フェンダーだけでない、個性豊かなアメリカらしいヴィンテージギター。

音楽史に大きな影響を与えてきたエレクトリック・ギター。ギブソンと並んで2大ブランドとして知られるフェンダーは、エンジニアでもあったレオ・フェンダーがデザインしていることもあり、既存の楽器に捉われない自由な発想から生まれたモデルも数多い。ここでは楽器や音楽業界に大きなイノベーションを起こしたフェンダーをはじめ、アメリカン・ヴィンテージ・ギターを語る上で欠かせないブランドを新宿のギターショップ「HYPER GUITARS」に紹介してもらった。

1.音楽と楽器史に革命を起こしたブランド。「FENDER(フェンダー)」

1946年にレオ・フェンダーがカリフォルニア州で創業したブランドで、後にテレキャスター、ストラトキャスター、プレシジョン・ベースなど、音楽史に革命を起こす名器を次々と送り出し、伝説的なミュージシャンを生む原動力となった。

【1954年製】Stratocaster|時代を先取りしたエルゴノミクス・デザイン。

エリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ジミ・ヘンドリックス、スティーヴィー・レイ・ヴォーンなどの使用でも知られ、レスポールと人気を2分するギターが1954年に誕生したフェンダーのストラトキャスターだ。これはその初年度モデル。サンバーストのレスポールほど高騰していないが、近年その人気が改めて高まっている。激しくビブラートできるシンクロナイズド・トレモロは’50年代では革新的だったはず。

【1955年製】Telecaster & 1950s Twin|’50sサウンドが聴こえるセット。

通称“ブラックガード” とも呼ばれる、1955製のテレキャスター。なんとこの個体はブライアン・セッツァーの元所有機で、ヒップショット製のストリング・ベンダーが組み込まれている。フェンダーはギターのみならず、アンプ・ブランドとしてもトップ・クラスの人気を誇り、’50年代は写真のようなツイードでカバリングされたアンプが売られていた。この2つを直結して音を鳴らせば、’50sサウンドが蘇る。

【1963年製】Jaguar & 1960s Deluxe Reverb|サーフミュージックで大ヒット。

1962年からフラッグシップ・モデルとなったのがジャガーだ。このモデルは、ザ・ビーチ・ボーイズのカール・ウィルソンが使ったことでも人気となった。また写真のオリンピック・ホワイトのジャガーのようにカスタム・フィニッシュも作られ、マッチング・ヘッド(※ボディとヘッドが同色)も多い。後ろに写るアンプは、1960年代のデラックス・リヴァーブで、黒いカバリングからブラックフェイスと呼ばれ、プロの現場で評価が高い。

このギターに付属していた冊子。これはフェンダーから新発売した真空管アンプを紹介する内容で、当時の雰囲気が感じられる
こちらは、ジャガーのマニュアル。やや複雑なピックアップ・セレクト&プリセット・スイッチなどの使い方が説明されている

【1958年製】Jazzmaster|プリセット・トーンが時代を先取り。

1958年にフェンダーの最上級モデルとして登場したのがジャズマスターだ。写真は、レア・カラーが一般的ではない58年に作られたゴールドで、かなり希少価値が高い。ジャズマスターは、左右非対称のオフセット・コンター・ウェスト・ボディを採用し、座って弾く際に弾きやすいシェイプが特徴だ。またピックアップ、フローティング・トレモロも専用設計となる。ザ・ベンチャーズの使用で人気となった。

ジャズマスターのために開発されたフローティング・トレモロは、シンクロナイズド・トレモロよりも滑らかなビブラート効果が得られる

【1968年製】Telecaster Thinline|セミ・ホロウ構造のテレキャスター。

テレキャスターのバリエーション・モデルとして1968年に登場したテレキャスター・シンライン。ボディ左側にfホールが設けられたセミ・ホロウ構造で、より生鳴りを重視した作りになっている。初期はマホガニー・ボディだったが、写真のギターのように初年度からアッシュ・ボディも並行して作られた。塗装に傷が少なく、かなり極上のコンディションと言える1本だが、近年なかなか店頭に並ぶことはない。

ギブソンと比べて、やや尖った印象を受けるfホール。ナチュラル・フィニッシュのためアッシュの木目もハッキリ浮きりわかる

【1964年製】Mustang|Charの使用で大ブームに。

1964年に登場したムスタングは、Charが使用したことで日本では一時期飛ぶように売れたモデル。特にCharが使っていたホワイトのムスタングの人気が高い。スケールが24インチと短いため、Charの名曲「Smoky」が誕生したという話は多くの音楽ファンが知っている。程良く使い込まれ、ボディの塗装は経年変化でクリーム色になっている。比較的フェンダーのヴィンテージ・ギターの中では求めやすいプライスの物が多い。

