スポーツ自転車への原点回帰。今だから“競輪車両”に乗りたい!

自転車業界でもヴィンテージ人気は年々高まりつつある。なかでもこだわるならシンプルを極めた“固定ギア”、さらに、日本の技術の粋を集めた「NJS」(競輪競技車両)こそが、原点にして最高だと断言したい。

お話を伺ったのはこの方……「レストアの森 SHINKAIサイクル」オーナー・新開薫さん

子供時代から自転車が好きで、長年某クルマメーカーのディーラーに勤めていたが脱サラして自転車店を開業。現在では競輪選手の車両の調整も行うほど信頼も厚い。

シンプルでいて、柔らかい乗り心地の“クロモリ”。

2000年代後半にNYのメッセンジャー達が愛用していたことから日本でも一大ブームとなったピストバイク(固定ギア)。だが事故や迷惑行為も多く、ブレーキの規制が入ったことで、波が引くようにブームも去った。

しかし近年、カーボンフレームやディスクシステムの低価格化もあり、シンプルを極めたスタイルに再び注目が集まりつつある。

最新素材を使った今時のスタイルがある一方で、ピストでもヴィンテージが注目されている。その最高峰が、日本が世界に誇る競輪選手が競技で使用する車両だ。フレームやハンドル、ペダルなど全てのパーツに“NJS”という刻印が入るものしか競技で使用できないため、“NJSモノ”といえば、ピストのなかでも特別な存在。手作業でコンマ何ミリに調整されるクロモリフレームは、昔ながらのルックスと、柔らかい乗り味が特徴だ。

「ウチは競輪選手の自転車の調整も行うことが多く、クロモリしか扱わないですね。そのフレームを調整してブレーキなどをつけて公道仕様にしています。飾っても絵になるシンプルなルックスもそうですし、公認ビルダーが作る、いわば『公道でレーシングカーが乗れる感覚』が味わえるというのも“NJS”の魅力ですね」

知っておきたい“競輪パーツ”のコト。

トラックを走る競輪用自転車は、形こそ一般的な自転車と大差ないが、フレームはもちろん使用されるすべてのパーツに厳格な規定が設けられている。そのあたりのことについて少し知っておくと楽しみも倍増するはずだ。

NJS

不正なく安全に競技が行えるよう、競輪用のパーツは全てNJS(日本自転車振興会)に認定されたものしか使えない。つまりNJSの刻印が入ったものは本物であり、かつトップクオリティという証でもある。現在はJKAという団体が競輪を統括しているが表記はそのまま。

競輪フレームビルダー

競輪用のフレームビルダーは現在24ブランド。三連勝やエバレストなど消失してしまったブランドなどもある。一般でも買えるブランドもあるが、すべてハンドメイドのため多くが競輪選手専門に作っていることもあり、なかなか手に入らないというのも人気の秘訣。

天返しステム

競輪選手の移動用に開発された” 天返し” ステム。通常は固定式だが、ボルトを緩めると上部が外せる仕組みになっていて名前の通り天地をひっくり返してつけることでハンドル位置を上げられるモノ。10年ほど前のブームで値段が高騰した通好みのレアアイテム。

固定ギアに乗る時は、イケてるブレーキをつけましょう。

道交法上、現在自転車で公道を走る際には前後ブレーキをつける必要があるが、競輪フレームには自転車をつけるためのマウント(取り付け穴)が付いていないため注意が必要。クールなブレーキでドレスアップしよう。

ダイアコンペ2本引きブレーキレバー

前後ブレーキを同時にかけられるようにカスタマイズされたダイアコンペのブレーキレバー。前後のかかり具合のバランスも調節可能。ハンドル周りをスッキリさせたい人にはおすすめの一品。

ダイアコンペ GC610 センタープルブレーキ

力が平均して伝わるセンタープルブレーキはルックスも美しく、軽いタッチでもよく効く。ただ、メーカーやモデルによって台座の形や位置がまちまちなので、最初にブレーキを指定する必要がある。

小倉自転車 ダイレクトマウント ブレーキ台座 III 型

シマノダイレクトマウント規格準拠のブレーキを取り付けるためのアダプター。剛性や性能的にも問題ないうえに、BB裏に取り付けるため、すっきりした外観を実現。これはオススメ。6820円

TRP TTV ブレーキ フロント用

正面から見た時にフロントフォークより出っぱらないエアロのVブレーキ。TRPエアロブレーキは廃盤になりつつあって現在入手が難しくなってきた。8800円

固定ギアファン垂涎の競輪車両を紹介!

