目指すは大戦モデルのデッドストックの完全再現。
いまでは世界に誇る日本のデニムだが、その歴史を黎明期から支え続けてきたシュガーケーンからとんでもない企画が発表された。同ブランドの企画を総括する福富さんを中心にトップコレクターの全面協力のもと、スーパーヴィンテージを完全再現する新たなデニムレーベルをスタートするというのだ。
ファーストコレクションに選ばれたのは、いま世界中が注目するリーバイスの“大戦モデル”。簡素化されたディテールが特徴的な1943年モデルと、主要なディテールが復活しながらも大戦期だけの仕様も残る1946年モデルに着目した。
どちらも現在では枯渇化とプレミア化が激しく入手困難な状況だが、どちらもゴールデンサイズ、デッドストック、セットアップという奇跡的な逸品の実物を用意。デニム生地から縫製糸、ボタン、リベット、バックルなどの部材だけでなく、型紙から当時のイレギュラーな縫製仕様まで、その「個性」を完全に再現するのがこの新レーベルなのだ。
「ここまでのスーパーヴィンテージをコレクターの方が用意してくださったので、その期待に応えるべく細部まで納得の出来になるまで何度でもやり直して突き詰めます」と福富さんの鼻息は荒い。
いま最も注目株といえる1943年モデル。
第二次世界大戦期、アメリカ国内産業の物資統制が最も過酷を極めたのが、1943年度のモデルだった。それまでのモデルとは異なり、ムラが強い荒々しいデニム生地や軍汎用のドーナツボタン、鉄リベット、オールイエローステッチなど見た目にも分かりやすい特徴的なディテールに限らず、縫製の運針や戦中だった当時の混乱が見られる拙いステッチワーク、さらにはもとにしたヴィンテージのイレギュラーな縫製仕様までも完全再現する。
第二次世界大戦期は物資の入手が困難だったため、通常より繊維長が短く、ムラの強いデニムを使用していた。それもヴィンテージをもとに糸の紡績から手掛けて試作を繰り返し、見分けが難しいほどの出来栄えだ。
月桂樹柄の鉄製ドーナツボタンも今回のために新たに作り直した。デッドストックとはいえ経年変化した風合いも忠実に再現している。
超希少なヴィンテージの袋地は、色や起毛の修正を行い生産に備える。上はヴィンテージで下がシュガーケーン。
奥がヴィンテージのデッドストックで、手前がシュガーケーンのもの。ゴールデンサイズをもとにしているためディテールのバランスも抜群。
大戦期は工場で縫製担当者が不足して技術が未熟な者も駆り出され、拙い箇所も多い。それも忠実に再現する。下がヴィンテージ、上がシュガーケーン。
大戦モデルらしいオールイエローステッチだが、その綿糸の色合いにもこだわり、ステッチ幅も完璧に再現する。左がヴィンテージ、右がシュガーケーン。
この数年で価値を見出された1946年モデル。
1946年モデルの魅力は、デザイン的には主要なディテールの簡素化が廃されたにも関わらず、大戦後のヴィンテージよりも粗く、青みのあるデニム生地や色味の強いイエローステッチ、粗さの残る縫製。大戦期の名残がある部材のほか、シルエットまでもセットアップで完全再現する。
コインポケットにもリベットが復活するが、刻印がCO.とCo.のものが混在している。こちらも’43年モデルと同様にオールイエローステッチだが、イエローの色味が強いのも特徴。手前がヴィンテージ、奥がシュガーケーン。
大戦期のモデルにのみ見られる百合の鉄製バックルも今回のために完全再現。もとにしたヴィンテージ同様、シルバーのクロームメッキ加工をして質感も完璧に仕上げている。左がヴィンテージ、右がシュガーケーン。
もとにした1946年モデルには鉄製のロゴ入りボタンが使用されていた。その風合いも完璧に再現。右がヴィンテージ、左がシュガーケーン。
1943年モデルよりも青みが強いが、後年のモデルよりも荒々しさが残る1946年モデルならではのデニムも紡績から手掛けて製作。粗さの残るステッチワークも完璧に再現する。右がヴィンテージ、左がシュガーケーン。
フロントのボックスステッチは1943年モデルに比べて小さくて丁寧な仕上がり。奥がヴィンテージ、手前がシュガーケーン。
【問い合わせ】
シュガーケーン(東洋エンタープライズ)
TEL03-3632-2321
https://www.sugarcane.jp/
(出典/「Lightning2023年8月号 Vol.352」)
Text/T.Miura 三浦正行 Photo/S.Kai 甲斐俊一郎
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