古いジッパーに価値がある? ヴィンテージ “らしさ” を生む、ジッパーの市場価値とは?

せっかくのヴィンテージウエアもジッパーが故障して着れない、または、リペア済みで交換したファスナーが年代と合っていない、というお悩みを持つ愛好家のためのヴィンテージジッパー基礎講座。これひとつで印象もかなり変わる、実は奥の深い世界だ。

ジッパーの起源にはショットが関わっていた!!

「MASH」代表・原善郎さん|大阪市浪花区にある老舗ミリタリーストア「MASH」代表にしてミリタリーアイテム界の重鎮。約30年近く前にジッパーを大量にストックしていたア メリカの会社から買い取ったそうだ。まだまだ貴重な品も残 ってはいるが、在庫がなくなったら終売となるので気になるモノを見つけたら買っておくのが吉だそう

現在の暮らしにおいては衣類に限らずバッグやテントなど様々なシーンで見かけるジッパー。その歴史は1891年にアメリカのホイットコム・ジャドソンが発明したものが起源だそう。

当初は非常に高価なものだったが、後の第一次大戦で米軍が改良したことでコストが削減され、一般市場にも出回るように。そこに目をつけたのが、本誌ではお馴染みのショットだ。

1920年代初頭、モーターサイクル用のジャケットは既にあったが、ボタン留めのフロントから風が入る、ポケットの中のモノが飛ばされるという問題があった。それを解決するために1925年に、ジャケットにジッパーを取り付けたものを開発。つまり、ジッパーの誕生はミリタリーウエアやライダースジャケットと深い関わりがあるのだ。

基本的な原理や構造は誕生時から変わらないが、エレメントや務歯と呼ばれる左右の “歯” の形状や開閉部分のスライダーは時代とともに若干の変遷が見られる。

時代ごとに採用されるジッパーが変わることから、ジッパーのメーカーや形状でその衣類の年代を推定することも可能なことから、ヴィンテージファンにとっては結構重要なパーツといえる。

1930年~ ’70年代のミリタリーウエアやライダースジャケットに使用されていたクラウン、タロン、コンマーのジッパー。並べてみると個性があり、ヴィンテージウエア” らしさ” を演出する大切なパーツというのがわかる。ちなみに、「ジッパー」という名称はグッドリッチ社の登録商標で正式には「スライディングファスナー」だがここでは通称として知られる「ジッパー」を採用する

ヴィンテージジッパーで押さえておきたい3大ブランド。

CROWN クラウン

1930年代後半より’60年代頃まで米軍に使用されてきたクラウン。なかでも大戦時の「シェブロン型」と呼ばれる独特の山形のエレメントやスプリングロック形式のスライダーなど他社にはない美しさとデザインを持つことで人気が高い。バズリクソンズが復刻したことで知るファンもいるはず。

TALON タロン

1913年にジッパーを開発した「HOOKLESS」が1937年に名称を変更して生まれたのがタロン。もしフックレスの名が記載されていたら37年以前のタロンともいえる。フックが扇型(’30年代後期)、ベル型(’40年代)、棒型(棒タロン/’40 ~ ’60年代)、菱形(’40年代~)など形状が様々ある。

CONMAR コンマー

1930年代後半よりA-2などフライトジャケットに採用され、’50 ~ ’60 年代にはアルミジッパーならコンマーと言われ約70%のシェアを誇っていたが、’60年代末に生産を終了し「Scovill Fasteners Inc(スコビル)」に事業が継承される。’96年にそのスコビルもアイディアル社に売却している。

ジッパーを変えるだけで雰囲気もガラリと変わる。

「ジッパーは正面についているし、メーカーや年代が変わるだけで印象も変わります。ある意味で『服の顔』とも言えます。そして、古い服は生地は生きていてもジッパーが壊れて着れなくなるということが多いです。そんなときに新品に替えてしまうと雰囲気が全く変わってしまいますからね」

というのは、ミリタリーファンにはお馴染みの大阪市にある老舗「マッシュ」代表の原善郎さん。

同店では’30年代から’80年代頃までのジッパーのデッドストックを1000種以上在庫し、そのうちの約100種を現在販売する。

ヴィンテージ好きには知られる「クラウン」「タロン」「コンマー」といったメーカー中心だが、エレメントやスライダーなど、メーカーごとはもちろん、年代によってデザインに変遷も見られる。

基本的にミリタリーウエア用として販売しているが、同時代のライダースジャケットやアウターにも付けても違和感は全くない。

お気に入りのヴィンテージを着続けるためにパーツをストックしておきたい人はもちろん、レプリカだけどジッパーを本物に交換することで、より本物の雰囲気に近づけるというウラワザもあるから、ヴィンテージジッパーの存在は知っておいて損はないぞ。

 

この3着はいずれも1950年代のM-51フィールドジャケットだが、上からクラウン(’51年製)、コンマー(’53年製)、タロン(’57年製)とそれぞれ違うブランドのジッパーが付く。同じジャケットで見比べてみるとジッパーの違いで印象が大きく変わる。同じモノでリペアするだけでなく、自分好みのブランドや年代のモノに変更するというのもアリかも。

市場価格を知る!

