モンブラン(MONTBLANC)はどこの国の万年筆? その歴史も押さえておこう!
モンブランは数々の万年筆ブランドや文具メーカーを有する文房具大国ドイツのブランドである。キャップトップに上品に入れられたシンボルマークや、手にしっくりとなじむ胴軸の上質な樹脂。これらを特徴とするモンブランの万年筆は「不変」の魅力を使い手に与え、持つ喜びを感じさせてくれる。
1924年にスタートしたマイスターシュテュックの大ヒットで急成長した製造元のモンブラン社は、第二次世界大戦後の復興もすばやく、1950年代には職人の魂や作り手の情熱を感じさせる、風格のある逸品の数々を送り出している。
しかし多くのドイツメーカーと同様、80年代には経営状態が悪化し、他ブランドの傘下に入ることとなる。以後、筆記具メーカーというよりも総合ブランドとしてビジネスを展開し、90年代には世界70か国、200店舗を超えるブティックショップが作られた。現在はリシュモン・グループに属している。
【モンブランの略史】
1906 ハンブルクの銀行家・アルフレッド・ネヘミアスと、ベルリンのエンジニア・アウグスト・エーベルシュタインがペンの製作を開始。ほどなく、ヴィルヘルム・ジャンボア、クリスティアン・ラウゼン、後にクラウス・ヨハネス・フォスが事業を引き継ぐ。
1908 SIMPLO FILLER PEN Co.(シンプロ フィラーペン カンパニー)として法人化。ハンブルクに本社を置く。
1909 安全性を高めた万年筆、ルージュ・エ・ノワール発売。「モンブラン」の名が確立する。
1910 「モンブラン」を商標登録。以後すべての筆記具に用いる。改良版万年筆モンブランの白いキャップトップが現在のシンボルマークの前身となる。
1913 シンボルマークとブランドロゴを商標登録。以後すべての筆記具に用いるようになる。
1924 マイスターシュテュックコレクション、誕生。
1929 最高品質の証として、マイスターシュテュック万年筆のペン先にモンブラン山の標高「4810」の数字が刻印される。
1934 社名をMontblanc Simplo GmbH(モンブラン シンプロ有限会社)とする。
1935 レザーグッズメーカーを買収。高品質レザー製品の製造が始まる。
1949 現行モデルに近いデザインの戦後型マイスターシュテュック、146と144を発売。
1952 マイスターシュテュック 149を発売。世界規模で大成功を収める。
1955 60ラインを発売。従来のマイスターシュテュックと平行して販売し、成功を収める。
1986 貴金属を使用したマイスターシュテュック、ソリテールコレクションがスタート。文学、バレエ、音楽の分野への貢献を始める。
1992 偉大な芸術パトロンを讃えるモンブラン国際文化賞を創設。特別限定品のパトロンシリーズ、作家シリーズが発表される。
1993 80年代以降、モンブランを傘下に置いていたダンヒルが、ヴァンドーム・ラグジュアリー・グループS.A.に買収される。このグループが後に世界第2位のリシュモングループとなる。
1997 スイスに関連会社を置き、初の最高級腕時計を発表。ポケットサイズの筆記具、モーツァルトを発売。
2000 ボエムを発売。マイスターシュテュックの発売以来、初めてのサブコレクションがスタートする。
2003 若い世代に向けたスターウォーカーを発売。
2006 創業100周年。シンボルマークの形にカットしたダイヤモンドをあしらった特別モデルを発表する。
2014 マイスターシュテュック90周年。90周年のデザインを施した特別モデルを多数発売する。
おすすめ万年筆といえば外せない! モンブランを代表するモデル「149」ってどんな万年筆?
