すべての今回発表のモバイル製品に、交通事故の検出機能が搭載された
まず、全体に言えるトピックとして『衝突事故検出』の採用が挙げられる。これは今回発表されたiPhoneとApple Watchのすべてに搭載された機能で、交通事故の衝撃を感知し緊急通報サービスに電話をかける機能だ。
日本ならまだしも、アメリカなどの広い国では交通事故が起きた時に周囲に通報してくれる人がいるとは限らない。事故時に素早く緊急通報をすることで、早く救急車を出せれば、それだけ救える命が増えるのは確かなことだ。
この機能は、単に衝撃だけを測っているのではなく、最大256Gまでの衝撃を測定できる新しいデュアルコア加速度センサーとハイダイナミックレンジのジャイロスコープの搭載と、気圧計、速度を測るGPS、大きな音を感知するマイク……などの組み合わせで、交通事故を感知する。アップルは「できることなら効果を発揮して欲しくない機能」というが、これまで収集したiPhoneのデータのなかに、こうした不幸なアクシデントのデータも数多くあったのだろう。Apple Watchは交通事故で亡くなる人を減らすことに乗り出したということだ。
今回の全ラインナップに搭載されたということは、今後のすべてのアップルのモバイル製品に搭載されるということだろう。これは大きなムーブメントだ。
また、iPhone 14シリーズは緊急時の衛星経由のSOSも可能になった。ただし、現状はUSとカナダのみで機能する。また、2年間は無償……とのことなので、後々には有償になるのかもしれない。日本でも導入されることを期待したい。
また、ラインナップ全般としてバッテリーライフの向上も見られるようになってきている。これも、チップセットの省電力性能の向上などと組み合わさって効果を発揮するようになっているといえるだろう。
iPhone 13の上位モデルほぼ同等のiPhone 14
iPhoneは14と14 Proの2ライン構成だが、スタンダードモデルの方はminiがディスコンになり、代わりに14 Plusという6.7インチディスプレイを搭載した製品がラインナップされた。これにより、どちらのラインも6.1インチと6.7インチの2種類のモデルが用意されるということで、分かりやすくなった。とはいえ、小型のiPhoneという選択肢がなくなったことを残念に思う人もいるだろう。
iPhone 14と14 Proは非常に大ざっぱに言うと、iPhone 13と13 Proのステレンスボディをアルミにして、望遠レンズを取り除いたような構成になっている。チップセットも、GPUが5コアのタイプのA15 BionicでiPhone 13 Proに搭載されていたものと同等だ。もちろん、衝突事故検出や衛星通信の機能も追加されているので、それほど単純なものではないだろうが、f1.5のレンズに1.9μmピクセルを組み合わせたメインカメラや、超広角カメラも同等のものが搭載されている。ボディがステレンスからアルミになって軽くなった分、カジュアルでお買い得なモデルになったとも言える。
iPhone 14と14 Plusの予約注文は9月9日午後9時から。iPhone 14の発売は9月16日、iPhone 14 Plusは10月7日となっている。価格は11万9800円から。
A16 Bionicと4800万画素搭載と、圧倒的なiPhone 14 Proシリーズ
しかし、今回はProモデルとの性能差は大きい。
iPhone 14は13 Proに搭載されたものに近い仕様のA15 Bionic Proを搭載しているが、14 Proは、最新鋭のA16 Bionicチップセットを搭載している。
コア数などは変わらず、トランジスタ数の変化は約160億→約170億、ニューラルエンジンの演算回数約15.8兆回→約17兆回なので、差違がどのぐらいあるかは、実機を触ってみないと分からない。
最大の特徴はカメラだろう。従来のものよりさらに大きくなった3連のカメラユニットは、望遠、メイン(以前は広角と言っていた)、超広角の3つとも性能向上を果たしている。
特にすごいのがメインカメラで、4800万画素のクアッドピクセルセンサーを採用。普段はこの解像度を暗所性能の強化や、センサーの一部を使った2倍望遠オプションに使いつつ、ProRAW撮影の場合は4800万画素の高精細画像を出力する。新型センサーをいろいろと工夫して使っており、いろんな場面で画質の向上を達成しつつ、普段撮影している写真のデータ量を増やし過ぎないように非常に賢い実装が行われている。
