バイク乗りのスタイルを左右するマストアイテム。ヘルメット(フルフェイス/オンロード用)の市場価値は?

  • 2023.12.25

国内のヴィンテージ品復刻の流れがあってヴィンテージヘルメットの認知度も高まっている。ただし一口にヘルメットといっても、ジェットヘルメット、フルフェイスのオンロード用、オフロード用など用途によってスタイルが分かれる。ここではフルフェイスのオンロード用ヘルメットのヴィンテージの世界について、ヴィンテージヘルメット専門店「スピードアディクト」の池城哲士さんに話を聞いた。

フルフェイスが登場するのは 1970年頃から。

「SPEED ADDICT」代表・池城哲士さん|WEBショップのほか神戸に実店舗も構えるヴィンテージヘルメット専門店「スピードアディクト」の代表。20年以上にわたる自身のコレクションとお店の在庫合わせて5000個以上という日本屈指のコレクターでもある

バイク乗りには欠かせないアイテム・ヘルメット。その歴史を紐解いてみると、「ヘルメット」そのものとなると、青銅器時代となる紀元前15~16世紀にまで遡ることができる。当時は戦闘時に兵士の頭部を保護する兜としてのものだった。この観点からすれば日本の兜もヘルメットのルーツといえるだろう。

一方でバイク用となると、バイクが登場した最初期から存在していたようで、当初は飛行機乗りが被っていた革製の帽子をアレンジした簡易的なモノだった。そして、1920年代頃には耳の上から頭半分をカバーし、下は革製のカバーがつく“お椀型” (ハーフ)ヘルメットが登場。とはいえ、当時ヘルメットを着用するのは一部のレーサーのみ。

それが一般にも普及し始めたのは「ベル」をはじめ「ブコ」「マックホール」などのアメリカのブランドや、イギイスの「エバーオーク」といったヘルメットブランドが誕生し、一般向けにも製造を開始した’50年代半ばから。

それ以降は各メーカーともにハーフヘルメットかジェットヘルメットタイプを手がけてきたが、今回取り上げるフルフェイスタイプが普及し始めたのは、さらに時代が下って1970年頃からだ。

「ヴィンテージ=小さい」はフルフェイスでは間違い。

ヴィンテージヘルメットというと、歴史も古くデザインのバリエーションも多いジェットヘルメットが人気だが、それはまたいずれの機会に掘り下げるとして今回はあえてマニアックなフルフェイスタイプを取り上げることにする。

「基本的に初期のヴィンテージのオンロード系フルフェイスはレース用なので目出し部分が今のモノより狭いのが特徴といえます」

とは、ヴィンテージヘルメットを扱って20年以上の「スピードアディクト」代表・池城哲士さん。

「人気モデルもありますが、乗るバイクやその人のスタイルもあるので、人気だとかレアとかという基準よりも、似合ったモノを楽しんでもらいたいですね。あと、最近の復刻ブームで『フォルムが小さい方がかっこいい』という風潮がありますが、それはジェットヘルメットで、フルフェイスに関しては安全性も考慮されているのでそれほど小さくありません」

また、ヴィンテージヘルメットを購入する際に注意しておきたい点は「内装」だ。スピードアディクトで販売されているものに関しては基本内装はリペア済みだが、内装も当時のままだと、スポンジや革が劣化していて使えないこともあるのでしっかりとチェックしておくのもポイントだ。

ヴィンテージのヘルメットを実際に被りたいと思っている人は、内装のチェックをお忘れなく。当時のままだと(上)、内装が劣化して使い物にならないことが多い。「スピードアディクト」では基本的に内装はリペア済み(下)。持ち込みによる内装のリペアや修理も対応してくれる

まずは押さえておきたいメーカー4選。

アメリカ3大ヘルメットブランドとして知られる「ベル」「ブコ」「マックホール」のほか「シンプソン」「アーサーフルマー」、英国「エバーオーク」、伊「A.G.V.」「VEPO」、日本だと「アライ」「ショーエイ」あたりが有名。

BELL

元々は四輪用パーツメーカーだったが、1954年にヘルメット部門を設立。当時ポピュラーだった「吊り天井」と呼ばれるヘルメットのライナー構造とは一線を画すポリウレタンライナー構造を使用して一躍脚光を浴び人気ブランドに。

Buco

1933年デトロイトで設立。ヘルメット以外にも革ジャンなどのアクセサリも手がけて隆盛を誇ったが70年代のオイルショックによる不況で消滅。現在は日本の人気アメカジブランド「ザ・リアルマッコイズ」がレザージャケットなどのウエアの復刻を手がける。

McHAL

1954年にカリフォルニアで創業。’60年代にはハーレーと提携するなどベル、ブコと並びアメリカ3大メーカーと呼ばれていたが、ベル、ブコという巨頭に勝てず1970年代に姿を消した。今や幻のブランドとしてマニアの間では人気。

SIMPSON

1959年、NASCARにレーシングアクセサリーを供給するメーカとしてスタート。ヘルメット製造は1979年から。当時のベルよりも倍近い価格のハイグレードの製品を手がけてきた。オフロード系のヘルメットにも定評がある。

市場価格を知る!