万年筆のことを知らない人でも「モンブラン」の名は知っている。抜群の知名度を誇るモンブランの代表コレクションが1924年から続く「マイスターシュテュック」だ。その最大モデルとして君臨する「149(いちよんきゅー)」は1952年に誕生後、美しい実用品、ステイタスシンボル、筆記具の王者として確固たる地位を保ち続けている。
モンブラン149 の凄みは、妥協なき設計、高性能にある。特にキャップの気密性の高さに定評があり、インクが乾きにくく、すぐに書き出せる。筆記バランスに優れ、長時間の筆記でも疲れにくい。ペン先、ペン芯の性能が高く、ハードな使い方にも耐える。1952年の発売以来70年、この基本設計を変えずに継続しているのは驚異的だ。
またその性能により、多くの作家をはじめ世界中の王族、政治家、文化人に愛用されてきた。日本でも作家の三島由紀夫や開高健などが愛用者として知られている。また「調印モデル」などとも呼ばれ、条約の調印、王室の結婚式など世界の歴史的瞬間を見つめてきた。
1963年、ドイツのケルン市でゴールデンブック(芳名録)に西ドイツのコンラート・アデナウアー首相が署名する際、自分の万年筆が見つからないというアクシデントが起こったとき、米国のジョン・F・ケネディ大統領が「私のペンをどうぞ」とマイスターシュテュック149をそっと差し出したというエピソードも残る。
【特徴①】コシの強いペン先
スピーディーな大量筆記、高筆圧に耐える弾力を持つ。
【特徴②】インク供給力に優れたペン芯
高筆速・高筆圧に追い付くだけのインクを引く力がある。インク漏れもほとんどない。
【特徴③】手になじむ硬質レジン
ボディーのレジンは非常に硬くて傷が付きにくく、美しさが持続する。質感が良く、握り心地が優秀。
【特徴④】太軸ボディ
自然と適度な力加減になる絶妙な太軸。インクビュー付近は胴軸径約14mm、その後ろは胴軸径約15mmとわずかに膨らみがある。
【特徴⑤】気密性の高いキャップ
長期間使用しなくてもインクが乾きにくい、驚異的な気密性を持つ。設計者の熱意さえ感じる高気密。
データ:収納時約149mm・胴軸径約15mm・重量約33g・吸入式・18金ペン先EF,F,M,B,BB,OM,OB,OBB
149より小型で、手の小さな女性にもおすすめ「マイスターシュテュック ル・グラン (146)」。
マイスターシュテュック149が万年筆の「王者」とすれば、ル・グラン(146)は万年筆の「王道」。
モンブラン146の誕生は149より3 年早い1949年。149に比べると小型で、普段使いに向き、持つ人を選ばない。筆記バランスは世界的にも評価され、この普遍的な万年筆のデザインは数多くのモデルに模倣されてきた。究極の定番モデルである。現在モンブランでは146サイズを「ル・グラン」と呼んでいる。
1960年代~1973年に米国のパーカーやクロスに押され製造中止後、復活という経緯があるためか、不変的なフォルムは継承しつつ、時代とともにマイナーチェンジを繰り返してきた146は常に多くの万年筆愛好家を魅了し続けている。
149のような重厚感を感じられつつ小型のため、149に憧れるけれどサイズ感が……という人におすすめ。
149と146のペン先サイズ比較
149と146はペン先のサイズも大きく異なる。ペン先の長さは149が約27mm、146が約22mm。149の方が5mmも長く、ひとまわりではなく、ふたまわり大きい印象を受ける。
【特徴①】時代のニーズに合わせたペン先
146のペン先は、時代に合わせて変化し、個体によっても書き心地が異なる。50 年代には非常に軟らかいペン先が多く見られる。
【特徴②】優れた筆記バランス
キャップを尻軸に付けても、ボディーのみでも、多くのユーザーが心地よさを感じる太さ、重さ、重心。インクビュー付近は胴軸径約12mm、その後ろのわずかに膨らみを感じる部分は、胴軸径約13mm。
【特徴③】所有欲を満たすデザイン
太さ、長さの見た目のバランスも良い。ブラックのレジンと、キャップリングやキャップトップの意匠との相性も秀逸。
データ:収納時約146mm・胴軸径約13mm・重量約25g・吸入式・14金ペン先EF,F,M,B,BB,OM,OB,OBB
「マイスターシュテュック」に続くモンブランの定番コレクション「スターウォーカー」とは?
