革ジャンから茶器まで……業界屈指の趣味人「Langlitz Japan」岡本隆則さんの、一生手放せないヴィンテージ。

ヴィンテージという言葉が流行するはるか前から、この世界にのめり込み、人生を捧げてきた人たちがいる。彼らが築いたコレクションは、現在のブームによって“スーパーヴィンテージ”と呼ばれるほどの存在となり、今や文化遺産の域に達している。ここで取り上げるのは、その価値を守り、未来に伝えようとする人々である。今回紹介するのはバイクやクルマ、服など多趣味で知られるLanglitz Japan代表の岡本氏。モーターサイクルやレザーウエアなど、アメリカンヴィンテージはもちろん、ヨーロッパ、日本など、網羅するジャンルも幅広く、業界でも屈指の趣味人である彼が手放せないものとして選んだものとは。

人とモノとの密接な繋がりがあるから手放せない。

アメリカのモーターサイクル史において欠かすことのできないLanglitz Leathersの日本総代理店、Langlitz Japanの代表であり、ヴィンテージを骨子とした独自の世界観で服好きを魅了するBLACK SIGNの代表も手掛ける岡本隆則氏。クルマ、バイク、服、道具など、国籍やジャンルを問わず「旧いもの」への造詣が深いことで知られる彼にとって、手放すことができないヴィンテージとは? 岡本氏が愛してやまない貴重なヴィンテージコレクションの一部を見せてもらった。

「ヴィンテージの入り口はレザージャケットやデニム、バイクなど、アメリカンヴィンテージが始まりでした。その後、ものづくりの観点から徐々にイギリスやフランス、ドイツといったヨーロッパもののデザインの面白さにも気づき、ここ数年は「茶道」をきっかけに、和装や茶器、掛け軸など、日本で生まれた伝統的かつ文化的なものに興味を持ち、現在も勉強中です。個体の旧さだけではなく、そのものが作られた時代背景や歴史の奥深さを知ることができるのもとても楽しいですね」

数あるコレクションの中から厳選した岡本氏のとっておきのヴィンテージ。他では絶対に見ることができない博物館級の彼らしい逸品。貴重なアイテムなのはもちろんだが、手放せないには根本にもっと大きな理由がある。

「これまでいろんなヴィンテージを手にし、触れてきましたが、今回紹介するヴィンテージは、ただお金を出して買ったものではなく、人との出逢いがあったからこそ、譲り受けたり手に入れることができたものなんです。そのモノが作られた背景はもちろんどれも素晴らしい歴史ではありますが、その後、誰の手に渡り、どう使われてきたか、手にしてきた所有者の歴史もわたしにとってはとても重要で、その人との関係性があったからこそ手に入れたもの。一生手放すことはないでしょうね」

「ただお金を出して買ったものではなく人との出逢いありきで手に入れたもの」

Speedway Togs. Cascadeの製造開始は1948年。この年に製造されたSpeedway Cascadeで、存在が確認されている2枚の内の1枚。

Speedway Togs. Langlitz Leathers創業年の1947年、ポートランドのハーレー・ディーラーであるEast Side Motorcycle用に製造したコロンビア。タグがダブルネームになっており、全てのオプションが完全に揃う逸品。

1910年代のPATRIA製の懐中時計とGALCIAの坂本氏がモディファイドしたヴィクトリア時代のウォッチ・チェーン。ギョーシェ・ダイアルに手書きのブレゲ・インデックス、裏面には神話の鳥獣と蛇が彫刻されているいる超希少な逸品。

昭和40年代に製作された本鼈甲眼鏡は正真正銘ジャパンヴィンテージ。白甲とオレンジ甲のコンビ、真黒甲、張り甲のブロー・タイプ、3本とも蝶番を含めメタル部分は全て18KYGのパーツが使用された豪華な仕様となっている。

1980年、ジョン・レノンと親交のあったスタンリー・マウスが、暗殺事件の記事が載った翌日の新聞にジョンの顔とALL YOU NEED IS LOVEのメッセージを追悼の意を込め2枚プリントした。これはその中の1枚。

1937年、ジョー・ペトラリがナックル・ヘッドでスピード・レコードを樹立。2001年、ハーレー本社からジェフ・デッカーにジョーと実車の原寸大ブロンズ像製作の依頼があった際にジェフがスケッチしたスケール原画。

江戸時代の名僧、沢庵宗彭の一行書「喝下走早雷」。金沢の古寺に伝来した軸で、うぶ表装のまま残っており真珠庵の極めが添う。

この記事を書いた人
CLUTCH Magazine 編集部
この記事を書いた人

CLUTCH Magazine 編集部

世界基準のカルチャーマガジン

日本と世界の架け橋として、国外での販路ももつスタイルカルチャーマガジン。本当に価値のあるモノ、海外記事を世界中から集めた、世界基準の魅力的コンテンツをお届けする。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

【UNIVERSAL OVERALL × 2nd別注】ワークとトラッドが融合した唯一無二のカバーオール登場

  • 2025.11.25

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【UNIVERSAL OVERALL × 2nd】パッチワークマドラスカバーオール アメリカ・シカゴ発のリアルワーク...

