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アップルがToday at Apple Creative Studioで提供する社会で活躍するチャンス

「その変化にほんとうに驚きました。初回は目を合わせてもくれなかったのに、今は生き生きとして質問してくれるし、お互いに話し合って協力してくれています。準備に携わった私たちとしては、それが何より嬉しくて……」と語るのは、このToday at Apple Creative Studioに携わったApple丸の内のスタッフのひとり。

ご存知の通り、Today at Appleは各アップルストアで開催される無料のワークショップ。iPhoneやiPadを使っての写真撮影のコツや、動画の編集、iPadでのイラストの書き方、Keynoteの使い方などさまざまなテクニックを学ぶことができる。このToday at Appleを活用し、チャンスに恵まれない若者に、クリエイティブの力で世界を広げる機会を提供しようというのが、今開催されている『Today at Apple Creative Studio』だ。昨年ロス、北京、バンコク、ロンドン、シカゴ、ワシントンD.C.の6都市で開催され、今年は新たに東京、ナッシュビル、マイアミ、ベルリン、ミラノ、台北、シドニーの7都市が追加された。

今回は、現在Apple丸の内で開催されている、Today at Apple Creative Studioのセッションのひとつを取材した。

チャンスに恵まれない若者にクリエイティブの力を伝えるイベント

私たちはクリエイティブの力を信じている。

こうやって、記事を書いたり写真を撮ったりすることで、さまざまな情報を伝えることができるし、文章で人のこころを暖かくすることができる。動画もまたしかり。Macや、iPhone、iPadはそのための大切なツールだ。

しかし、世界には、それらのツールに触れるチャンスのない若者がいる。貧困や人種の壁など、世の中にはさまざまな障壁が存在する。その壁を越えて、クリエイティブの力を伝えよう、自分で障壁を乗り越える力を獲得してもらおうというのがToday at Apple Creative Studioという試みだ。

日本にも、貧困や人種の壁とはまた別に、さまざま障壁により機会に恵まれてない若者がいる。学生時代に学校というコミュニティに溶け込めなくて行き場を失った人もいるかもしれないし、さまざまな家庭の事情で、機会に恵まれない若者もいる。現代の硬直化した社会において、そういう若者が就労したり、社会参画したりするのはなかなか難しい場合もある。そんな若者をサポートする『サンカクシャ』という特定非営利活動法人があるのだが、今回アップルは、日本ではこのサンカクシャと協力してToday at Apple Creative Studioを開催した。

1カ月、合計37時間に及ぶセッション

今回のプログラムは1カ月にわたって開催される。土曜日にはクリエイターを招いてセミナーが行われる。そのクリエイターがどのように写真や動画に向きあってきたか、どんな失敗があったか、どういう努力をしてクリエイティブで人を幸せにできるようになってきたかが語られるという。多くのクリエイターには挫折や、人との断絶の経験があるものだ。そこから何かを一心に作ることで、他の人と関わり、今の自分になっっているという人が多い。そんな話を聞いたり、一緒に何かを作ってみたりするという貴重な機会が得られる。こちらは5時間ほどの時間が遣われるという。

火曜日はアップルストアで一般にも提供されているToday at Appleのセッションを2つ、約3時間にわたって受ける。この土曜日のセッションを5回、火曜日のセッションを4回、1カ月間に集中的に経験することによって、写真や動画を撮影・編集したり、プレゼンテーションを作る経験をする。今回参加するのはサンカクシャに来ている18〜25歳の若者15人である。

今回のテーマは『モデルを撮る』と『Keynoteの活用法』

筆者が取材したのは、ちょうどその1カ月の期間の真ん中、3回目の火曜日のセッションで、フォトウォークと、Keynoteを使ってのプレゼンテーションファイルの作り方についてのToday at Appleを受講する日だった。Apple丸の内のフォーラムに若者たちが少し遠慮がちに入場してきた。

Apple Storeのスタッフによるレクチャーは、みなさんもご存知のとおり分かりやすく、親近感のあるもの。今回のテーマは『モデルを撮る』というもので、まずは『ポートレートモード』の使い方、どのような『背景』を選ぶか、そして『動きを切り取る』手法について、スタッフ同士がお互いをモデルにして撮影した写真を使ってレクチャーされる。フレンドリーなスタッフのトークに、参加者の若者たちの表情が少しずつ和んでくるのが分かる。

『もっと元気よく、ジャンプしてみて!』

そこからは、丸の内の歩行者天国の街路に出てフォトウォーク。メンターの方々や、ストアスタッフ、参加者同士でお互いにモデルになりながら、教えてもらったテクニックを実践する。