現在、モンブランの万年筆には大きく2つの定番コレクションが存在する。主軸のマイスターシュテュックコレクションと、2003年からスタートしたスターウォーカーコレクションだ。それぞれの特徴を紹介しよう。
マイスターシュテュック コレクション
創業以来モンブランがこだわり続ける「プレシャスレジン」と呼ぶ天然樹脂を使った伝統のシリーズ。手にしっくりとなじむ独特の質感を醸し出している。1920年代から不変のゴールド装飾タイプのほか、プラチナ装飾の「プラチナライン」も人気が高い。
また「マイスターシュテュック ソリテール」は、伝統的なマイスターシュテュックのフォルムのまま軸の素材にメタルを用い、プラチナ、ゴールド、スターリングシルバーなどの貴金属を配したマイスターシュテュックの高級ライン。名称に「ドゥエ」と入るものは胴軸にレジンを使ったツートンカラーのモデルだ。ソリテールは金属軸のため総レジンのマイスターシュテュックに比べて重量があり、より高級感がある。
スターウォーカー コレクション
2003年に誕生した「スターウォーカー」は2019年にリニューアル。「スターウォーカー=星の中を歩くこと」、すなわち宇宙と銀河を探査する旅、ミステリアスでパワフルな宇宙の探査をコンセプトに掲げている。
その万年筆は、人間工学に基づく握りやすい軸とモダンなデザインが魅力。モンブランの持つ別の一面を感じさせる近未来的なコレクションとなっている。
毎年楽しみ! コレクターもいる限定モデル「作家シリーズ」と「パトロンシリーズ」に注目。
モンブランでは1992年から毎年限定モデルを作っている。春に発表・発売されるパトロンシリーズは文化・芸術の支援に功績を残した人物に、秋に発表発売される作家シリーズは文学史に顕著な功績を残した人気作家に敬意を表して作られている。
パトロンシリーズは基本的に、モンブラン峰の標高であった「4810」本(万年筆が基本)の本数限定で製造されている。1995年からはさらに稀少な素材を使った888本の限定版も作られるようになった。
一方の作家シリーズは万年筆とボールペンそれぞれの単体販売と、メカニカルペン(いわゆるシャープペンシル)との3本セットが基本。ローラーボールペンが作られた年もある。
まだまだありますモンブランのコレクション&シリーズ!
ヘリテイジ コレクション
100年以上前の名品を復刻したモンブラン ヘリテイジ コレクションは、アンティークのおもむきがある、優れた実用ペンだ。ただ復刻するのではなく、往年のモデルを再解釈し、今の技術やデザインと融合しているのが魅力である。
写真は1920年代に登場した「モンブラン エジプシャン万年筆」を踏襲し、現代の技術と新たなデザインを落とし込んだ「ヘリテイジ コレクション エジプトマニア」。
八角形のフォルムが特徴で、キャップには「モンブラン」(白い石の山)の意味を持つ象形文字を刻印。「スペシャルエディション レジン」は、ヴィンテージゴールドに仕上げ、「ドゥエ」はフネフェルの「死者の書」の一節を引用した象形文字が描かれている。
グレートキャラクターズ
グレートキャラクターズは人類の歴史に名を刻んだ人物たちに敬意をささげるコレクション。2021年は、自動車の歴史に燦然と名を連ねるエンツォ・フェラーリがテーマになった。
彼の生み出した名車たちはスーパーカーの代名詞ともいえる存在だ。車体をイメージしたボディには象徴的な赤色が用いられ、クリップはフェラーリ車のカーブを表現し、キャップにはエンツォのサインが入っている。
これまでに、 エルヴィス・プレスリー、ウォルト・ディズニー、ザ・ビートルズ、レオナルド・ダ・ヴィンチなどがテーマになっている。
ドネーションペン
音楽界における才能豊かな人物への敬意を表した2年に1度のシリーズ。バッハからジョン・レノンまで新旧に渡る。
写真は「モンブラン ドネーションペン ジョージ・ガーシュイン」の万年筆で、クリップにクラリネットがデザインされている。これはジョージ・ガーシュイン作曲「ラプソディ・イン・ブルー」のクラリネット演奏に由来している。
ドネーションペンシリーズは、売り上げの一部がクラシック音楽に関連する文化的事業に寄付されるのも特徴的だ。
ミューズエディション
モンブラン ミューズは世界に足跡を残した女性たちを称えるコレクション。2021年のテーマは、映画「クレオパトラ」などで主演を務めた大女優にして、エイズ撲滅などさまざまな社会活動に取り組んだエリザベス・テイラー。当時のファッションリーダーでもあり、ジュエリーを愛したテイラーからインスピレーションを受けた要素が随所に盛り込まれた仕上がりとなっている。
これまでに、マリリン・モンロー、グレース・ケリーなどがテーマに選ばれている。
モンブランM
世界的なプロダクトデザイナー、マーク・ニューソンがデザインした「モンブラン M」。現行の「モンブランM REDシグネチャー」(写真)はエイズ撲滅を目標とするチャリティー団体「RED」とのコラボレーションアイテムで、販売収益の一部を寄付している。鮮やかなシャイニーレッドが美しく、存在感を放つ。
モンブランの純正インクはどんなものがある? 人気カラーTOP5も紹介!
