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4年ぶり開催のCP+から展望する日本のカメラ業界、これからどうなるの?

  • 2023.02.24

4年ぶりにCP+が開催されたので、取材に行ってきた。なにしろ、3年前は開催直前から例の感染症が急に蔓延し、直前に中止となったのだ。多くの人が、カメラを触ってファインダーをのぞくのだから、感染予防的にはやむなし……というところではあるが、我々が取材する大規模なイベントとしては、最初に中止になったイベントだったので(しかも直前に)、ショックは大きかった。そのCP+がリアルに開催されるようになったのだから、まずは喜ぼう。開催は本日2月23日(祝)から、26日(日)まで。4日間の会期のうち3日が休日というのは、趣味としてカメラを楽しむ人には足を運びやすい日程だろう。

3年前の様子( https://funq.jp/flick/article/563336/

アニメ風の若い女性のイラストと「見つけた、新しいわたし」というキャッチフレーズからは、「若者にアピールしたい」という思惑を感じるのだが、実際の来場者はそうでなかったように思う。この乖離をどう捉えるか……。たしかに、もっと世代交代を進めるべきだとは思うのだが、各メーカー超高級機種/レンズ中心の現状なので、この絵は無理があるような……。

CP+
https://www.cpplus.jp/

日本最大のカメラの展示会CP+は、4年のブランクを経てどう変わったか?

カメラ業界って、日本にとってはとても大切なものだと思う。産業として、コンピュータも、家電も、世界トップシェアを席巻していたのは遠い昔……だが、カメラにおいては今でも日本がトップシェアを誇る先進国だ。電子機器、半導体……を、台湾、韓国、中国に持っていかれたとしても、レンズという一種工芸的な精密加工品の製造は日本のお家芸であり続けているのだ。

今や、自動車も日本の立ち位置が圧倒的でないことを考えると、カメラという牙城は、日本の産業界にとって、とても大切なものだといえる。

そんな中、日本で開催される最大のカメラの展示会であるCP+は、4年のブランクを経てどう変わったのか。そこから何が読み取れるだろうか?

キヤノン、ソニー2強体制確立

まず、会場全体の規模は多少小さくなっている。展示ブースも数も広さも少々縮小されているといってもいいだろう。初日午前中のプレス、VIP入場者だけの時間帯は、少し人の入りが少ないのではないかとヒヤヒヤしたが、正午を過ぎて一般来場者が入れる時間帯になると、休日ということもあって多くのカメラファンが詰めかけ、『盛況』という状態になった。まずは、多くのカメラメーカーの方々も胸をなで下ろされたのではないだろうか?

CP+にかけた費用の大きな目安になるブース面積は、キヤノンとソニーが圧倒的に両雄。ニコンはだいぶ差をつけられてる感じだった。長年カメラ好きなら、キヤノン派かニコン派か? と聞かれたものだが、ソニーが圧倒してしまった感じがする。ニコンファンの人にとっては寂しいところだろう。ぜひ、盛り返しを期待したいところ。

ソニーは、2006年にコニカミノルタのカメラ事業とαブランドを受け継ぎ(Aマウント)、2010年にEマウントのα NEXを発売した(筆者もNEX-5Rを買って、しばらく使っていた)。そこから、10年あまりでトップのキヤノンと伍するところまで来たのだからすごい。

そういえば2010年頃には、コンデジもいっぱいあったし、まだまだ一眼レフがフラッグシップだったものだが、今やコンデジはほとんど見かけなくなったし、フラッグシップモデルはほぼすべてミラーレスになっているのだから、デジタルカメラの進歩は隔世の感だ。

もちろん、見過ごすことができないのは、iPhoneをはじめとしたスマホカメラの躍進で、ここ10数年のカメラ業界は、スマホカメラとの戦いだったといえる。

コンデジがどんどん減少し、連携や、棲み分けで、スマホカメラとの共存をいかに図るか? みたいな時期もあったが、いまやCP+はスマホのカメラと無縁な、大きな光学系を持った高価な機材のみが生き残ってるように思う。

結局のところ、連携も共存も無理で、小さなレンズを使って取得した画像をコンピューテーショナルフォトグラフィで美しく演算して仕上げるスマホと、コンピュータの処理を使いながらも大径レンズと大型のセンサーで取得した大きなデータで、本当に光学的に美しい写真を取得するミラーレス一眼の2派はきっぱりと別れたように見える。

それを示すように、キヤノンはじめ大きなカメラメーカーには、アクティブスポーツを実演し、望遠レンズ、高速AFと、早い連写速度で、アクティブスポーツをの動きを止めることができるか試せるブースと、美しいモデルさんがしゃなりしゃなりと歩いて、明るいF値でピントの浅いレンズでも瞳AFがいかに素早く動作して、目にカッキリとピントが来て、背景が美しくボケるかを試せるブースが設けられていた。モデル撮影を体験できるのも、CP+の魅力ということだろう。

新製品が少ないのは開発スパンを考えると仕方ない?

