アメリカでも日本でも、映画には大抵衣装デザイナーがつく。監督の趣旨を反映し、照明や美術スタッフとディスカッションしながら作品のイメージに合う衣装を作り上げるのだ。多くの場合は、劇場や映画専門の衣装デザイナーが担当するが、稀にビッグメゾンを筆頭とする著名ブランドが携わることもある。
エンドクレジットなどでは紹介されるものの、普通に映画を観ているだけでは気づかないことも多い。ここでは、知る人ぞ知る? あの名画を手掛けた気鋭デザイナーのコンセプチュアルな一端をご覧いただこう。
1.Ralph Lauren(ラルフ・ローレン)×『アニー・ホール』
ウディ・アレンが主演・監督を務め、1977年のアカデミー作品賞を受賞した名画。長い会話から生まれる独特のストーリー展開と、陽気さと傷心が入り混じった独特のストーリー展開は、その後の映画製作の根幹を変えたと言われている。
ウディ・アレンが着用するM-65やダイアン・キートンのヒッピーなファッションなど、随所に窺える当時のカルャーを象徴するアメリカン・カジュアルのコーディネイトは、Lightning本誌でもお馴染みのラルフ・ローレンが手掛けていた。
Brand Recommendation
’70年代に入って婦人服も手掛けるようになったラルフ・ローレン。主演のウディ・アレンはもちろん、ダイアン・キートンの衣装も手掛け、当時は“アニー・ホール・ルック” として、アメリカ全土を一世風靡した。
2.Brooks Brothers(ブルックス ブラザーズ)×『華麗なるギャツビー』
F・スコット・フィッツジェラルドの小説『グレート・ギャッツビー』の映画化。裕福に暮らす人々の無責任なライフスタイルを暴いた赤裸々なストーリーが魅力。主演はレオナルド・ディカプリオで、彼が着用していた男性用の衣装全般をブルックス ブラザーズが手掛けた。
ちなみに女性用のドレスはプラダ、ジュエリーはティファニーが担当。さらに、1974年版のロバート・レッドフォード主演の同名タイトル映画の衣装は何とラルフ・ローレンが製作していた。
Brand Recommendation
創業150年を数える老舗ブランドで、歴代アメリカ大統領に愛されていることでも知られる。ボタンダウンシャツやI 型スーツを初めて世に送り出し、アメリカントラッドのスタンダードを今も頑なに守り続けている。
※prime videoの場合はこちら
3.Giorgio A rmani(ジョルジオ・アルマーニ)×『アンタッチャブル スペシャル・コレクターズ・エディション』
禁酒法時代のシカゴを舞台に、当時裏社会で暗躍していたアル・カポネを、財務省の捜査官エリオット・ネスが逮捕しようと奔走する実話に基づいたストーリー。正統なアメリカスタイルのケビン・コスナー、スコットランド系衣装のショーン・コネリー、イタリアンカジュアルのアンディ・ガルシアなど、半世紀前の多彩な衣装が見ものだったが、それらすべてをアルマーニが手掛けた。公開当時最も旬だったブランドの真骨頂を垣間見れる。
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1975年に創立したイタリアンブランドは、アパレルはもちろん、香水やレストラン、高級リゾートなど、創業時からライフスタイルを提案したことで話題を呼び一気に人気が高まった。
4.Jean Paul Gaultier(ジャン= ボール・ゴルチエ)×『フィフス・エレメント』
『グランブルー』や『レオン』など、カリスマ的な人気を誇るリュック・ベッソンが本格的なハリウッド進出作品として手掛けたのが本作。主演はブルース・ウィリス。モデルとして当時活躍していたミラ・ジョボビッチが初めて映画出演した作品でもある。
架空の近未来を描いた作品の衣装全般を、ジャン=ポール・ゴルチエが担当した。彼らしいエッジの効いたスタイリッシュな衣装はスクリーンでも遺憾なく発揮されている。
Brand Recommendation
フランス生まれのファッションデザイナーとして多くのファンを持つ。ピエール・カルダンのアシスタントとして腕を磨き、1976 年に自身の名を冠したブランドをスタートさせる。
5.Yohji Yamamoto(ヨウジヤマモト)×『BROTHER』
撮影の大半をLA で行い、当時すでに絶頂だった北野武監督映画のアメリカ本格進出第一弾として話題を呼んだ。アメリカに逃亡した日本のヤクザ山本と、その一味が抗争の末に敗北していくストーリー。
主演のビートたけしほか、脇を固めるヤクザの衣装も含め、すべてをヨウジヤマモト(=山本耀司氏)が手掛けた。ブラックを基調とした同ブランドならではのコンセプトが作品のテイストと見事にマッチ。たけしはプライベートでも彼のブランドを好んで着ている。
Brand Recommendation
戦後の雑踏の新宿で感性を磨き、若い頃からファッションデザイナーとして生きることを決意。1972年に自身のブランドを立ち上げ、コムデ・ギャルソンの川久保氏とパリに渡りショーを開催した。
6.Givenchy(ユベール・ド・ジバンシィ)×『麗しのサブリナ』
1954 年に公開され、『ローマの休日』に続き、ビリー・ワイルダー監督×オードリー・ヘップバーン主演のコンビ。この映画でヘップバーンが着用したパンツが“サブリナパンツ” と呼ばれ、当時大きなブームとなった。スクリーンでヘップバーンのドレスを担当していたのがフランスのファッションデザイナー、ユベール・ド・ジバンシィだ。
Brand Recommendation
服飾はもちろん香水や化粧品でもお馴染みのジバンシィの創立者。この作品以降、『おしゃれ泥棒』、『ティファニーで朝食を』などでヘップバーンのドレスを担当。ちなみに今もご存命だ。
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(出典/「Lightning 2016年8月号 Vol.268」)
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