モンブランのインクボトルは伝統的な靴型を採用。インクが少なくなっても“かかと”部分にインク溜りを作り、インクが吸入しやすい仕組みになっている。キャップにはブランドを象徴するシンボルマークをあしらい、ラグジュアリーなデザインも魅力。人気No.1のインクはミステリーブラックだ。ボトルのほか、もちろんカートリッジインクも用意されている。
2022年3月現在、全10色で展開されている。このほか、各コレクションのコンセプトやテーマを連想させるスクエアなパッケージの「モンブラン スペシャルエディション インクボトル」や、香りが楽しめる「エリクサー パフューム コレクション」、貴重なインクの製法で生み出される古代のカラー「エリクサー カラーリスト コレクション」などがある。
ここでは、2020年1月〜2021年7月までの期間で売れたインクをランキング形式でご紹介。あなたの推し色はランクインしている?
1位 ミステリーブラック
漆黒ではなく、やや緑みを帯びた独特な色合い。モンブランの万年筆を初めて使うユーザーが最初の1色として一緒に購入している。
2位 ミッドナイトブルー
モンブラン銀座本店では30 代~50 代の男性層に人気。黒に近い色合いは、仕事でも使いやすく、ビジネスシーンにもぴったりだ。
3位 ロイヤルブルー
鮮やかでありながらも上品な印象のブルー。白はもちろん、クリーム色のノートにも美しく映えるカラーに仕上がっている。
4位 バーガンディレッド
モンブランの万年筆を2~3本以上持つユーザーが「赤色専用の万年筆にしたい」と、一緒に購入している。落ち着きのある大人色。
5位 クールグレー
「黒よりも柔らかい印象のインクを使いたい」というユーザーにおすすめ。最近では全体的にグレーのインクが人気傾向になっている。
モンブランの万年筆現行定番モデル一覧
マイスターシュテュック
傑作や代表作を意味するフラッグシップ。1924年の誕生以来、万年筆の代名詞として世界中で愛され続けている。
マイスターシュテュック ゴールドコーティング 149
憧れのブランド「モンブラン」を代表するモデル「149」。1952年に誕生後、美しい実用品、ステイタスシンボル、筆記具の王者として確固たる地位を保ち続けている。太く重厚な作りはまさに王者の貫禄。プラチナ、ローズゴールドもあるが、ここは王道のゴールドコーティングをおすすめしたい。
マイスターシュテュック プラチナコーティング ル・グラン
現在ではル・グランと称される「146」。149より小ぶりで、この普遍的な万年筆のデザインは数多くのモデルに模倣されてきた究極の定番モデルである。こちらは装飾部がすべてプラチナ仕上げになっているプラチナラインで、ゴールド装飾タイプとはまた異なる趣がある。
マイスターシュテュック ローズゴールド ル・グラン
上と同じくマイスターシュテュック ル・グランだが、こちらは伝統のゴールド(イエローゴールド)ではなく、やや赤みのあるローズゴールド仕様。エレガントさがプラスされた印象を受ける。
マイスターシュテュック ゴールドコーティング クラシック
ル・グランより小ぶりなクラシックは、手が小さい人にもおすすめのサイズ感。149、146に比べ細身のスマートなデザインが特徴。手になじみ、かつ携帯しやすい絶妙のサイズ。カラーはもちろんプラチナ、ローズゴールド仕上げも選択可能だ。
マイスターシュテュック ジオメトリー ソリテール シャンパンゴールド ル・グラン
「マイスターシュテュック ソリテール」はマイスターシュテュックの高級ライン。こちらはルネサンス期のイタリア・フィレンツェの芸術家たちが編み出した遠近法や幾何学模様をマイスターシュテュックのデザインに落とし込んだシリーズ。緻密な六角形のパターンを持つメタリックなボディは、動きにつれて万華鏡のように光を反射する。シャンパンゴールド仕上げ。
マイスターシュテュック ジオメトリー ソリテール ル・グラン