時計とベルト、組み合わせの美学。どんなコンビネーションがカッコいいか紹介します!

  • 2025.11.21

服を着る=装うことにおいて、“何を着るか”も大切だが、それ以上に重要なのが、“どのように着るか”だ。最高級のプロダクトを身につけてもほかとのバランスが悪ければ、それは実に滑稽に映ってしまう。逆に言えば、うまく組み合わせることができれば、単なる足し算ではなく、掛け算となって魅力は倍増する。それは腕時計...

着用者にさりげなく“スタイル”をもたらす、“機能美”が凝縮された「アイヴァン 7285」のメガネ

  • 2025.11.21

技巧的かつ理にかなった意匠には、自然とデザインとしての美しさが宿る。「アイヴァン 7285」のアイウエアは、そんな“機能美”が小さな1本に凝縮されており着用者にさりげなくも揺るぎのないスタイルをもたらす。 “着るメガネ”の真骨頂はアイヴァン 7285の機能に宿る シンプリシティのなかに宿るディテール...

グラブレザーと、街を歩く。グラブメーカーが作るバッグブランドに注目だ

  • 2025.11.14

野球グローブのOEMメーカーでもあるバッグブランドTRION(トライオン)。グローブづくりで培った革の知見と技術を核に、バッグ業界の常識にとらわれないものづくりを貫く。定番の「PANEL」シリーズは、プロ用グラブの製造過程で生じる、耐久性と柔軟性を兼ね備えたグラブレザーの余り革をアップサイクルし、パ...

スペイン発のレザーブランドが日本初上陸! 機能性、コスパ、見た目のすべてを兼ね備えた品格漂うレザーバッグに注目だ

  • 2025.11.14

2018年にスペイン南部に位置する自然豊かな都市・ムルシアにて創業した気鋭のレザーブランド「ゾイ エスパーニャ」。彼らの創る上質なレザープロダクトは、スペインらしい軽快さとファクトリーブランドらしい質実剛健を兼ね備えている。 日々の生活に寄り添う確かなる存在感 服好きがバッグに求めるものとは何か。機...

Pick Up おすすめ記事

今こそマスターすべきは“重ねる”技! 「ライディングハイ」が提案するレイヤードスタイル

  • 2025.11.16

「神は細部に宿る」。細かい部分にこだわることで全体の完成度が高まるという意の格言である。糸や編み機だけでなく、綿から製作する「ライディングハイ」のプロダクトはまさにそれだ。そして、細部にまで気を配らなければならないのは、モノづくりだけではなく装いにおいても同じ。メガネと帽子を身につけることで顔周りの...

この冬買うべきは、主役になるピーコートとアウターの影の立役者インナースウェット、この2つ。

  • 2025.11.15

冬の主役と言えばヘビーアウター。クラシックなピーコートがあればそれだけで様になる。そしてどんなアウターをも引き立ててくれるインナースウェット、これは必需品。この2つさえあれば今年の冬は着回しがずっと楽しく、幅広くなるはずだ。この冬をともに過ごす相棒選びの参考になれば、これ幸い。 「Golden Be...

雑誌2ndがプロデュース! エディー・バウアー日本旗艦店1周年を祝うアニバーサリーイベント開催決定!

  • 2025.11.21

エディー・バウアー日本旗艦店の1周年を祝うアニバーサリーイベントを本誌がプロデュース。新作「ラブラドールコレクション」や本誌とのコラボなど、ブランドの情熱が詰まった特別な9日間を見逃すな! 来場者には限定のブランドブックを配布! 今回のイベントに合わせ、「エディー・バウアー」をもっと知ってもらうため...

グラブレザーと、街を歩く。グラブメーカーが作るバッグブランドに注目だ

  • 2025.11.14

野球グローブのOEMメーカーでもあるバッグブランドTRION(トライオン)。グローブづくりで培った革の知見と技術を核に、バッグ業界の常識にとらわれないものづくりを貫く。定番の「PANEL」シリーズは、プロ用グラブの製造過程で生じる、耐久性と柔軟性を兼ね備えたグラブレザーの余り革をアップサイクルし、パ...

「アイヴァン」からニューヨークに実在する通りの名前を冠した新作アイウエアコレクション登場

  • 2025.11.21

ニューヨークに実在する通りの名前を冠した「アイヴァン」の新作コレクション。クラシックな要素をサンプリングしながらも現代の空気感を絶妙に捉え服と同等か、それ以上にスタイルを左右する究極のファッショナブルアイウエア。 Allen 2023年、NYに誕生した「ビースティ・ボーイズ・スクエア」。その付近で出...