超広角カメラも、望遠カメラも性能向上を図っており、さらにフロントカメラは初めてオートフォーカスを搭載。強力なA16 Bionicの性能を使って、暗所性能を中心としたあらゆる場面での撮影性能を向上させている。
『プロレベルのカメラとしてのiPhone』に期待するなら、iPhone 14 Proを選択するしかないだろう。
iPhone 14 Proの外見上の特徴として、画面上部にあったいわゆる『ノッチ』がなくなり、楕円形の『ホール』となった。しかし、巧みなのはこの穴を単なる穴とせずに、一種の通知領域、小ウィンドウとして、さまざまなサイズ、用途に変化させることで、そこに『穴』があることに気付かないようなデザインになっている。これは面白い。
またiPhone 14 Proはついに常時点灯ディスプレイを採用。ロック画面の情報量の増大とともに、iPhoneの新しい使い方が提案されている。
iPhone 14 ProもiPhone 14と同じく6.1インチ、6.7インチ、2種類のサイズ展開で、こちらの大きい方のモデルはiPhone 14 Pro Maxと呼ばれる。
円安による価格の上昇が心配されていたが、先日値上げされたiPhone 13シリーズからすると、それほどの価格上昇は見られず、この部分は特にアップルの日本法人が頑張ったな……と感じた。
iPhone 14 Proと14 Pro Maxの予約注文は9月9日午後9時から。発売は9月16日。価格は14万9800円からとなっている。
タフネスモデルApple Watch Ultraはまるでスマートウォッチ時代のG-SHOCK
Apple Watchシリーズは、正常進化のメインモデルであるApple Watch Series 8に加えて、廉価版のSE、そして、エクストリームスポーツ向けモデルのApple Watch Ultraが用意された。
Ultraは登山、トライアスロン、ダイビングなどの超エクストリームなスポーツ向けに用意された超ヘビーデューティモデル。
チタンを採用し、リデザインされた頑強なボディを持つ。フルマラソンや、トライアスロンでも使える長いバッテリーライフも特徴だ。また、高精度2周波GPSを搭載しており、登山時の位置情報の確実な取得に大きなメリットを発揮する。さらにWR100の防水機能を持ち、ダイビングにも使える。
高い性能とワイルドな風貌は、G-SHOCKのようなヘビーデューティなApple Watchのブームを巻き起こすのではないだろうか?
その性能は本当によく考えられており、困難な状況で画面に触らなくても確実な操作をするためのオレンジ色のアクションボタンを搭載している。
筆者も、ジョギングしている時に、汗で滑ったりして画面操作がジャストなタイミングで行えないこともあるのだが、このアクションボタンを使えば、ハードなランニング時はもちろん、グローブをしてのダイビング時にも確実な操作を行うことができる。
ディスプレイは高精細な上に最大2,000ニトという明るさを持ち、劣悪な環境や明るい場所でもしっかりと表示を確認することができる。
従来のApple Watch Series 7の公称のバッテリー持続時間は約18時間だったのだが、Apple Watch Ultraのバッテリー持続時間は2倍のなんと36時間。さらに、新たに設けられた低電力消費設定を活用すると最大60時間まで伸ばすことができる。従来、遅いペースのフルマラソンや、トライアスロンなどではバッテリーが持たないという話もあったのだが、Apple Watch Ultraならそんな心配もなくなるだろう。
筆者はダイビングをしないので詳細は分からないのだが、ダイビングをする人にとっては、ダイブコンピュータとして使えるのがすごいことらしい。今秋に提供されるOceanic+というアプリケーションは、ダイブプランや分かりやすいダイビング指標を提供し、減圧不要限界、浮上速度、安全停止ガイドなどの機能を備えているという。高価なダイブコンピュータとしての機能をApple Watchが兼ねるということで、ダイバーにとっては12万4800円という価格も安く感じるということだ。
実際に手に装着してみると、角張ったデザインはボリューム感を感じるが、G-SHOCKが流行ったことを考えると、都会でApple Watch Ultraを使うのもワイルドな感じがしてカッコ良さそうだ。ベルトは専用のものが付属するようだが、一般的なベルトを使った場合、どんなイメージになるのか、また実機を手にしたら試してみたい。
Apple Watch Ultraはすでに予約注文を開始している。発売は9月23日。価格は12万4800円となっている。