上記モデルのプラチナ仕上げモデル。ペン先は幾何学模様をバイカラーでデザインしている。「マイスターシュテュック ジオメトリー ソリテール」にはボディにプレシャスレジンを使った、ひと回りサイズの小さい「マイスターシュテュック ドゥエ ジオメトリー クラシック」もラインナップしている。
スターウォーカー
2003年に生まれ、2019年にリニューアル。キャップエンドのシンボルマークに青のグラデーションが加えられた。人間工学に基づく握りやすい軸とモダンなデザインが魅力。
スターウォーカー プレシャスレジン
プレシャスレジンに光沢のあるメタルパーツを組み合わせている。ペン先はプラチナ装飾14金でカートリッジ式。ツートンカラーのドゥエもある。
スターウォーカー ブループラネット ドゥエ
プラチナコート仕上げのキャップにブルーのプレシャスレジンのボディを合わせたモデル。鮮やかでスタイリッシュな印象が魅力。ほど良い重厚感があり、握り心地も良好。
スターウォーカー ブループラネット メタルドゥエ
半透明のブルーラッカーによって内側に刻まれたギヨーシェパターンが美しくきらめいている高級ライン。魅惑的な青い輝きを放ち、手元をクールに飾ってくれる。
スターウォーカー メタル
キャップ、フィッティング、ボディはプラチナコート仕上げ。ペン先は14Kゴールド製でロジウムコートが手作業で丹念に施されている。
スターウォーカー ウルトラブラック ドゥエ
スターウォーカー コレクションの新作。マットブラックのプレシャスレジンのボディと、メタル製キャップの組み合わせがコントラストを生み出し、ソリッドな雰囲気を演出している。「スターウォーカー ウルトラブラック」のレジンをキャップにも用いた「モンブラン スターウォーカー ウルトラブラック プレシャスレジン」もある。こちらのオールブラックなカラーリングは、メタルパーツの輝きがあるドゥエに対しクールな印象だ。
モンブランM レッド
世界的なプロダクトデザイナー、マーク・ニューソンがデザインした「モンブラン M」。エイズ撲滅を目標とするチャリティー団体「RED」とのコラボレーションアイテムで、販売収益の一部を寄付している(写真のモンブランMレッドは製造中止・市場在庫のみ)。
※価格は2022年4月現在のものです。最新の価格と在庫については公式HPにて確認ください。
高価格帯の高級万年筆ものぞいてみよう。
この記事の冒頭でも触れたように、近年のモンブランは総合ハイブランド化が進み、時計、宝飾品も増えている。100万円前後は序の口、物によっては1億円を超えるものも。ここではそんなモンブランの万年筆の中でもゴージャスな高価格帯のものをいくつか紹介しよう。かつて販売されていた限定品のため現在手に入りにくいものがほとんど。プレ値がついているものも多い。
サー・アーサー・コナン・ドイル リミテッドエディション97
「作家シリーズ」は世界の文豪と作品からインスピレーションを受けて作られる人気シリーズで、2021年は、最も有名な名探偵「シャーロック・ホームズ」の生みの親、アーサー・コナン・ドイルがテーマだった。こちらは発表されたアイテムの中での高価格帯の38,000ユーロ(時価約494万円)(発売時)。
「リミテッドエディション97」では、ドイルが家族と暮らした家がモチーフとなっている。キャップは家のステンドグラスの窓から着想を得たもので、ボディにはロンドンの街路図とタータンチェックのパターンが描かれている。虫眼鏡を象ったクリップは可動式となっており、実際に使用できる。ストーリーとユーモアが詰まった傑作だ。
グレートキャラクターズ エルヴィス・プレスリー
20 世紀の歴史に名を刻み、文化や政治、音楽、芸術などの新たな礎を築いた偉人に敬意を表したモンブランの人気コレクション「グレートキャラクターズ エディション」。2020年はキング・オブ・ロックンロールとも称される「エルヴィス・プレスリー」にスポットを当てた。