競輪用のフレームは一般用に作っていなかったり、一般用に作っていても敷居が高くて入手しづらい。とはいえ、メンテやパーツに詳しくないと個人売買は当たり外れも大きい。そんな人のためにSHINKAIサイクルが販売する、貴重な競輪車両の一部を紹介しよう。

選手も憧れる世界のNAGASAWA。

中野浩一、神山雄一郎など世界に名だたるトッププロの車両を手掛けてきたトップブランド・ナガサワ。nagasawa彫刻入りのチェーンホイール、ステム、ペダルなど使用パーツもお見事。540㎜。オーナー所有車だが販売するかも? 予定価格46万円

NJS パーツ満載の極上車。

選手練習用フレームを芯出し、全塗装することで新品同様に仕上げたこちらもNAGASAWAの1台。練習用なので前後ブレーキ穴にボトルゲージ台座付き。ハンドル、ステム、BB、クランク、シートピラー、サドルはNJSパーツ。530㎜。29万8000円

チェーンピッチが10 ㎜の激レア車!

ビルダー歴50年以上の渡辺捷司氏が手がけるブランド「S.W WATANABE」。フレームも新品度同様品でかつ、チェーンピッチが10㎜(通常は12.7㎜)という’80年頃に発売された幻のピスト用コンポーネントを装着。530㎜。30万円

1970年代の名車がこの状態!

伝説のビルダー、梶原利夫氏が在籍していたことでも知られるエバレスト(土屋製作所)のピスト。1971年製。競輪選手が引退後、倉庫にそのままの状態で保管してあった希少車。メンテは必要だが美品。520㎜。ask

滝澤ブルーの鮮やかな1台。

’80年代の3連勝の伝統的なフレームをベースに滝澤ブルーといわれる鮮やかな青色を焼き付け塗装にてレストアした「3Rensho」の1台。台湾の高品質ブランドハブスミスのハブを装着。ホイール、リムは新品手組み。510㎜。22万2000円

街乗り仕様で乗り心地抜群。

競輪用フレームを作り続けて30年以上になる鶴岡レーシングのブランド・Bomber Pro(ボンバープロ)。シマノのアーモンドチェーン、手組みのホイール、バーハンドルなど綺麗なパーツで組まれた街乗り仕様車。540㎜。14万2000円

流行りのスタイルとは一線を画すソリッドなスタイルに出会える「レストアの森 SHINKAIサイクル」へ。

ピストだけでなくロードなど扱うヴィンテージ専門店。茨城県牛久市の実店舗では常時数十台のストックがあるほか、パーツ販売、各種調整まで行うヴィンテージ好きの強い味方が今回お話を伺った「レストアの森 SHINKAIサイクル」。かつてピストに乗っていたり、競輪車両に興味がある人はぜひ訪れて相談してみて。

「3RENSHO」のチームウェア。プロデュースは「ケルビム」の今野仁氏の弟・義氏、「MIYUKI」の今野信氏ともに、’80 年代〜’90年代前半には競輪界を席巻した
ショールームとは別棟にある作業場。こちらではフレームの芯出しやホイールのセンター出し、BBの交換など本格的な調整も可能

【DATA】
茨城県牛久市中央3-27-1
TEL029-869-8027
営業/10:00〜19:00(火、水、第1、3 土曜日を除く)
http://shinkaicycle.com

※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。

(出典/「Lightning 2021年10月号 Vol.330」)

この記事を書いた人
サカサモト
この記事を書いた人

サカサモト

アメカジ系動画ディレクター

Lightning、2nd、CLUTCH Magazineの公式YouTubeチャンネル「CLUTCHMAN TV」のディレクター。元Lightning副編集長ということもあり、クルマ、バイク、ミリタリーなど幅広い分野に精通。現在はもっぱら動画作成機材に夢中。ニックネームは、スキンヘッドにヒゲ面をいう「逆さ絵」のような顔に由来する。
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