柄が違うだけじゃない! 奥深きアロハシャツのディテール編

  • 2025.07.12

夏を象徴するアメカジアイテムのアロハシャツについて、パピー高野が初歩からアロハのいろはを学ぶこの企画。講師はご存知、アロハシャツ研究家のサンサーフ中野さん。第二回は生地から縫製までアロハのディテールを掘ります!

編集部・パピー高野|アイビースタイルを好む若手編集者。アメカジは勉強中。人生初ハワイ出張の経験から、現在はハワイに興味津々。

アロハシャツ研究家/サンサーフ企画統括・中野喜啓さん|学生時代、ヴィンテージに魅了されアロハシャツに傾倒。ハワイへ移住し、アロハシャツの歴史を調査・研究。現在はサンサーフで貴重な名作アロハの復刻を手がける

まだまだ知らないアロハシャツの魅力を知ろう。

パピー(以下、パ) アロハの柄のバリエーションって本当にたくさんあって、アート感覚で楽しめますよね。他のアメカジ服に比べて、覚えなきゃいけないディテールも少なくて助かります……。

中野さん(以下、中) ちょっと待ってくださいパピーさん、それはいただけない発言ですよ(笑)。アロハシャツにも柄以外にみどころはたくさんありますから。

 そうなんですか?

 もちろん柄が最大の見どころであるのは間違いないですが、ほかにも、生地や縫製の仕方など、多様な違いがあります。ここに4着のサンサーフの新作アロハを用意しました。これを見ていくだけでも結構違いがあるんですよ。

 なるほど…。確かにボタンは一目瞭然、いろいろ種類がありそいうですね。

 そうですね。ココナッツボタン、シェルボタン、尿素ボタン。「この柄にはこれ!」という法則性などはないですが、和柄とバンブーはやはり相性が良かったり、逆に和柄なのにあえてココナッツが使われていたりと、知っていれば意外と面白い見どころです。

 あと実際にアロハシャツを触ってみて気づきましたが、生地も違いますよね!

 生地はアロハシャツのディテールを掘るうえで最重要ポイントですね。ここにある4着のアロハシャツは、すべて素材が異なっています。レーヨンフィラメント、シルク、縮緬など……。発色や肌触りといった観点において、それぞれに魅力があるんです。アートでも、キャンバスに描くか紙に描くかで印象が異なるように、アロハシャツでも、生地によって柄の雰囲気がガラッと変わって見えるんです。それも掘っていくと楽しいポイントですね。

 確かに。このサギが描かれたアロハの生地はどんな生地ですか? 初めて触りました。

 これはバーククロスですね。’50年代ごろに「ハタ・ドライグッズ・ストア」という商店が初めてアロハシャツに落とし込んだとされていて、当時はカーテンやソファなどの家具に用いられることが多かった生地です。柄ももちろん魅力ではあるんですが、“「ハタ・ドライグッズ・ストア」のバーククロス”というところが最大のポイントなんです。

PAIR OF HERON|1950年代当時、和柄では見かけることのあったサギだが、和柄以外で動物のモチーフが描かれることは極めて珍しかった。「ハタ・ドライグッズ・ストア」らしいバーククロス生地という点も垂涎モノ。3万800円

 「アロハシャツの魅力は柄だけではない」ということの象徴のようなモデルですね。

 おっしゃる通りです。他にもこのサギのモデルだけ、他の3モデルと違って脇にスリットが入っているなど、シャツとしての作りにおいても実は差異があるんですよね。たとえば、この「笹虎」を見てください。なにか違いに気づきませんか?

 あれ、襟にステッチが入ってますね?

SASA TORA|人気デザイン「笹虎」の復刻。フィラメントも存在する同柄だが、極めて希少なレーヨンの縮緬生地の個体を再現。細かな水しぶきなどの描写もオーバープリントで緻密に表現している。3万7400円

 そうなんです。襟にわざわざハンドステッチが施されています。そして袖も折り返しのダブル仕様になっています。これらのディテールは実用性の追求というよりは、他ブランドとデザインの差別化を図ったものでしょうね。「アートヴォーグ」というブランドの個体ですが、このブランドは主に大量生産でものづくりをしていたはずなので、この個体のようにテーラーメイド的な仕様のシャツは珍しいんです。でもそこがまたヴィンテージ好き、アロハシャツ好きの心をくすぐっています。

 奥深いですね、アロハシャツ。

 プリントひとつとっても、オーバープリントや抜染という手法の違いがあったり、柄の構成にもホリゾンタルやオールオーバーというパターンの種類があったりと、掘るべきポイントはたくさんあります。パピーさん? ついてこれてますか(笑)

 今日はもうパンクしそうなので、次回以降でお願いします(笑)もう二度と「アロハは柄だけ」なんて言いません!

HISTORICAL POTTERY|柄のモチーフは、日本における最初の陶器とされる佐賀の伊万里・有田焼。江戸時代、豪華絢爛なものを求める気運が高まった頃に成立した“古伊万里金襴手様式”の図案を取り入れた煌びやかな一着。5万2800円
DRAGON|中国の元の時代、“本物の龍”の特徴とされていた5本爪に2本の角が生えた龍。皇帝しか使うことを許されていなかったというこの龍を、大胆に前後両面に配したインパクトの強いモデル。3万5200円

【問い合わせ】
サンサーフ(東洋エンタープライズ)
TEL03-3632-2321
https://www.sunsurf.jp

(出典/「Lightning 2025年7月号 Vol.375」)

LiLiCo

昭和45年女

人生を自分から楽しくするプロフェッショナル

LiLiCo

松島親方

CLUTCH Magazine, Lightning, 2nd(セカンド)

買い物番長

松島親方

モヒカン小川

Lightning, CLUTCH Magazine

革ジャンの伝道師

モヒカン小川

ランボルギーニ三浦

Lightning, CLUTCH Magazine

ヴィンテージ古着の目利き

ランボルギーニ三浦

パピー高野

2nd(セカンド)

断然革靴派

パピー高野

おすぎ村

2nd(セカンド), Lightning, CLUTCH Magazine

ブランドディレクター

おすぎ村

なまため

2nd(セカンド)

I LOVE クラシックアウトドア

なまため

みなみ188

2nd(セカンド)

ヤングTRADマン

みなみ188

村上タクタ

ThunderVolt

おせっかいデジタル案内人

村上タクタ

竹部吉晃

昭和40年男, 昭和45年女

ビートルデイズな編集長

竹部吉晃

中川原 勝也

Dig-it

民俗と地域文化の案内人

中川原 勝也

清水茂樹

趣味の文具箱

編集長兼文具バカ

清水茂樹

岡部隆志

英国在住ファッション特派員

岡部隆志

2nd 編集部

2nd(セカンド)

休日服を楽しむためのマガジン

2nd 編集部

CLUTCH Magazine 編集部

CLUTCH Magazine

世界基準のカルチャーマガジン

CLUTCH Magazine 編集部

タンデムスタイル編集部

Dig-it

初心者にも優しいバイクの指南書

タンデムスタイル編集部

昭和40年男 編集部

昭和40年男

1965年生まれの男たちのバイブル

昭和40年男 編集部