程度の安価なコンピュータ』のプロジェクトに参画する。そして生まれたのが初代のMacintoshだ。

しかし、実は最初のうちは販売はふるわず、最終的にジョブズはMacintoshプロジェクトから外され、アップルを去ることになる。実に初代Macintoshが発売されてから、1年8カ月後のことである。

次にジョブズが戻ってくるのは、アップルがほとんど倒産寸前になった1997年2月のこと。その後、彼はThink differentキャンペーンを展開、PowerPC G3を導入、iMac発売、iPod、iPhone、iPad……と破竹の勢いの進撃が始まるのはご存知のとおり。

ともあれ、こうして振り返ると我々が『古き良きMac』と思ってるMacintoshの大半が、ジョブズがいない時代に作られた製品であるのは皮肉なことだ。

アップル復活の狼煙……ともいえる初代iMac。たくさんあったラインナップを4つに整理したうちの、『パーソナル/デスクトップ』に相当する製品だった。

ジョブズがアップル復活のために打った、彼ならではの特別な手段が2つある。

ひとつは、1997年に彼が戻ってきたばかりの時に、不倶戴天のライバルであるはずのMicrosoftから巨額の出資を引き出し、業務提携を結んだこと。

もうひとつは、2005年のIntel CPU搭載だ。これまでライバルのCPUということで散々こき下ろしてきたIntel CPUを搭載したのには本当に驚いた。

絶対的な『敵』にさえ助けを乞い最大の味方にする、ジョブズの変わり身の早さというか、戦略のためにはプライドを抑えることができる能力には本当に驚かされる。結局のところ、iPhoneに積んだARMチップを育て続けてApple Siliconを開発し、15年後にIntelチップのくびきから逃れるのだから、本当はIntelチップを積みたくなかったのかもしれないが。

つまり、Motorolaから始まって、三者連合のPower PC、Intel、Apple Silicon……という変遷においても、初代からの連続性はないように思える。

シンプルさ、デザイン性の高さ、使いやすさ

というわけで、40年前から継続してアップルを率いてる人はいないし、ハードウェアも、OSもまったく異なるものになっている。『Macintosh』から紆余曲折の40年の歴史を経てきた『Mac』に共通性はあるのだろうか?

初代Macintoshで特徴的だったのは、
1.マウスというポインティングデバイスを使ったGUI
2.そのまま使えるオールインワンの設計
(拡張性の有無に関しては、40年間ずっとブレている気がする)
3.シンプルさとデザイン性の高さに対する強いこだわり
だろう。

そして、その多くは現在も引き継がれている。

また、ハードウェアとOSの双方とも、アップルのみが作り(一時、互換機の時代もあったが)、両者が協調して進化することも大きな特徴で、Windowsとの大きな違いになっている。これはiPhoneのiOSとAndroidでも同じことが言える。

純粋であるが故の偏った愛情

ユーザビリティの高さ、デザイン性の高さ、独自ハード/独自OSへの強いこだわりは、我々Macユーザーにとっては非常に大切なことではあるが、互換性の高さや、拡張性の高さ、そして自分で手を加えること、カスタマイズすることを愛する人にとっては、時に『偏屈』であり、『偏った愛情』であると捉えられることも多く、それを『宗教』であるかのように言う人もいる。

しかし、多くのMacユーザーにとって、それは偏屈な肩入れではなく、独自性があるからこその高速な動作、高速な接続、使いやすさに魅力を感じているのだと思う。しかし、アップル製品を使い続けていない人にとって、それは伝わりにくい魅力なのだろう。

古いMacユーザーはWindowsが大勢となった時に、弾圧された記憶があり(Windowsのドキュメントを開けないとかそういうことで)、なお頑なになるのかもしれない。

ティム・クックのtweetの秘密

そういう、偏狭な愛情も含めてMacの魅力ではある。

現アップルCEOのティム・クックが、40周年を祝うtweetをしている。

素敵なグラフィックだが、表示される製品とサービスにスティーブ・ジョブズが放逐されている時期のものが存在しない……というところにも偏狭な愛情が感じられる(笑)

とはいえ、シンプルさ、美しさ、使いやすさへのこだわりは、40年経ってもアップルをアップルたらしめているといえるだろう。

Vision Proは『Macを継ぐもの』になるのか?

では、この40周年の年に発売されるVision Proは、Macの系譜を継ぐものになるのだろうか?

筆者は、Vision ProがMacの系譜を継ぐものになると考えている。

Macは初代から、今に至るまで、シンプルに、コネクターを少なく、利用時にはユーザーに画面だけが見えるように……と、努力し続けてきた。初代Macintoshは、小さい画面を懸命にユーザーに向けていたし、カラフルなiMacもユーザーにはその色が見えにくいように作られており、ディスプレイの周囲は必ず白か黒の一定の太さの帯で囲われている。

Vision Proは非常にシンプルだし、利用時には文字通り画面しか見えない。本体は消え去ったように思える。ある意味、Macが追い求めていたものの究極の姿がそこにある。

十年後、オフィスでは誰もがVision Pro(もしくは、他社によるその模倣品)を装着して、仕事をしている可能性は十分にあると思う。

記憶されている方は、もう中高年になると思うが、たかだか40年前のオフィスのデスクにはパソコンがなくて、手書きで書類を書くのが仕事だったのだ。40年を経て、オフィスからパソコンが姿を消すことになっても何も不思議はないと思うのだ。

(村上タクタ)

 

この記事を書いた人
村上タクタ
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村上タクタ

おせっかいデジタル案内人

「ThunderVolt」編集長。IT系メディア編集歴12年。USのiPhone発表会に呼ばれる数少ない日本人プレスのひとり。趣味の雑誌ひと筋で編集し続けて30年。バイク、ラジコン飛行機、海水魚とサンゴの飼育、園芸など、作った雑誌は600冊以上。
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