「設定からカメラアプリの画面にガイドラインを出して、参考にするといいよ」「しゃがんでみたり、手を伸ばしてみたりして上や下からのユニークなアングルを探してみよう」とストアスタッフの方からアドバイスがあり、「もっと元気よく、ジャンプしてみて!」とモデル役を担当した人にもアドバイスが飛ぶ。

すると参加者の若者も「傘を持って、振り返ってみて」「そこでジャンプ!」「その方がかわいいね」と、少しずつコミュニケーションを取って写真を撮るようになってきた。

「ヨシ!」と言ってメンターとして参加しているビデオクリエイターのKENJIさんが歩行者天国の道の真ん中に寝そべってポーズを取ると、参加者の若者も負けじと道路に寝ころんで写真を撮り始めたのには驚いた。『もっといいクリエイティブ』を作ろうというパッションが、彼の中の何かを変化させたのだ。

自分の作品を発表したいという『キモチ』の芽生え

3つのポイントで、『ポートレートモード』、『背景』、『動きを切り取る』という3点をテーマにした撮影を行って、ストアに戻り、今度はお互いの「一番の傑作」を大画面に表示しての品評会だ。

ストアスタッフが「最初は自分から率先してっていうことは全然なかったのですが……」と言うのが信じられないほど、3回目である今回は自分から率先して手を挙げて作品を表示して、それぞれが感想を述べていた。ちゃんと全員が自分の作品を提示し意見を語れるまでになっていたのは素晴らしいことだと思う。

ちなみに、下の写真は歩行者天国の歩道を使って、Beatlesの『Abbey Road』風の写真を撮った作品。折りからの強風に吹かれて傘がオチョコになってしまい、みんなが笑っているという偶然が、さらに作品を良いものにしていた。

自己肯定感が人を前進させる

15分間の休憩を挟んで、Keynoteの活用方法がレクチャーされた。

筆者も知らなかったのだが、iPad用のKeynoteでは動きのあるダイナミック背景を選択できるのだそうだ。このダイナミック背景の前に名前をアルファベットで大きく書いて、周りに手書きで自分の好きなものや、自己紹介を書こうというセッションが行われた。

上の写真はストアスタッフの方の作例だが、参加した若者の何人かは暗い背景を選び、自分の名前を小さく書く人が多く、自信のなさがうかがえた。1カ月のセッションを終えた後、彼らが明るい背景を選び、自分の名前を大きくど真ん中に書けるようになればいいのに……と願った。

やっぱり人が成長して何かを成すには自己肯定感がとても大事なのだ。おそらくこれまでの人生でそういう機会に恵まれなかった若者たちが、Today at Apple Creative Studioで大きく変わっていく光景に、クリエイティブの力を感じずにはいられなかった。

その後のKeynoteのセッションでは、写真のレイアウトに関するレクチャーがあった。そこに添える手書き文字を線描画でアニメーションする方法も教えられた。これも面白いテクニックだ。

3時間のセッションが終わって、若者たちの表情が大きく変わっていたのにはほんとうに驚いた。

冒頭に書いた、最初からこのToday at Apple Creative Studioに関わっていたスタッフの方が驚いたのも当然だ。そして、そのことは、参加者の方だけでなく、クリエイティブに関わる我々にとっても大きな喜びだ。

メンターとして参加されているビデオクリエイターのKENJIさんと、KOOMI KIMさんは、さまざまな事情で開催まで1年半ほどかかったこのプロジェクトにずっと携わっていらっしゃって、その間、忙しい合間を縫ってサンカクシャに足を運び、若者たちに会ってらっしゃったという。たしかに、若者たちはお二人を信頼していたように思う。

ともすれば、クリエイティブのきらびやかな側面にばかり目を向けがちな我々だが、そういう機会に恵まれていなかった若者に対して、アップルのような巨大企業が少なからぬ努力をしていることに驚かされる。

しかし、思い出してみれば、1984年にジョブズが最初のMacを世に出した時からして『for the Rest of Us』のためのコンピュータであると語ったのだ。残された人々のために、最善を尽くすのはアップルのDNAのもっとも根源にある部分なのだ。

このアップルの努力が、もっと大きなムーブメントを起こし、クリエイティブを武器に多くの若者が世に参画していってくれることを願ってやまない。

(村上タクタ)

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村上タクタ
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村上タクタ

おせっかいデジタル案内人

「ThunderVolt」編集長。IT系メディア編集歴12年。USのiPhone発表会に呼ばれる数少ない日本人プレスのひとり。趣味の雑誌ひと筋で編集し続けて30年。バイク、ラジコン飛行機、海水魚とサンゴの飼育、園芸など、作った雑誌は600冊以上。
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