コカ・コーラ社の“歴史家”ライアンさんに聞く、コカ・コーラと映画の“深イイ”関係。

もうすぐクリスマス。街はイルミネーションで彩られ、人々が浮足立つこの一大イベントに不可欠なキャラクターがサンタクロース。サンタクロースと言えば、「大きな身体に真っ赤な衣装、白いあごひげ」のイメージだが、実はこのサンタクロース像を作ったのは、コカ・コーラなのだ。

1931年、アメリカの雑誌「サタデー・イブニング・ポスト」に掲載された広告。画家であるハドン・サンドブルムが描いた、真っ赤なコスチュームに白いあごひげ、見るからに陽気なサンタクロースは、人々の心を捉え、その後のサンタクロースが、この姿になっていったというわけだ。

上の写真が1931年に描かれたハドン・サンドブロムのサンタクロース。この絵が、その後のサンタクロースのイメージを決定づけた。今回のテーマは、そんなクリスマスとも縁の深いコカ・コーラがテーマ。

コカ・コーラのいままでの広告や歴史的な遺産など膨大なアーカイブを管理する責任者、テッド・ライアンさんに、コカ・コーラがなぜ、世界中の人々に愛されるようになったか、興味深いお話をうかがった。

仕事は「コカ・コーラに関するものすべて」。

―――まずは、ライアンさんの仕事内容について教えてください。

私の肩書は、「ザ コカ・コーラ カンパニー ヘリテージ コミュニケーションズ部ディレクター」です。よく「ヒストリアン」とか「アーキビスト」と言われます。ヒストリアンとは、読んで字のごとく「歴史家」、アーキビストとは「アーカイブの管理者」という意味ですね。つまり、過去に作られたコカ・コーラの広告やコカ・コーラをテーマにしたアート作品、ひいてはコカ・コーラが登場する映画や本など、コカ・コーラに関するすべてのアーカイブを集めて、管理しています。

―――コカ・コーラに関するモノすべて……膨大な数でしょう?

そりゃ、とんでもない数ですよ(笑)。いまでも、ネットオークションなどを見て、探し続けています、未だ見ぬコカ・コーラのアーカイブをね。新たな発見があって、とても楽しい作業です。年に3回、広告専門のオークションが開催されるのですが、欠かさず出席しています。先日も、マリリン・モンローがコカ・コーラを持っている写真を購入しました。もちろん自腹ではありませんよ(笑)。ザ コカ・コーラ カンパニーでは、アーカイブを集めるための予算もちゃんと組まれているんです。

―――いままで購入したアーカイブの中で、最も印象に残っているものはなんですか?

コンツアーボトルの名前で知られるガラス製のコカ・コーラ ボトルのオリジナルスケッチですね。コカ・コーラのアイコンともいえるコンツアーボトルですが、デザインしたのはインディアナ州テレホートのルート・グラス社です。同社のアレキサンダー・サミュエルソンとアール・R・ディーンがデザインしたのですが、そのスケッチ画をルート・グラス社の血縁の者が持っていたんです。それをオークションで購入しました。嬉しかったですね。

現在、探しているのはノーマン・ロックウェルの絵です。彼の作品の中でコカ・コーラが登場するものを探しているのですが、そのほとんどは購入しました。しかし、あと3点だけ、手に入っていないものがあるんです。TVでも告知して情報提供を求めているんですが……まだ見つかりませんね。

こちらがライアンさんが購入したスケッチ画(写真右)と、それをベースに作られたコンツアーボトルの原型。1913年版の大英百科事典に掲載されていたカカオ豆の挿絵をヒントにデザインされた。現在のボトルと比べてフォルムの凹凸が大きい。この原型のボトルをよりスリム化して改良したものが翌年世の中に発売され、現在でも同様の形状で売られている

―――そうして集めたアーカイブは、どのように活用しているのですか?

