2ページ目 - 無類のマンガ好き、声優・手塚ヒロミチ。「捨てられるわけがない、マンガこそ我が人生」

マンガ…それは「人生」そのもの

現役バリバリのマンガ読みである手塚。そんな彼に、人生のベストマンガをたずねてみた。

「藤田和日郎先生の『からくりサーカス』(97年)と『うしおととら』(90年)です。自分は親が共働きで、母が働いているスーパーが20時に終わるので、お店で雑誌を立ち読みして待っていたんですよ。その時に読んでいた『週刊少年サンデー』に『からくりサーカス』が掲載されていたんですが、ちょうど鳴海が勝を守って、煙が晴れたら腕だけ残っているシーンが載っていたんです。このシーンを見てめちゃめちゃ衝撃を受けて、それから『からくりサーカス』を読むようになり、さらに前作の『うしおととら』も読むようになりました。

ただ、『うしおととら』を読んだのはそれが最初じゃなくて、それ以前に僕が風邪で学校を休んだ時に、父がなぜか『うしおととら』の真ん中の巻だけ買ってきてくれたことがあったんです。それがちょうど潮が獣の槍に取り込まれて、女の子たちが順番に櫛で髪をすいていくあたりだったんです」

まさに『うしおととら』屈指のベストエピソードである。読んだことのある方なら、思い出しただけで胸が熱くなること必至だが、いきなりそこから読まされた手塚は、当初はあまりピンとこなかったという。

「その時は全然話がわかんないと思って読むのをやめたんですが、後でバカだったなと思いましたね(笑)。あんないい巻を、なんの情報もなく読まされて…。一からストーリーを追ってきた時に、『この巻の重要さはやばいぞ、お前!』みたいな。女の子たちが潮を好きであるがゆえに揉めながら髪をすいていくという流れはすばらしいです。だから幼少期の思い出も込みで『からくりサーカス』と『うしおととら』です」

ベストマンガの思い出話に火がついた手塚。その熱い思いが次から次へとこぼれ出てくる。

「藤田先生のマンガって熱いですよね。好き嫌いはあると思うんですけど、主人公が泥くさいのがいいと思います。とび抜けて熱い。変におしゃれな感じじゃないところが、胸に響くんですよね。僕はどちらかというときれいごとを言われると、斜に構えちゃったり冷静に見ちゃったりするんですけど、あれだけ熱いと何も言えなくなります。実際のところ、僕だってああいう熱いものが好きなんです。やっぱり少年マンガは最高だって思います」

最後に、手塚にとってマンガとは何か、と聞いてみた。

「人生の宝物かな。マンガがなかったら自分の人生が変わっていただろうって思います。最初はマンガ家になりたいと思っていたのも、死ぬほどマンガが好きだったからだし、マンガが好きじゃなかったら、そもそもアニメを観ようとか声優になろう とか思うこともなかったはずです。だから…人生です」

※1…大和海人(原作)とはやさかゆう(まんが)による作品(全1巻)。
※2…『SDガンダム外伝』シリーズに登場する光の騎士。
※3…松沢直樹が『月刊少年ガンガン』に1991年〜2000年に連載した。
※4…富士見書房(現・KADOKAWA)が1988年に創刊した、月刊ライトノベル雑誌。
※5…神坂一によるライトノベル。「美少女天才魔道士」(自称)リナ=インバースの冒険譚。
※6…小説家、脚本家。数多くのアニメやゲーム作品に携わる。
※7…ヒット出版社発行の成人向けマンガ雑誌。

※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。

(出典/「昭和50年男 2023年5月号 Vol.022」)

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