チャンピオンのビンテージの高騰が止まらない! 私物を引っ張り出して、年代判別をやってみた。

  • 2022.10.21  2022.06.14

ここ数年のヴィンテージ市場の高騰といえば、リーバイスのデニムが顕著だが、他にも王道のブランドは顕著なものがある。その代表的な例が、チャンピオンのリバースウィーブ。いわゆる90年代の古着ブームを経験している40代以上にとっては、「昔は数千円だったものが、数万円! 桁ひとつ変わっているよねー」なんて冷ややかにみている向きも多いが、古着は天然資源。年を追うごとに数が減り、または人気の波が来れば、当然のごとく価格は高騰する。古いものを愛する人が増えることは、とても良いことと思う一方で、「あの時手放していなければ……」なんて思う人も多いことだろう。

こうなると自分の持っている物や持っていたものの価値はどの程度なのかが気になるというもの。それを知る手がかりは、やはり年代や希少性。「古いものほど偉い」のがビンテージ界では当然の価値観なのだが、その判別はそれらに付属する「タグ」によって行われることが多い。では、実際にタグから年代を判別してみよう。

似たように見えて、実は異なる多彩なタグ。

まずは、私物を引っ張り出し、タグを眺めてみる。同じように見えるものも多いが、実は少しずつ異なるのがお分かりだろうか? タグ自体は似ているものでも、素材の混合率が異なっている。アスレチックウエアとして着用されるシチュエーションや競技によって、素材の組成が異なるのは当然といえば当然。より快適に競技に向き合うためにチャンピオン社が開発・改良を重ねた歴史とも言い換えることができる。

タグから年代を読み解く。

私物からの紹介となるため、決して希少なものばかりではなく、年代やアイテムも偏った紹介となるが、ひとつずつ年代判別を行ってみたい。

まずはチャンピオンを代表するアイテムのひとつであるスウェットシャツ。と言っても、これは「ダブルフェイス」と呼ばれる珍品系。ウォームアップ用のリバースウィーブの防寒性をより高めるために裏側から同じスウェット生地を縫い付けたという代物で、カンガルーポケット付きのクルーネック仕様。いわゆる「トリコタグ」と呼ばれるものだが、同じスウェットシャツのトリコタグでもコットンの混合率はさまざま。82%、90%、89%など時代によって異なることからチャンピオン社の創意工夫が伺える。写真は「Cotton(コットン)89%、Aclyric(アクリル)8%、Rayon(レーヨン)3%」の表記があり、この組成は1985〜1990年の5年間のみ製造されたものだという。洗濯した場合、かなり長めの乾燥時間がかかるため、よく晴れた日の洗濯をおすすめしたい。

次もチャンピオンでは定番のTシャツ。ARMYの顔料プリントが施されたもので、これも上のスウェットと似たようなトリコタグだが、同じトリコタグでもTシャツとスウェットでは判別が異なる。組成は「POLYESTER(ポリエステル)50%、COTTON(コットン)50%」の表示で、Made in U.S.A.表記やRN26094の表記がタグの表面にあるため後期タイプと分類され、1985〜1988年の製造と推測される。杢グレーやHeather Gray(ヘザーグレー)と呼ばれる人気のカラー。

上のTシャツと同様の人気カラーだが、組成は「COTTON(コットン)88%、Rayon(レーヨン)12%」。1973〜1982年に製造され「バータグ」を付属する、いわゆる「ハチハチイチニー」と称される素材。コットン特有のカサカサ感とレーヨン由来のしっとり感を両立した心地よい肌触りが特徴だ。主にTシャツ用に開発された素材なのだが、これは同素材を使ったタンクトップ。陸上競技用と思われるグラフィックの「染み込みプリント」が施されたもの。タンクトップというだけで非常に安価で手に入れたが、同じデザインのTシャツだったとしたら高騰していてもおかしくない。

今度はフットボールTシャツ。肩のヨークがないタイプで、背面には79の文字。ミシシッピ川でフェスティバルを行った際の、レンジャー隊用のプリントが前面に施されており、おそらく開催年を示しているため、70年代後半の製造。おそらく1979年のものだろう。タグは通称バータグと呼ばれるもので、100%コットンの表記。実はこれ、私の生まれ年なので、思わず購入したもの。「自分と同じだけの年を重ねてきているのか……」と感傷に浸るのも古着の楽しみ方のひとつだ。生まれ年のほか関連数字と出会えたら、それは運命。後悔する前に購入しましょう。

コーチジャケットとも呼ばれるウィンドブレーカー。セットインスリーブの裏地なしでIDEALのアルミジッパーを備えた個体。ブランドタグの横の白いタグには100%Nylonの表記。60年代から70年代前半と推測され、この時代のチャンピオンのウインドブレーカーやブルゾンなど、アウターとして着用されたアイテム特有のタグを備えている。袖付けや裏地の有無、ボタン/ファスナーの選択など、オーダーによって細かく仕様変更をできたと言われている。

ここからは珍品系。トラック競技などで使われたショートパンツで、白いトリミングが特徴的だ。左前のフロッキープリントにはふたつのナンバリングが施され、おそらくミネソタ州マトミディの高校で着用されたもので、バータグを備えていることもあるため、77年のものと推測される。股下が短く、ポケットも付属しないため普段着としての着用はためらう人もいるかもしれないが、ランニング時に着用したい。

最後は、ボーダー柄の珍しいタンクトップ。BALL STATEの染み込みプリントから、インディアナ州の州立大学で着用されたと推測され、通称「プロダクツタグ」と呼ばれる簡素なデザインのタグを付属する。プロダクツタグは2種類存在し、いずれも1967〜1971までの4年間ほどしか製造されていないとされているが、こちらは社名表記が青いパターン。そもそもこういったボーダー柄のカットソー素材そのものを見かける機会は少ないと言えるだろう。

古着を通してチャンピオンの歴史に触れる。

こうして年代や素材、プリントデザインや仕様などによって、どんな時代にどんなシチュエーション、場所で着用されていたのかを推測することができるのはチャンピオンのビンテージアイテムならではの楽しみ方。特定のアイテムに人気が集中しているのは事実だが、注目されていない珍品などを見つけることができるのも、アイテムの幅が広いチャンピオンの特性だろう。誕生から100年余り、アスレチックウエアの頂点として輝く「チャンピオン」の歴史に、古着店や自らのワードローブを通して触れてみてはいかがだろうか。

今回は古着の世界では王道のブランドである「Champion」を例にとり、ビンテージの年代判別を行ってみた。教科書代わりとした本は以下。ぜひご参考に。

「VINTAGE CHAMPION」では、1919年に創業した「Knickerbocker Knitting Mills」が、1923年に「Champion Knitwear Mills」に社名変更を行ってから1990年代に至るまでに生み出した貴重なアーカイブを収録している
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2nd(セカンド), Lightning, CLUTCH Magazine

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