基本的には資料として保管・管理しているのですが、例えば映画製作に協力する場合もあります。ロサンジェルスに「プレミア・エンターテイメント」という映像制作の会社があるのですが、そこと提携して、映画の中で登場するコカ・コーラの昔の広告や自動販売機などに関してのアドバイスをしたり、貸し出したりしたりもします。昔のアメリカの風景をリアルに再現する場合、そうした演出はなくてはならないのです。映画と言えば、昔の映画にもよくコカ・コーラが登場しているんです。そうしたシーンなどをチェックするのも、私の仕事のひとつです。まぁ、趣味を兼ねてですけど(笑)

コカ・コーラは映画の名脇役だ。

―――ライアンさんが観た映画の中で、コカ・コーラが印象的だったシーンは?

たくさんあり過ぎてわからない(笑)。ちなみに、1910年頃のサイレント映画の時代から、コカ・コーラのビルボードがシーンに映ってたりしています。1920~30年代には、実際のコカ・コーラの商品が画面に登場し始めます。そういう影響もあって、1930年代にコカ・コーラは『ターザン』のジョニー・ワイズミュラーやクラーク・ゲーブルなどのハリウッドセレブと契約し、広告に出てもらったりしました。

クリスマスシーズンに観るなら、おすすめは『素晴らしき哉、人生!』(1946年公開)ですね。その昔、コカ・コーラはソーダファウンテン(薬局・カフェ・お菓子屋のような店)でグラス売りされていたんですが、この映画の冒頭で、ソーダファウンテンでコカ・コーラが売られているシーンが出てくるんです。

また『A Christmas Story』(1983年公開/日本未公開)もおすすめです。クリスマスの日にコカ・コーラのサンタクロースが中華レストランに登場するという有名なシーンがあります。思いつくままに、コカ・コーラが登場する映画を挙げてみると……いま新作が公開されていますが、1作目の『ブレードランナー』(1982年公開)にも屋外のコカ・コーラのビルボードが出てきますし、『スーパーマン』(1978年公開)では、悪人がNYのタイムズスクエアのコカ・コーラの看板に投げ飛ばされます。

『ミラクル・ワールド ブッシュマン』(1980年公開/現在では『コイサンマン』に改題)では、飛行機から投げ捨てられたコカ・コーラのボトルを中心に、ストーリーが進んでいきます。『ブルース・ブラザーズ』(1980年公開)や『ブレックファスト・クラブ』(1985年)でも、コカ・コーラが登場する印象的なシーンがありますね。

とにかくいろいろな映画に、コカ・コーラは登場しているので、映画を観る時でも気が抜けません。私の家族は、私と一緒に映画を観るのを嫌うんです。とにかくコカ・コーラのサインに目がいってしまい、見つけるたびにビデオをストップして写真を撮るからです(笑)。みなさんが観た映画の中でもしコカ・コーラが出ていたら、是非教えてください!

―――我々も、映画の中でコカ・コーラをチェックするようにします(笑)。今日はありがとうございました。

お話を伺ったのは・・・・

テッド ・ライアン●ザ コカ・コーラ カンパニー ヘリテージ コミュニケーションズ部ディレクター
1997年6月より、ザ コカ・コーラ カンパニーの歴史を物語る物品や、デジタルアーティファクトのコレクションを管理する責任者を務める。ザ コカ・コーラ カンパニーが過去50年間に制作した約25,000点以上の広告を復元、デジタル化、カタログ化し、米国議会図書館に寄贈するプロジェクトにおいてプロジェクトマネージャーを務めた。また、アトランタにあるコカ・コーラの博物館「ワールド オブ コカ・コーラ」では、歴史展示の構成を手掛けたデザインチームの主要メンバーとして、アンディ・ウォーホル作品の豊富な展示を誇る「ポップカルチャー」ギャラリーのキュレーションを担当。

【関連サイト】
https://www.cocacola.co.jp/stories/textiles-collection
https://www.cocacola.co.jp/stories/screen_2
https://www.cocacola.co.jp/stories/album
https://www.cocacola.co.jp/stories/tokyoolympic-1

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ラーメン小池
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ラーメン小池

アメリカンカルチャー仕事人

Lightning編集部、CLUTCH magazine編集部などを渡り歩いて雑誌編集者歴も30年近く。アメリカンカルチャーに精通し、渡米歴は100回以上。とくに旧きよきアメリカ文化が大好物。愛車はアメリカ旧車をこよなく愛し、洋服から雑貨にも食らいつくオールドアメリカンカルチャー評論家。
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