時代を経るごとに、当然最初期となる1950年代前半のものやヒストリカルなモデルの市場での流通数が減少するので、それに伴う価格上昇はあるものの、大きなトレンドやブームというのもないようだ。世界的なインフレ傾向や昨今の円安による価格上昇もあるが、安いものだと1~2万円、高いものだと数十万円というモノまで価格帯は実に幅広いので、まずは自分の好みで選ぶのがよさそうだ。

BELL

1967年発表のベル「STAR」の1970年代製造モデル。ベルのヴィンテージでは最も見つけるのが困難な一品。視野部分が狭く「族ヘル」と呼ばれるデザイン。額の「BELL」と後頭部の「STAR」純正デカールも綺麗に残る。61㎝。13万2000円

1973 ~ 75年にかけて作られたBELL「STAR120」。ベルスターの「視界が狭い」という点を改善し、左右120度の視野を確保したところがその名の由来。今日のヘルメットの基本となったモデル。希少なイエローカラー。60㎝。19万8000円

こちらも1970 年代製造のベル「STAR」。単体でも非常にレアで高値で取引される。純正シールドが付くデッドストック品。カラーはオレンジ。60㎝。16万5000円

Buco

1970年代製造のブコ「BLUE LINE SUPREME」。ヴィンテージブコ特有のシャープなシルエットが目を引く。純正デカールに貴重な純正シールドも付くデッドストック品。シルバー。60㎝。8万3600円

1970年代製。モデル名は不明だが、純正シールドも残るデッドストック品。こちらもヴィンテージブコ独特のシャープなシルエットにファンも多い。ホワイト。58㎝。6万6000円

1970 年代製。こちらもレアな純正シールドバイザー、額の「BUCO」純正デカールも綺麗に残っているデッドストック品。ホワイト。56 ㎝。7万400円

McHAL

1960年代製造のMcHAL史上、唯一のフルフェイス「APOLLO」。’60年代製造のヘルメットだけにみられるWストラップ、純正スクリーン、額と後頭部のデカールも綺麗に残るなど、存在自体も非常に希少な激レアモデル。ホワイト。60㎝。17万6000円

SIMPSON

1970年代製のシンプソン「Model30」。額のシンプソンのデカールはリプロダクト品だが、純正シールドと箱はオリジナル。映画『マッドマックス』風。ブラック。59㎝。14万800円

1970年代製のシンプソン「Model80」。シンプソンのモーターサイクル用のヘルメットとしては最初期のモデル。アイポート(目出し部分)の縦幅はベルスターよりも約5㎜狭く、「族ヘル」のイメージに最適。シルバー。58㎝。12万1000円

1980年代製のシンプソン「Model32」。額のデカールも純正で箱や付属書類も残る美品。『マッドマックス』もしくは『北斗の拳』のジャギスタイル? ブラック。57㎝。8万9100円

SHOEI

日本のメーカー・ショーエイの1970年代製「S-12」。箱付きデッドストック品。外観や内装の作りともにベルスターに似ている。価格も手頃だからベルは高すぎるという人にもオススメ。ホワイト。60㎝。4万8400円

1970年代製、ショーエイ「S-20」。バイザー付き純正シールドのほか箱も付くデッドストック品。保管状況もいいのであえて内装はリペアせずクリーニングのみを行っている。オレンジ。60㎝。3万3000円

ARTHUR FULMER

1970年代製造のARTHUR FULMER「AF50」。米国製ヘルメットでは珍しくリムに銀色のメッキが施されている。目深に被れて小さいシルエットになるのが特徴。ファルコンレッド。59㎝。12万1000円

飾っておくだけで画になるヴィンテージのヘルメット。近年はヘルメットも名作の復刻が数多く手がけられているが、素材や塗装方法などの変化もあり、やはり経年による色合いや味わいが増したヴィンテージと比べると雰囲気は大きく異なる。コレクターは欧米はもちろん日本にも数多くいるが、ここ最近でトレンド傾向が大きく変わるということはなく、昔から一部のマニアやコレクターによって支えられている業界といえそうだ。

【DATA】
SPEED ADDICT
www.speed-addict.jp

※情報は取材当時のものです。

(出典/「Lightning 2023年12月号 Vol.356」)

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