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ティム・クックが熊本のソニーを訪れた理由と、脱炭素化コミット

昨日、ティム・クックCEOとグレッグ“Joz”ジョズウィアックSVPが熊本を訪れ、熊本県立大学や、iPadが導入された学校を視察した話を報告した。その時、熊本には、TSMCや、ソニーの半導体工場があることにも少し触れたが、昨日、ティム・クックがソニーセミコンダクタソリューションズ熊本テクノロジーセンターを訪問したというリリースが発表された。これについて詳しく解説しておこう。

ティム・クックが来日した理由と、日本への1,000億ドル以上の投資

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2025年10月17日

ティム・クックの熊本訪問が気になる

iPhoneの構成要素の中で、重要な部品を2つ挙げろと言われたら、CPUやGPUを集積したAシリーズチップと、写真を撮るためのイメージセンサーが挙げられるだろう。

前者はその昔サムスンなどでも生産されていたが、現在は台湾のTSMCですべてが作られている。そして後者は、今回ティム・クック CEOが訪問したソニーセミコンダクタソリューションズで生産されている。何はなくとも、この2つがなければ、iPhoneはiPhoneたりえないのである。

ここからは少し余談であり、推測が混じってくるが、年間2億台以上も生産されているiPhoneの心臓部であるAシリーズチップが台湾で作られていることに関して、我々一般人でも地政学的に少々の不安を感じなくはない。昨今の世界的な半導体不足は、IT系企業のみならず、家電や自動車業界にも大きな影を落としていることはご存知のとおり。台湾には現在の状態を保っていて欲しいが、アップルほどの巨大企業になると当然のことながらプランBも検討するはずだ。すでにTSMCはアメリカに5nmプロセスの工場を進めている。

しかし、TSMCは熊本にも工場の建設を進めている。それが、このソニーセミコンダクタソリューションズの工場の敷地の隣であるとなると、思わず色々な想像をしてしまう。もっとも、TSMCの熊本工場はiPhoneなどに使う最新の半導体ではなく、自動車や電化製品などに使う22~28nmプロセスの製品だそうだが、「次は?」と思わなくはない。

ソニーセミコンダクタソリューションズの工場があり、TSMCの工場が熊本に進出するのには理由がある。それは『水』だ。

半導体工場は大量の純度が非常に高い『水』を必要とする。もちろん、イオン交換や逆浸透膜などの浄化処理は行うのだろうが、元の水の純度が高いに越したことはない。熊本一帯は、阿蘇山の噴火の火山礫でできており、土地自体が巨大なフィルターとして水を浄化するため、純度の高い水が豊富。そのため、ソニーをはじめとした精密機器メーカーの他、富士フイルム、コカコーラやサントリーなどの工場が進出している。ティム・クックはその『熊本の可能性』を自分の目で確認したかったのかもしれない。

アップルとソニーの長きに渡る『絆』

もちろん、以上は『下司の勘ぐり』であり、本来のところ、ティム・クックが見に行ったのは、ここ10年以上iPhoneの『眼』であるイメージセンサーを生産するソニーセミコンダクタソリューションズ熊本テクノロジーセンターの製造現場だ。

同社では、ソニーグループ株式会社 代表取締役会長 兼 社長CEOの吉田憲一郎氏がホストとして、ティム・クックを案内したという。

吉田氏はこう語ったと言う。

「ソニーは創業以来、クリエイティビティとテクノロジーにより、社会にイノベーションと新しい体験価値を提供してきました。アップル社はソニーのイメージセンサー事業にとって、大変重要な顧客であり、同時にイメージセンサーの技術革新を発展させるための重要なパートナーです。今回ソニーの熊本テクノロジーセンターにアップル社の ティム・クック CEO とそのメンバーをお迎えし、我々の最先端のイメージセンサーの製造現場を見ていただくととも に、技術開発や活用の方向性について意見交換できたことは大変有意義でした。イメージング&センシング技術は、ソニーグループが『感動』を創り続けるための中核を担う重要な技術であり、 今後もこの進化を追求してまいります」

また、ティム・クック氏は、「iPhone 14 のラインアップには、世の中を今までにないほど鮮明にとらえるカメラシステムを含め、強力な新機能が詰め込まれています。本日、吉田 憲一郎CEO、そして彼のチームと共に熊本にあるソニーの最先端の施設を訪れ、世界最高水準のカメラセンサーと、絶え間ないイノベーションの推進に向けたお互いのチームの協力を目にすることができました」と語ったとのこと。

ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社がアップル向け生産分に関して、脱炭素化を表明

また、アップルにとって非常に重要な点は、ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社がアップルの進めるサプライヤーの脱炭素化に大きくコミットしたことだろう。

アップルは世界中のサプライヤーに100%再生可能エネルギーの使用を要望している。また、アップルが部品を購入する企業に対しては、2030年までに100%再生可能エネルギーの使用を要望している。そして、すでに村田製作所や、恵和といった企業が、2030年までにアップル向け製品を再生可能エネルギーで生産することを約束している。

今回、ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社は、自社設備からの直接排出分を含めて2030年までに脱炭素化を表明した。つまり、ほぼ100%脱炭素化するということだ。これは、商品を物理的に生産する工場にとっては、かなり大変なことだ。

半導体供給の問題も大切だが、地球環境をより良いカタチで次の世代に渡すことも大切。ティム・クックの熊本訪問は、さまざまなことを示唆しているといえるだろう。

(村上タクタ)

 

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村上タクタ
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村上タクタ

おせっかいデジタル案内人

「ThunderVolt」編集長。IT系メディア編集歴12年。USのiPhone発表会に呼ばれる数少ない日本人プレスのひとり。趣味の雑誌ひと筋で編集し続けて30年。バイク、ラジコン飛行機、海水魚とサンゴの飼育、園芸など、作った雑誌は600冊以上。
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