Apple Watch Series 8も十分魅力的、コスパ高い第2世代SE
Apple Watch Ultraの登場で、Apple Watch Series 8は少し地味に感じるようになってしまったが、皮膚温センサーの搭載をはじめ、Series 7譲りの高い機能によって、十分にお買い得なモデルとなっている。特に皮膚温センサーにより、女性の月経周期の記録、予測を行うことができるため、女性にとって自分のサイクルや、その変動を認識しやすくなっている。
SEは従来の第1世代からアップデート。S8やW3などSeries 8と同等の処理能力を持つチップセットを搭載しながら、血中酸素ウェルネスセンサー、電気心拍センサー、皮膚温センサーなどを省略することでリーズナブルな価格を実現している。前者2つは、どちらかというと年齢を重ねてから心配になってくる要素なので、若い人はSEでもいいように思う。一般的なスポーツにおけるアクティビティなどはSEでも計測できる。
もし、お持ちでないなら、取り急ぎSEを入手して、さまざまなアクティビティの記録をキチンと残す習慣をつけるようにしたい。毎日の歩数や心拍、歩幅、歩き方のバランス……などさまざまな数値を取得していくのが健康への第一歩だ。
Apple Watch Series 8と第2世代のSEは、すでに予約注文を開始している。発売は9月16日。価格はSeries 8が5万9800円から、SEが3万7800円からとなっている。
「ずっと耳に入れておくべき」な、第2世代AirPods Pro
今回、発表としては目立たなかったかもしれないが、実はユーザーが非常に多いのがAirPods Pro。このモデルチェンジは大きな影響を与えそうだ。
第2世代となったAirPods Proは、本体形状を大きく変えないまま進化、H2チップを搭載し、空間オーディオの性能が向上し、アクティブノイズキャンセリングの性能をさらに向上させ、タッチセンサーで音量のコントロールが行える。
筆者は第1世代のAirPods Proを発売当初から使っているが、日常的に使うものなので、クオリティ向上は本当にメリットが大きいと思う。
空間オーディオ機能は頭や耳の形を設定してのパーソナライズが可能。そもそも、音というのは普段からそれぞれに聞いている音が違うものなのだ。それを個人個人に合わせて設定することができるようになったのだ。立体音響感はさらに増す。
飛行機の音のようなノイズをスピーカーで流した環境で、新型AirPods Proを使ってみたが本当に静かになって驚いた。また外部音取り込み機能を使っていても、本当に自然に外の音が聞こえるし(外部音取り込み機能は外の音をマイクで拾って、AirPods Proで再生している)、この状況でも85db以上の大きな音は減衰されるようになっている。
つまりは、もうAirPods Proはずっと耳に入れっぱなしの方が、外のノイズの減衰も含め、常に聞きたい音を聞いていられて、耳を守る役目も果たすということだ。この領域にまで到達しているイヤフォンは他にない。本機もきっと大ブームになるに違いない。
ちなみに、形状は微妙に変わっているのだが、旧モデルを新モデルのケースに入れてしまうこともできる(こっそり試してみた)。充電もされるようだ。ケースの下側には『探す』機能を使う時に大きな音を出すスピーカーも用意されいるし、新たにサイドにストラップホールが設けられた。細かい点だが熟成が進んだといえるだろう。
第2世代のAirPods Proの予約注文は9月9日午後9時から。発売は9月23日。価格は3万9800円からとなっている。
どれから買うか、全部買うか?
3年ぶりの現地でのiPhoneの発表会だったが、フタを開けてみたら非常に数多くの製品が発表されて驚いた。
どの製品も、実際の生活の中でどう使われるかを熟考した上で、ハードウェアとソフトウェア、両面から解決策を考え尽くした製品群となっている。
今は、日本円が非常に安いこともあって、我々には少々高く感じるが、それぞれ機能は我々を十分に満足させてくれるものだ。
どのiPhone 14を買うか、どのApple Watchを買うか、その上でAirPods Proに費やす予算は残るか……悩ましい日々が続きそうだ。
また、それぞれ、個別に詳細な記事を書く予定なので、お楽しみに!
(村上タクタ)
こちらの動画レポートもぜひご覧下さい!
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