史上最強のマスタングの1台目が約7000万円で落札。コレクタブルなクルマの価値は上昇中。

クラシックカーの高騰が天井知らずとは聞くけれど、現代のクルマもレアなモデルとなればクラシックカー以上の価値が付くことも。ここ最近のクルマ好きを取り巻く環境から目が離せない。

プレミアムな価値のあるモデルは高嶺の花を突き進む。

いまやクラシックカーの販売価格は世界中で上昇の一途。国産旧車ですら、世のおじさん世代にはリアルタイムだった1980年代くらいの馴染みのあるモデルでも高値安定傾向。ガソリンエンジンのクルマからEVへの過渡期ということもあり、今後はより趣味性が高く、コレクタブルなモノへとシフトしていくことは間違いない。

しかも最新の高級車、とくにスーパーカーと呼ばれるハイパフォーマンスな稀少モデルも同じく高騰中。もともと生産台数が少ないことも手伝って、世のクルマ好きだけでなく、投機対象として見る人たちの熱い視線も加わったものだから、定価以上のプライスで市場に出てくることも珍しくない。

高級時計ブランドもアンティークモデルだけでなく、現行モデルですらもはや定価ではなかなか手に入らないという、ここ最近の事情と似ている。世の「好き者」たちが世界中で増加傾向なのか、もはやひと昔前のものさしではついて行けないのである。

フォードの歴史の中で燦然として輝くマスタング。1964年に生まれ、今でもアメリカ車のアイコンとして存在。2024年式は第7世代となり、歴代多くの愛好家が世界中に存在している

そんなご時世も手伝ってか、今のクルマ事情が「なるほどね」と思わせる出来事が先日アメリカで行われたクルマのオークション「バレットジャクソン」にチャリティで出品された2024年式フォード・マスタングGT。

これは2024年式でモデルチェンジした第7世代のマスタングで、アメリカでの販売は2023年の夏ごろと言われているニューモデル。

最新モデルは先代よりも抑揚とエッジの効いたデザイン。リアはくの字にえぐれた特徴的なスタイルになり、両サイドには往年のマスタングファンにはうれしい、伝統の3本のタテ型のテールランプをあしらう

そのハイパフォーマンスグレードであるGTが出品されただけではそれほど驚かない。何とこれ生産第1号車でVIN001(VINとはヴィークル・アイデンティフィケーション・ナンバーの略で、いわゆる製造番号のこと)が刻印されたモデルなのだ。

世のクルマ好きは最初とか最終モデルといったワードにすこぶる弱い(笑)。しかもまだ正式に発売されていないモデルを先に手にできることも手伝って、なんと56万5000ドル(日本円で約7000万円)で落札された。もちろん、チャリティだったというご祝儀もあったかもしれないけれど、ここまで上がるとは。

GTモデルに搭載されるのは約5000cc(307キュービックインチ)のDOHC-V8エンジン。コヨーテと名付けられたハイパフォーマンスな心臓部は486馬力を発生。マスタング史上、もっともパワフルなモデルとして2024年モデルに設定される

もちろんVIN001のマスタングGTは世界でこれ1台。そういう意味では価値のあるモデルかもしれない。世界のクルマの市場価値っていったいどこまで上昇していくのか。2024年式マスタングGTの新車価格は4万ドルくらいではないかと言われているなか、このプライスに衝撃を受ける人が多かったことはいうまでもない。

戦闘機のコクピットをイメージしてデザインされたというインパネ周り。円形ではないステアリング形状や巨大なスクリーンなど、現代車両ならではの装備はすべて搭載される。ステアリング中央には伝統的な野生馬のエンブレムがあり、ドライバーの気分を高めてくれる

何年か経過したときにこの1号車が再び売りに出されるときはいったいいくらまで値が上がるのかは気になるところだけれど、アメリカ人にとってフォード・マスタングが特別なモデルであるということを教えてくれるような落札価格。そんなお祭り騒ぎによって、新型マスタングがクルマ好きだけでなく、アメリカ中に認知されたことは間違いない。

この記事を書いた人
ラーメン小池
この記事を書いた人

ラーメン小池

アメリカンカルチャー仕事人

Lightning編集部、CLUTCH magazine編集部などを渡り歩いて雑誌編集者歴も30年近く。アメリカンカルチャーに精通し、渡米歴は100回以上。とくに旧きよきアメリカ文化が大好物。愛車はアメリカ旧車をこよなく愛し、洋服から雑貨にも食らいつくオールドアメリカンカルチャー評論家。
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