当時のアメリカ人のセンスを毎日の通勤から感じている。
旧いアメリカ車が持つ魅力は、現代のクルマからは想像もつかないような巨大な排気量のエンジンに、これまた誰も真似ができないようなデザインを持ったモデルが多数存在すること。日本車とも欧州車とも違うアメリカ独自の文化やセンスがそのままクルマにも反映されることで、そこに楽しみを見出す人は少なくない。
一般的には燃費が悪い、壊れるなどという風評があるけれど、それもしっかりと整備してあげればどこ吹く風。それよりも、その独特なデザインと、力強い走りを知ってしまうと、これほどおもしろいクルマは無いという人もいる。ここに紹介する福岡さんもその一人。
「昔、古着店で働いていたときのオーナーがアイアンバンパーのコルベットに乗っていて、それを見て憧れたんですよね。いつか乗りたいと。でも旧いアメリカ車だし、自分では扱えないんじゃないかと思ってましたね。
でも、このクルマの前に’66年式VWタイプ3に乗っていたんですが、それが普通に乗ることができたんで、これは何とかなるかなと思ったんですよ。そんなときにこのコルベットに出会ったので、初めての旧いアメリカ車だけど行っちゃいましたね。普通に乗れちゃってます(笑)」
何も特別なクルマだから過保護には扱わず、毎日の通勤もこれ。
「この時代のアメリカ人ならではの、日本人には到底作れない感性がこの時代のコルベットにはありますよね。一生乗るつもりです」
1971 Chevrolet Corvette Conv.
流れるような流線型のフォルムに、キャビンの部分を絞るようにデザインされた「コークボトルライン」が特徴の第三世代のコルベット。アメリカが生んだピュアスポーツカーの代表選手だ。
エンジンはストックの350キュービックインチ(5700㏄)のV8をベースにしっかりとレストア&ドレスアップしている。エアコンも搭載した快適仕様になっている。
インパネ、ステアリングなどはカスタムされてしまっている車両も多いなか、これはオリジナルの状態をキープする。本人もこのままオリジナルをキープしていく予定。
外装がレッドで内装もレッド。これぞアメリカといったカラーリングは福岡さんもお気に入り。日本車や欧州車ではまず作らないだろう独特な感覚がお気に入り。
法規制で現在では生産できないリトラクタブル式のヘッドライトも時代のなせるワザ。フロントノーズが尖っているデザインも「らしさ」だ。
職人にワンオフで作ってもらったステンレスマフラーはドロドロとしたいわゆるアメリカ車の排気音よりもレーシーなサウンドを求めたため。
◆
アメリカ車に憧れていても、燃費やメインテナンスについてなどの風評を聞いて躊躇している人も多いのではないだろうか? だがしかし、きちんとした整備と愛情を注げば待っているのはこんな日常。羨ましいと思った人は、その先の景色を見に、一歩踏み出してみてはいかがだろうか?
(出典/「Lightning 2021年6月号 Vol.326」)
Text/S.Koike 小池彰吾 Photo/T.Ogawa 小川高寛
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