ムスタング専用に設計されたダイナミック・トレモロは、上位機種のフローティング・トレモロを簡略化し、コストを下げて作られた
この記事を書いた人
Lightning 編集部
この記事を書いた人

Lightning 編集部

アメリカンカルチャーマガジン

ファッション、クルマ、遊びなど、こだわる大人たちに向けたアメリカンカルチャーマガジン。縦横無尽なアンテナでピックアップしたスタイルを、遊び心あるページでお届けする。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

今っぽいチノパンとは? レジェンドスタイリスト近藤昌さんの新旧トラッド考。

  • 2025.11.15

スタイリストとしてはもちろん、ブランド「ツゥールズ」を手がけるなど多方面でご活躍の近藤昌さんがゲストを迎えて対談する短期連載。第三回は吉岡レオさんとともに「今のトラッド」とは何かを考えます。 [caption id="" align="alignnone" width="1000"] スタイリスト・...

この冬買うべきは、主役になるピーコートとアウターの影の立役者インナースウェット、この2つ。

  • 2025.11.15

冬の主役と言えばヘビーアウター。クラシックなピーコートがあればそれだけで様になる。そしてどんなアウターをも引き立ててくれるインナースウェット、これは必需品。この2つさえあれば今年の冬は着回しがずっと楽しく、幅広くなるはずだ。この冬をともに過ごす相棒選びの参考になれば、これ幸い。 「Golden Be...

【ORIENTAL×2nd別注】アウトドアの風味漂う万能ローファー登場!

  • 2025.11.14

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【ORIENTAL×2nd】ラフアウト アルバース 高品質な素材と日本人に合った木型を使用した高品質な革靴を提案する...

決して真似できない新境地。18金とプラチナが交わる「合わせ金」のリング

  • 2025.11.17

本年で創業から28年を数える「市松」。創業から現在にいたるまでスタイルは変えず、一方で常に新たな手法を用いて進化を続けてきた。そしてたどり着いた新境地、「合わせ金」とは。 硬さの異なる素材を結合させるという、決して真似できない新境地 1997年の創業以来、軸となるスタイルは変えずに、様々な技術を探求...

時計とベルト、組み合わせの美学。どんなコンビネーションがカッコいいか紹介します!

  • 2025.11.21

服を着る=装うことにおいて、“何を着るか”も大切だが、それ以上に重要なのが、“どのように着るか”だ。最高級のプロダクトを身につけてもほかとのバランスが悪ければ、それは実に滑稽に映ってしまう。逆に言えば、うまく組み合わせることができれば、単なる足し算ではなく、掛け算となって魅力は倍増する。それは腕時計...

Pick Up おすすめ記事

今こそマスターすべきは“重ねる”技! 「ライディングハイ」が提案するレイヤードスタイル

  • 2025.11.16

「神は細部に宿る」。細かい部分にこだわることで全体の完成度が高まるという意の格言である。糸や編み機だけでなく、綿から製作する「ライディングハイ」のプロダクトはまさにそれだ。そして、細部にまで気を配らなければならないのは、モノづくりだけではなく装いにおいても同じ。メガネと帽子を身につけることで顔周りの...

雑誌2ndがプロデュース! エディー・バウアー日本旗艦店1周年を祝うアニバーサリーイベント開催決定!

  • 2025.11.21

エディー・バウアー日本旗艦店の1周年を祝うアニバーサリーイベントを本誌がプロデュース。新作「ラブラドールコレクション」や本誌とのコラボなど、ブランドの情熱が詰まった特別な9日間を見逃すな! 来場者には限定のブランドブックを配布! 今回のイベントに合わせ、「エディー・バウアー」をもっと知ってもらうため...

決して真似できない新境地。18金とプラチナが交わる「合わせ金」のリング

  • 2025.11.17

本年で創業から28年を数える「市松」。創業から現在にいたるまでスタイルは変えず、一方で常に新たな手法を用いて進化を続けてきた。そしてたどり着いた新境地、「合わせ金」とは。 硬さの異なる素材を結合させるという、決して真似できない新境地 1997年の創業以来、軸となるスタイルは変えずに、様々な技術を探求...

着用者にさりげなく“スタイル”をもたらす、“機能美”が凝縮された「アイヴァン 7285」のメガネ

  • 2025.11.21

技巧的かつ理にかなった意匠には、自然とデザインとしての美しさが宿る。「アイヴァン 7285」のアイウエアは、そんな“機能美”が小さな1本に凝縮されており着用者にさりげなくも揺るぎのないスタイルをもたらす。 “着るメガネ”の真骨頂はアイヴァン 7285の機能に宿る シンプリシティのなかに宿るディテール...

【ORIENTAL×2nd別注】アウトドアの風味漂う万能ローファー登場!

  • 2025.11.14

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【ORIENTAL×2nd】ラフアウト アルバース 高品質な素材と日本人に合った木型を使用した高品質な革靴を提案する...