ハットデザイナーとの二刀流が生む本気のエスプレッソ。

今や日本のコーヒーカルチャー(喫茶店文化しかり)が海を渡り、その道具に至るまで世界でも認知されるのは、日本人の凝り性でオタクな精神が世界のコーヒー愛好家を納得させてることにほかならない。こだわりの本格エスプレッソやハンドドリップのコーヒーはもはやそう珍しい存在ではないけれど、東京の多摩地区にできたDistar Coffeeはそのなかでも異色な存在。ここのメインバリスタはハットブランドTHE H.W.DOG&Co.のオーナーデザイナーである弦巻さん。デザイナーでありながらなぜバリスタに? その真意に迫る。

エスプレッソ好きが高じて生まれたカタチ。

昔からの知り合いであるTANUKI STUDIOの奥にあるDistar Coffee。弦巻さんの地元ということもあり、地元を盛り上げたいという思いもあってこの場所に決めた。清潔感のある店内

「もともとは毎日のようにエスプレッソを飲んでいて、あるとき、よく行く店のバリスタの人と仲良くなったのがきっかけですね、ここまでハマるようになったのは」

と、コーヒーとの向き合い方が変わった時期を教えてくれた弦巻さん。

ハットや帽子のデザイナーに、自身のブランドの経営と、コーヒーはその日のスタートだったり気分転換の一杯だったりと、日々の生活に必要不可欠なものだった。それだけに、バリスタと仲良くなってコーヒーのあれこれを聞くうちにその沼にハマっていったという。

豆や淹れ方、道具の選び方だけでなく、エスプレッソひとつを取っても、そのこだわるポイントは無数にある。バリスタ1人1人にこだわりがあって、淹れ方の作法も違うという。そんなすべてのこだわりを突き詰めて、いつしか自分の好みの味を自分で出したい、そして飲みたいし提供したいとまで思うほどに。

「もはやエスプレッソの世界に思いっきり興味を持ってしまったので、自分で淹れられるようになりたいし、ゆくゆくはお店を出したいなと思っちゃいまして」

それこそ、気になりだしたら止まらない。もともとの凝り性な性格は、プロの道具をそろえ、普段の仕事が終わってから毎晩夜中の2~3時まで練習したという。

お店にするなら、とことん勉強したいという思いで、約1年間勉強をして同じ地元のアパレルデザイナーTANUKI STUDIO内にDistar Coffeeをオープンさせた。

オープン前にエスプレッソマシンのセッティング。その日の気温や湿度の違いでも味や香りは変化するという。使うのはマルゾッコの1990〜2000年代の旧いモデル。まだ細かい設定ができないモデルなので、バリスタの個性が出せることからあえて旧いモデルをチョイスしている

その味は弦巻さんが自信を持ってお店をオープンさせただけのことはある。デザイナーの仕事同様、納得が行くまでやりきる姿勢はエスプレッソの芳醇な香りにもしっかりと表現されている。

店名のDistar Coffeeとは「星の反対=ブラックホール」を意味し、入ったら抜け出せないという意味で命名。その味を一度味わえば、店名の由来にも納得できる。

取材に訪れたこの日も、エスプレッソ愛好家が訪れ、その味に太鼓判を押していたほど。

そのエスプレッソ沼から抜け出せない人は今後もここから増殖していきそうだ。

抽出はマシンでも、工程に手作業の部分は多い。タンピング(フィルターにセットしたコーヒーの粉を水平に固めるように圧力をかける作業)ひとつ取ってもエスプレッソの味は変わる。ここもバリスタの個性や腕で仕上がりが左右される部分。実に奥が深い
エスプレッソの沼にハマリ、仕事終わりに毎日のように深夜まで実戦することで身につけたという弦巻流エスプレッソ。やるなら真剣に、そして飲む人に喜んでもらいたいという思いがその原動力だった
お店のシグネチャーはアイスラテ。マシンからコップに直接落とすことで、エスプレッソ本来の味と香りを楽しめる。オリジナルのシロップ入りミルクの層に上層のエスプレッソがゆっくりと落ちていく様子も美しい。600円
ハート、ボディ、クレマと3層になるエスプレッソのクレマ以外の部分にスチームミルク入れたジブラルタル。エスプレッソ好きが定番のラテなど次に楽しむメニュー。ミルクの温度管理など、作る難易度が高く、お店でも出すところが少ないメニューも楽しめる。600円
コーヒーカップの底には「SEIZE THE DAY」の文字が。これは「今を楽しもう」とか「今日を楽しもう」という意味。そんな粋なメッセージが飲み干した人にだけ飛び込んでくる
同じ地元の旧知のなかであるTANUKI STUDIO。ショップはTANUKI STUDIOのウエアも販売している。カットソーを中心に、コーヒーだけでなくファッションも楽しめる
ショップのロゴをプリントしたロンT(4980円)やキーホルダー(1980円)といったオリジナルグッズも販売。ロゴはMASASCULP(マサスカルプ)氏のデザイン

【DATA】
DISTAR COFFEE
東京都多摩市貝取1441-1 永山ビル
営業時間:11時~14時 不定休
https://distar.jp

この記事を書いた人
ラーメン小池
この記事を書いた人

ラーメン小池

アメリカンカルチャー仕事人

Lightning編集部、CLUTCH magazine編集部などを渡り歩いて雑誌編集者歴も30年近く。アメリカンカルチャーに精通し、渡米歴は100回以上。とくに旧きよきアメリカ文化が大好物。愛車はアメリカ旧車をこよなく愛し、洋服から雑貨にも食らいつくオールドアメリカンカルチャー評論家。
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