キヤノン、ソニーに次ぐスペースを確保しているのが、ニコン。続いて富士フイルム、パナソニック、タムロン、シグマ、OMデジタルソリューションズ……となっている。

CP+をどれだけ重要視するかという姿勢の違いはあるだろうけれど、おおよそ現在の勢力図を反映した順番となっているといえるだろう。

OMデジタルソリューションズは、オリンパスの映像事業部門が譲渡された会社。リコー/PENTAXの出展がなかったのが驚きだし残念だった。もっとも、PENTAXはもちろん、THETAやGRもあるのだから、何か今回は出展しない理由があるのかもしれない。

逆にタムロンやシグマ、コシナなどのレンズメーカーは頑張っているというか、勢いがあるのだなと感じた。特にタムロンはパナソニックと同等サイズのブースを出しているのだからビックリだ。

あとCP+といえば、新製品が楽しみなハズなのだが、完全新製品のボディといえば、キヤノンのEOS R8、R50、そして、パナソニックのS5IIぐらいだろうか(見落としてたらゴメンなさい)。もちろん、レンズなど他の新製品はいっぱいあるのだが、カメラの新製品がそれだけというのは少し寂しい。

もっとも、3年間開催されていなかったのだから、新製品開発のサイクルも開催されるかどうか分からないCP+に合わせるわけにいかなかったというのもあるかもしれない。また、半導体不足の影響で、予定したタイミングで新製品を発表できないことも多かったと聞くから、かならずしもCP+の影響力が低下してるという話ではないのかもしれない。

用品メーカーの数は減っているが、活気はあった

ブース数は減っているのだが、用品関係は非常に活力があったように感じた。ケンコー・トキナーがカメラメーカーに匹敵するサイズのブースを出展していたのには驚いたが、他のブースも軒並み非常に多くの新製品を出展しており、活気があるように感じた。

単にスチールのカメラだけでなく、YouTubeやTikTokなどの動画も含めて、三脚や、ストロボ、LEDライトやその脚、バッグ類、メンテナンス用品……等は必要になるわけで、そういう意味で活気があったのだと思う。

全般として、規模が縮小しており、大手カメラメーカーの栄枯盛衰の影響があることは否めないが、それでもカメラファンは多く、ひさびさに開催のリアルCP+にたくさんの人が足を運んだというのは、業界にとって明るい兆しだといえるだろう。

筆者も今年、カメラ2台、レンズ5本を買ったわけだが、いくらコンピューテーショナルフォトグラフィが進化したところで、いや、進化しきったからこそ、純粋に優れた光学機材で撮った写真の良さが際立つようになってきたと思う。

また、実際に足を運ぶことで、多くのカメラメーカーの方、機材メーカーの方、ライターさんやカメラマンの方々にお会いすることができ、4年ぶりに雑談を交わすことができた。これまたリアルイベントの大きな意義であるといえるだろう。

26日まで、あと3日あるので、カメラにご興味のある方は、ぜひパシフィコ横浜に足を運んでいただければと思う。

オマケとして、私事を少々

あとは、私事を少々(笑)

EOS R8の実物に触れることができた。

先日、EOS R6 Mark IIを買ったばかりの筆者にとっては、心穏やかならざる新製品である(笑)。サイズ感は思ったほど変わらなかったが(そもそも、縦グリップのあるR3は別として、R5、R6 Mark II、R7、R8には、そんなに大きなサイズの差はない)、やはり軽さは際立っていた。しかし、カメラはレンズとの重量バランスもあるので、そこはそれほど気になるポイントではなかった。

右が自前のEOS R6 Mark II、左がEOS R8。

センサーサイズや、AF能力が変わらないというのは、心穏やかではないが、それでもボディ内手ブレ補正がないとか、バッテリーが小さいとか、いろいろ差はある。少なくともR8が発売されていてもやはりR6 Mark IIを選んだだろう(と、心を落ち着かせる)。

それと、今回、筆者がバッグや三脚、iPhoneケース関連機材を愛用しているPeak Designのカタログに、ユーザーとしてご紹介いただいた。サンフランシスコのアンテナショップに足を運ぶほどのPeak Designファンとしては、これほどうれしいことはない。しかも想定外なことに、ほぼ一番最初のページに掲載されていた。日本代理店の銀一のご担当である清水雅之さんは、「捨てられない、取っておきたくなるカタログを目指した」とおっしゃっていたので、そこに登場できたのは大変うれしい。もし、Peak Designのカタログを手にする機会があれば、ぜひ手に取ってご覧いただきたい。

(村上タクタ)

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