「アンカーヴィンテージ」オーナー・篠田和宏さん
1961年生まれ。20代よりヴィンテージクロージングに携わり、横浜にアンカーヴィンテージをオープン。フライトジャケットのスペシャリストとして知られる存在である。
魅力満載のカスタムA-2。
1980年代からA -2に興味を持ち、コツコツと集めていたという篠田さん。アメリカ現地のヴィンテージミリタリーのコミュニティとも親交が深いため、日本の市場では滅多に出ない個体が粒揃いだ。
「A -2を知ったきっかけは、1980年代に雑誌『ポパイ』で紹介されていたことでした。そのシンプルながらも存在感のあるデザインに惹かれて、ラフウエア製のA -2を初めて買いました。その後もいい個体があれば買い集めていましたが、アンカーヴィンテージをオープンしたことをきっかけに放出したんです。オーナーがお客様よりいいA -2を着ていたら、感じが悪いじゃないですか(笑)。だから僕が持っているのはこの4枚で、人気の部隊ではないですが、センスよくカスタムされていて、ボディのデザインやコンディションが良いものを厳選したという感じですね。カスタムされたA -2は、当時のオリジナルは意外と少ないので、出自がしっかりしたものを選ぶのがオススメです」
1942~’43 BRONCO MFG.CORP
2021年にアメリカのコレクターから購入したというコンディション抜群のTYPE A-2。このコントラクターは1942〜’43年にかけて納入していた。詳細は不明であるが、胸に部隊のパッチが付き、レザーは馬革と思われる。クラウンのスプリングジッパーが付属する。
カラフルな部隊のパッチは、ミサイルをモチーフにしたデザイン。袖にあるUSアーミーエアフォースのシンボルマークもきれいに残る。
1942 AERO LEATHER CLOTHING.CO.
篠田さんが30年ほど前に購入したというエアロレザー製のタイプA-2。裏面には、義勇軍として中国国民党軍を支援した際に装着されるブラッドチットがある。もともとは背面に付いていたが、目立つことから裏地に縫い付けられた。胸のパッチから輸送部隊であったATC(エアトランスポートコマンド)のものだとわかる。
ブラッドチットとは、CBI戦区で現地民にレスキューを求める際に、アメリカから来た義勇軍であることを伝えるために使用された。
ATC(エアトランスポートコマンド)のパッチは、シルバーの使用も存在。横にある赤と青の刺繍はモールス信号でATCと表記している。
義勇軍としてCBI戦区に派遣された際に使用していたパッチはレザー製。CBIとはチャイナ、ビルマ(現ミャンマー)、インドの頭文字。
1942 AERO LEATHER CLOTHING.CO.
A-2と同じエアロレザー社製で1942年製。ディテールに大きな違いはないが、この個体の最大の特徴は、ブラッドチットが背面に付いていること。もともとは背中に貼られていたが、敵から目立つため、ライニングに縫い付けるように修正された。そのため、同年ではあるが、このジャケットの方が早く支給されていたのだろう。
文字はかなり薄れているが、強烈なインパクトとなったバックスタイル。胸のパッチから右頁と同じATC所属であることがわかる。
胸のパッチもレザーが作られている。輸送部隊であるATCのパッチでもかなり珍しい仕様。左にはモールス信号が入っている。
内側にはインド向けのブラッドチットのみ縫い付けられている。インドがイギリスの植民地であった時代のため国旗が入っている。
1941 J.A.DUBOW MFG.CO.
人気コントラクターであるJ.A.デュボウはロングポイントの襟が特徴のひとつ。オーダーナンバーから1941〜’42年の馬革だとわかる。これはアーミーエアフォースの少佐が着用していたもので、パッチは509CG部隊のもの。30年ほど前に購入した大切なアーカイブである。
親交の深いコレクターから譲り受けたもので、このパッチのデザインは509CG部隊のもの。日本で1枚しかないスペシャルな個体だ。
【DATA】
アンカーヴィンテージ
神奈川県横浜市中区元町4-161元町YUビル2階
TEL045-263-8250
営業/15時〜18時
休み/月火定休
https://anchor-vintage.ocnk.n
(出典「Lightning2022年2月号 Vol.334」)
Text/S.Sato 佐藤周平 Photo/K.Okamoto 岡本浩太郎
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