【1930年代~】今のインディアンジュエリーの礎を作った偉大な作家が出現。
手軽なフレッド・ハービースタイルのジュエリーが全盛を迎える一方で、ナバホ族の作家は確実にその技術を磨いていった。シルバースミス(銀細工職人)から作家へステップアップした伝説の人物がこの年代より頭角を現す。それがここで紹介するフレッド・ペシュラカイだ。
ペシュラカイ(=ベシュラギ)とはシルバースミスという意味。彼は第一人者であるスレンダー・メーカー・オブ・シルバーの息子または孫という説がある。しかし1880年代に作られたことを考えると、年代的には後者の方が腑に落ちる。
独自のスタンプワークや、捻ったワイヤーでターコイズを縁取る意匠など、次々と洗練されたデザインを考案。’30年代にはニューメキシコ州のフォートウィンゲート寄宿学校でジュエリー製作を教え、後に偉大な作家となるケネス・ビゲイなどを指導した。
Fred Peshlakai(フレッド・ペシュラカイ)作のバングル
最近、フレッド・ペシュラカイのアーカイブを集めた本が出版されるなど、今も評価され続けているナバホ族のレジェンド。今までにない技術とデザインを編み出した。その一方で、学校で講師を務め、そのノウハウを惜しみなく後世の作家たちに伝えていった。
【豆知識】数々の名作家を輩出した伝説のショップも開店。
同じ年代に大きな影響力を持っていたのが、フランク・パタニア。1899年生まれのイタリア人で東海岸にて活躍した後に、サンタフェへ移住。1927年にサンダーバードショップという工房を構えた。そこで働いていたのが、ジョー・H・クィンターナやジュリアン・ロバートといった後に活躍する大物作家たちだった。
【1960年代~】民芸品から、高級デパートでも取り扱われるアートへと邁進し、巨匠誕生。
第二次世界大戦で勝利したアメリカは、空前の好景気を迎えた。様々なインフラが整い、人々のライフスタイルは一変した。車の普及率や性能の向上、大型旅客機の登場によって、鉄道の需要は減り、フレッド・ハービーは徐々に求心力を失っていく。そうした状況下でインディアンジュエリーは、優れたアーティストたちの出現によって、民芸品からアートへと進化を遂げる。その筆頭がチャールズ・ロロマ。
ホピ族のアーティストで、10代の頃からその才能を見出され、ニューヨークやパリに行く機会を与えられていた。その部族の伝統からかけ離れたコンテンポラリーなデザインは、多方面で評価され、サックス・フィフス・アベニューといった高級デパートでも取り扱われる。またフレッド・ペシュラカイの教え子であるケネス・ビゲイ、戦前からある名店サンダーバードショップやトーブターペン出身の作家たちが躍進。’30年代に植えられた種が、’60 ~’70年代に掛けて開花した。
Charles Loloma(チャールズ・ロロマ)
『着ける彫刻』と評される立体的なフォルムや美しいインレイワーク、アシンメトリーなデザインなどが特徴のホピ族の大作家。コンテンポラリー・インディアンジュエリーの第一人者と言われ、自家用ジェットを所有するほど大成功した。
Fred Thompson(フレッド・トンプソン)作のリング
1921年生まれのナバホ族の巨匠。2002年に他界。’30年代より名門として知られるトレーディングポスト『トーブターペン』で働き、‘70年代頃に独立。ターコイズとレッドコーラルを組み合わせたリング。(スカイストーン・トレーディング)
Joe H Quintana(ジョー・H・キンタナ)作のバングル
大人気アーティストであるシピー・クレイジーホースの父親でもある超が付く有名作家。リビングレジェンドであるジュリアン・ロバートと同じサンダーバードショップ出身。大きなブルージェムのバングル。(スカイストーン・トレーディング)
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