深川の街で理化学の視点から開発された蒸留酒。
2023年春に清澄白河にオープンした『深川蒸留所』。オリジナルのクラフトジンを蒸留しているが、ここで稼働するのは、巨大なフラスコを採用したオリジナルの蒸留器。まるで理化学の実験装置のような佇まいだが、その理由は蒸留所の成り立ちが大きく関係している。
実はここを運営するのは、創業90年の歴史を誇る、下町の理化学専門問屋。代表の関谷幸樹さんは、蒸留所を作ったワケをこう語る。
「蒸留は理化学の世界ではポピュラーな技術なんです。それを応用してクラフトジンを作ってみたら、おもしろいんじゃないかって。蒸留酒のなかでもジンは素材の自由度が高く、ある意味“実験”に向いたお酒でもありますから」
そして誕生したのが、理化学的な発想を基にしたニューツブロ蒸留器。さらに関谷さんが言う実験とは、地域性のある素材を掛け合わせること。第一段のクラフトジンには近隣の木場で扱う、青森ひばのチップを取り入れている。
「深川は100年以上も続くお店が並ぶ歴史ある街だけど、新しい文化を受け入れてくれる懐の深さを感じます。そんな場所だからこそ、提供できるお酒があると思っていて。
幸いにも製造業が盛んだから、職人さんを含む作り手も豊富。そうした人たちとコラボレートして、今までにないジンを作ってみたいですね。それと地産地消もテーマにしているので、地元のお店でしか飲めない、深川名物のカクテルも提案していきたいです」
クラフトジンができるまで。
ジンはベースとなるアルコールにボタニカルを加えたシンプルな蒸留酒。主原料となるのはジュニパーベリーというスパイスで、それ以外はどんなボタニカルを加えても構わないという特性がある。関谷さんが言う「自由度が高い」とは、そうした製造過程にあり、ブレンドする素材によって風味も変わるため、独自の味わいを追求した“クラフトジン” がブームとなっている。
まずは基本となる素材、ジュニパーベリーの分量をしっかりと測ることから。収穫地によって異なる香りや風味も考慮する必要がある。
ベースとなるアルコールを蒸留機に投入。深川蒸留所ではサトウキビを原料にした、あまりクセのないアルコールを厳選している。
アルコールで満たされた蒸留機になかでもジュニパーベリーを投入。一定の温度を保つために、ゆっくりとかきかき混ぜながら入れる。
深川蒸留所で使われているのは、マケドニア産のジュニパーベリー。大振りで瑞々しく、清涼感のある風味が特徴的。手にするだけでジンの香りが広がる。
ジュニパーベリーに続いて投入するのが、レモンピールやベチバー、青森ヒバなど。さらに生姜や大葉なども取り入れて、独自の配合でブレンドしていく。
均等に熱が加わるように混ぜていくが、その後はフラスコを被せて蒸留させる。その様子をフラスコの耐熱ガラス越しに見られるため、本当に理化学の実験みたい。
自宅で楽しむ美味しい飲み方。
深川蒸留所のクラフトジンを最も美味しく飲む方法は? ということで実践してくれるのは、同じく深川でジンとカレーに特化したバー『NICO』の名物マスター、小林幸太さん。関谷さんと二人三脚で深川蒸留所の設営やクラフトジンの開発に携わり、クラフトジンの開発にも携わり、株式会社深川蒸留所の社長にも就任した。『FUEKI』の風味を最大限に味わえる、簡単なレシピを紹介します。ぜひ試してみてください」
第一弾クラフトジン『FUEKI』。この地に縁のある松尾芭蕉が愛でた言葉「不易流行」より命名されたが、ある意味今の深川を表す言葉でもある。現在は深川の酒店でのみ入手可能。5200円
「オススメするのは、ジントニックならぬ“ジンソニック”。トニックウォーターと一緒にソーダ水(炭酸水)も用意してください」
「作り方は簡単。ジン、トニックウォーター、ソーダ水を、1:1:2で割るだけ。その配分もあくまで目安なので、お好みで」
「トニックウォーターだけで割るジントニックより飲みやすく、ボタニカルの風味をダイレクトに味わえますよ」
※情報は取材当時のものです。
(出典/「Lightning2023年5月号 Vol.349」)
Text/M.Kuwabara 桑原将嗣 T.Shukuri 宿利泰蔵
関連する記事
-
- 2024.11.22
渋谷発!! カクテル世界チャンピオンがプロデュースした新世代ハイボールが誕生。
-
- 2024.11.12
ビール造りに終わり無し!クラフトマンシップに共感したOHRAIラガー誕生!