「スペシャルエディション」の万年筆が税込122,100円(発売時)だったのに対し、こちらの「リミテッドエディション98」は本体38,000 ユーロ(本体約470万円 ※ 時価)・限定98本のプレミアムなモデル。ゴールドボディにはランダムに「ELVIS HAS LEFT THE BUILDING」のアルファベットがあしらわれている。キャップに施されたイーグルは、スケルトンフレームの内側に3色のラッカーを層状に重ね、個々のドットを異なる深さのレーザー加工で描き出している。
マイスターシュテュック 蒔絵 カリグラフィー トリビュート トゥ 京都 ファイン クラフツマンシップ リミテッドエディション88
京友禅の老舗「千總(ちそう)」のデザインと、蒔絵の技術を「マイスターシュテュック ル・グラン」に落とし込んだ垂涎の一本。デザインの元は、千總が所蔵する明治時代の京都画壇の大家、岸竹堂による「舞妓に桜図」「頭蓋骨に月図」の双幅(2 つで1組の掛軸)。艶やかな着物をまとった若い女性と頭蓋骨は、「若さと老い」「生と死」など、日本古来の死生観と美意識が垣間見える。限定88本の万年筆は熟練の蒔絵師が一本一本手作業で描いている。発売時、本体35,000ユーロ(約432万円 ※時価)
モンブラン ハイアーティストリーコレクション タージ・マハル リミテッドエディション5
アーティストリー(artistry)とは、芸術的追求、芸術家としての手腕を意味する。モンブランのこのシリーズでは、ブランドが持つ芸術性の極限に挑戦。自由な発想の元に、最高級の素材、卓越した職人の技、最先端のテクノロジーを融合させ、筆記具の機能を超越した芸術の極みを1本の万年筆に集約させている。
2021年に発表された「タージ・マハル リミテッドエディション5」は17世紀ムガル帝国の時代に完成したインド北部の廟堂・タージ・マハルからインスピレーションを受けたモデル。18金イエローゴールドの軸に1.9カラットのダイヤ、エメラルド、ルビーを配置し、タージ・マハルを飾るアラベスク、花輪などのイメージを豪華に再現している。世界限定5本 6741万4050円(参考価格)
モンブラン ハイアーティストリーコレクション ロアール・アムンセン リミテッドエディション1 「氷」
こちらも2021年発表されたモンブラン ハイアーティストリーコレクション。ノルウェーの極地探検家を讃えたコレクション。キャップには氷や雪の塊をドーム状に積んだ住居やナイフをダイヤ、サファイア、18金ホワイトゴールドなどを使ってデザインされたロアール・アムンセン リミテッドエディション1 「氷」。極地の壮麗な氷の世界を表現している。世界限定1本 2億2062万8650円(参考価格)
▼こちらの万年筆を「趣味の文具箱」編集長が実際に触ったレポートも必読!
モンブラン ヘリテイジ ハイアーティストリー エジプトマニア リミテッドエディション リミテッドエディション5
こちらは2020年に登場した「エジプトマニア」の超高級万年筆。5つのリミテッドエディションがあり、精巧な金細工や手彫りの彫刻、美しい宝石などが散りばめられたプレミアムなコレクションとなっている。筆記具本体は石棺をモチーフにしたデザインの特別なキャップに収められている。
写真は同コレクションの世界限定5本の「リミテッドエディション5」。ラピスラズリとターコイズの美しい象嵌細工が際立つ1本。天冠には約1.85カラットのダイヤモンドがセットされている。本体550,000 ユーロ(約68,180,000円 ※ 時価)
【問い合わせ】
MONTBLANC
https://www.montblanc.com
※2022年4月時点での情報です。
(出典/「趣味の文具箱 vol.25、39、45、48、50、56、59、60」)
TEXT /小池昌弘(編集部) PHOTO /荒木優一郎
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