価格は年代の古さやレア度によって異なるが数千円から3万円といったところだが、これはマッシュのように大量にストックがあるショップの場合。大半は少量入荷して販売するショップまたは個人売買がほとんどで、そうなると価格はバラバラだ。全てがデッドストック品のため、在庫がなくなったら当然販売は終了。人気のあるモノや年代の古いモノなどは今後価格が高騰するものも出てくると思われるので、リペア用のストックが欲しいとお考えの方は見つけた時に買っておくのが吉だ。

CROWN

1940-41年。シェブロン型と呼ばれるクラウン独特のエレメントとスプリングロックを搭載したスライダーでコレクターの間では知られる名品。A-2、B-3、B-6など大戦時のAAF/NAVY革衣料のほぼ全てに使用可能な88㎝でこのコンディションはかなりレア。3万1680円

1940-41年。長いジッパー開発史において、1938年から採用されたジェブロン型ジッパーは、その優美さにおいてマニアを魅了する名品。こちらは大戦初期となる’40~’41年製造のオープンジッパー。状態も抜群でコレクションにも最適。8580円

1948-52年頃。クラウン2ndモデル、#10、スプリングロック・スライダー付きオープンエンドジッパー。USAFにおいて1951~’52年の間に支給されたAFブルーのジャケット用をイメージしてオリーブ色のテープを後染めしたもの。B-15C、B-15C(MOD)、N-3Aなどに使用できる。8800円

1952年。1952年製のクラウン2ndモデル#10オープンエンドジッパー。スプリングスライダーが使用されている。B-15D、MA-1/1st、N-3B/初期、B-15C、N-2、N2A、N-3、N-3Aなど幅広いジャケットに対応する。8800円

1948-53年頃。クラウン2ndモデル#10オリーブカラー。亜鉛を主とした合金製。引き手のタブは復刻の馬革製。’50年前後のB-15やN-3に主に使用されていた。8800円

TALON

1939-41年。1930年代後半にタロン社が開発した当時として画期的なオートロックが組み込まれたスライダーを用いたセパレート(オープン)タイプのジッパー。大戦前で素材も銅・ニッケルが主材料、アール・デコ形式のデザインなど傑作として名高い。A-2、B-3、M422、M422A等に使用。1万7380円

1942-44年。大戦中後期の戦時型フロントジッパー。オートロック形式のスライダーは故障が少なく安定した使い心地。鉄、亜鉛から構成される合金製。62 ㎝。A-2、B-3、M422、G-1、B-10、B-15Aなど用途は幅広い。6050円

1943-44年。大戦中後期の戦時型オープンジッパーで、元々茶色だった両サイドのテープをカーキ色に後染めしたもの。タンカージャケットをはじめ、大戦時に使用されたカーキ色のジャケットのリペアにはこちらがオススメ。6600円

1943-45年。対戦中後期の戦時型オープンジッパー。カーキ色に後染めされており、N-1デッキジャケットをはじめ、B-10、B-15、B-15Aなど大戦後期のカーキ色のジャケットに使用されていた。6600円

1942-44年。大戦中後期、戦時型フロント・ジッパーのブラック後染め。大戦時の米海軍デッキジャケットはもちろん、’40 ~ ’50 年代の黒のライダースジャケットや黒系のレザージャケットのリペアやカスタムのパーツとしてもオススメ。6600円

CONMAR

1940年代後期。#10という幅9.2 ㎜の太めのタイプ(6.2㎜の#5が主流)で、反射を防ぐブラックタイプは主に空軍に
使用された。’50年代~ ’60年代初期のB-15D、MA-1、N-2B、N-3Bなどフライトジャケットの多くに用いられた。8250円

1943年。戦時下の物資統制から銅やニッケルが使用できなくなり、鉄や亜鉛を主とした合金を使った戦時型ジッパー。いわゆる「ベル型」のピンロック。主にM41フィールドジャケット、N4フィールドジャケットなどに使われた。4400円

1960年代。1950年代から米軍はアルミファスナーを多用し、3/8インチの綿ストラップが引き手に用いられた#10オープンファスナーは、M-51やM-65フィールド・ジャケット、M-51パーカ等幅広く使用された。7700円

1960年代初頭。1960年代初頭に作られたアルミ製で内外に引き手がついたリバーシブルタイプ。1961 年以降のL-2B、’60年代スーベニアジャケット、ベトジャンなどに使用されていた。5500円

1961年。1961年6月に米軍に納入されたコンマークイックリリースジッパー。検品のため最小限開封されているが当時のままのパッケージも残るレア品。M-51パーカ、M-65パーカ、M-65フィールドジャケットなどオリーブ系の衣料に用いられる。6050円

自分でリペアを行う人かコレクターのほか、復刻品を作るブランドが大量購入することはあるので、人気の品はは徐々に品薄傾向にあるようだが、それほど大きな市場ではないので激しい値動きもないのが現状のようだ。

【DATA】
MASH
大阪府大阪市浪花区稲荷1-11-27
TEL 06-6567-0101
営業/11:00~ 19:00
休み/水曜・第3火曜
www.mash-japan.co.jp

※情報は取材当時のものです。

(出典/「Lightning2023年8月号 Vol.352」)

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