カッコよさを追求したこだわりのエンジニアブーツ。
アメリカンヘリテージをベースにしながらも、音楽やモーターサイクルなどのカルチャーを組み合わせ、独自の世界観を構築するビルトバック。彼らの作り出すエンジニアの特徴は、なんといってもその“色気”にある。流麗でクラシカルなフォルムと、ドレスブーツのような美しさを持つエンジニアは、ビルトバックの独壇場だ。
代表の西崎さんが初めてエンジニアブーツを作ったのは2009年のことだったという。
「もともとアメリカの旧いエンジニアを集めて売っていた時期があったんです。いろいろヴィンテージを見ているうちに、自分の好きなエンジニアがわかってきました。周りを見渡してもどこにもないので、じゃあ自分が作ろうと」
最初に企画したのは、現在ラインナップされている「ザ・パイオニア」だった。かつて、原宿のヴィンテージショップ「フェイクα」の澤田さんに、「エンジニアかどうかはわからないけど、面白いブーツがあるよ」と見せてもらい、一目惚れしたのがきっかけだった。こんなブーツを作ってみたい。だが、ライニング無しのインナーカウンター仕様でパーツ数も少なく、エンジニアブーツとして成立させるのが難しそうだったので、一旦は断念した。
「そこで、セパレートソールの一番理想的なエンジニアを作ろうと思ったんです。それが今のLOT444です。いろいろ試行錯誤しましたね。最初は経年変化しやすいホーウィン・クロムエクセルで履き込みサンプルを作りました。約半年履き込みテストをして、ホースバットとステアハイドの製品サンプルを作ったんです」
その頃、ホースバットのエンジニアは、ほとんど存在していなかった。まさに、ビルトバックが先駆け的存在だったといえる。それからというもの、理想のエンジニアに少しでも近づけようと、あらゆるマテリアルを試したり、修正を加えていったという西崎さん。
国内外のホースバット、ホースフロント、ガラスレザー、ステアハイド……やがて、とことん製品開発に付き合ってもらった皮革業者とメーカーのお陰で、オリジナルレシピの革が完成していったという。
断っておくが、ビルトバックは決してブーツ専業ブランドではない。そんな彼らが、“たかが”エンジニアのために、ここまで追求するとは、まさに驚きだ。
ある日のこと、皮革業者の担当者が西崎さんに1足のブーツを見せた。それはまさに、西崎さんが作りたくても作れなかった、かつてのインナーカウンターのブーツを再現したものだった。実はその方は、最初に相談を受けて以来ずっと、独自で試作を重ね、ようやく完成に漕ぎつけたのだという。
「いやぁ、嬉しかったですね。その方が作ってくれた試作品を2〜3回修正して、ザ・パイオニアが出来上がったんす。ザ・パイオニアには、グイディのホースバットを使っています。芯通しではなく、きちんと芯が残っているので、張りがあって最高の革だと思います」
西崎さんにとってのカッコいいエンジニアの条件、それは(1)つま先が薄く、(2)シャフトが前傾で、(3)ストラップが長く、(4)両サイドを強く吊り込んでいること。ビルトバックのエンジニアはすべてこの条件を満たしており、だからこそ、得も言われぬセクシーさを醸し出しているといえる。
「僕たちは職人でもなければ、靴の専門家ではありません。でもこの視点を大切にしています。僕らにとって大切なのは、見た目のカッコよさと、履いた感じです。これからも、カッコよくてセクシーなエンジニアを作っていきますよ」
ビルトバックを代表する名作エンジニア。
ビルトバックを代表するエンジニアが、このLOT.444。1940〜’50年代のエンジニアブーツをモチーフに、素材はホースバットを採用し、ホースハイドブーツ専用ラストを用いて作られている。その美しいフォルムは、まさにため息モノ。極限までの吊り込みを追求し、土踏まずの内甲ラインを実現、極上のフィッティングを体感することができる。履き込むほどに、トゥが沈み、セクシーな佇まいを見せてくれる。A010 Specialty Lastを使用。9万6800円
インナーカウンターの美しさに酔いしれる。
モーターサイクルブーツ黎明期のモデルをイメージして作られた「ザ・パイオニア」。最大の特徴は、ドレスブーツのようにインナーカウンターを採用している点。ローパーブーツを彷彿させるクラシカルな佇まいと、ドレスシューズのような美しさが同時に味わえる。使用するラストはA012 Pioneer Last。バックルは、ブラックの焼き付け塗装を施したサンドキャストの鉄製バックル。イタリアの名タンナー・グイディ社のホースバットを採用。12万9800円
【問い合わせ】
アトラクションズ
TEL03-3408-0036
https://attractions.co.jp
※情報は取材当時のものです。
(出典/「Lightning2023年1月号 Vol.345」)
Text/T.Ogawa 小川高寛 Photo/S.Kai 甲斐俊一郎 A.Kuwayama 桑山章
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