ディアスキンのプロ集団が作り上げた最高傑作。
’90年代のカジュアルファッションにおいてレザージャケットと言えば、牛革か馬革が主流だった。着込まれた革の迫力が求められ、当時は重厚感がある革を採用したジャケットが人気だった。
時は流れ2010年代になると「茶芯」や「エイジング」といった言葉が誕生。革ジャンのマーケットは成熟し、次なる盛り上がりを見せ始めた。英国ライダースで名を広めたシープスキンを筆頭に、鹿革やキップレザーなど軽快な着心地の革を採用したジャケットが台頭。中でも鹿革の注目度は高い。しなやかで、保温性と通気性に優れる。経年変化も楽しめる。王道から外れた印象だけに、玄人ウケする革でもあるが、その快適さはビギナーからも支持を集めている。
そんな注目株の鹿革の扱いを得意とするブランドと言えばThe Flat Headは外せない。ジーンズでも有名なブランドだが、近年はレザーブランドとしての立ち位置も確立。ライダースはもちろん、レザーベストなどラインナップも豊富。中でも鹿革で仕立てたシャツは創業時から作り続けている定番アイテムで、現在も安定した人気を誇るベストセラーだ。
そして2025年。The Flat Headの鹿革ラインナップに新たなモデルが投入される。デザインのモチーフは’30年代のスポーツジャケット。シンプルなデザインとクラシカルな佇まいで上品な着こなしが楽しめる。鹿革本来の柔らかさを追求したことで、渋なめし&素仕上げというレシピに辿り着いた。革を担当したのは奈良にある老舗タンナー「藤岡勇吉本店」。鹿革専門のタンナーと長年の関係性を築いてきたからこそ生み出せた特注の革は、手に吸い付くような仕上がりで、エイジングも期待できる自信作なのだとか。
生産背景にもこだわりが満載。The Flat Headの革専門工房にて裁断から縫製まで一貫して行われているのが強み。伸縮しやすく扱いが難しいとされる鹿革も、熟練度の高い革職人が多数在籍しているため仕上がりも美しい。
全ての工程において長年ディアスキンを扱うプロ集団が関わっている最新作。どんな着心地と経年変化が味わえるのか? その答えは今秋に判明する。

¥319,000_[size36-44]
¥352,000_[size46,48]
ジッパー類はヴィンテージと年代を合わせたデザインを採用。ベル型の引手とチェーンジップは1930〜’40年代の旧い意匠。時代感を意識し、細部まで一切の妥協がない作り込みもThe Flat Headの魅力である。
裏地にはオリジナル生地のレーヨンカルゼを採用。超長繊維レーヨンを綾織りにすることで、強度と滑らかさを両立。パープルの裏地はヴィンテージを再現した色合いで、美しい発色と上品な光沢を兼ね備えている。
背面は腰帯付きのクラシカルな構成。タックを入れることで背に丸みを持たせている。縫製糸は通常茶色だが新作では黒を採用。統一感のある表情と革の色気が強調され、完成度を高めている。
「伸縮性の高い革だからこそ生み出せるラインがある」とディレクターの宮坂氏。アクションプリーツなしでも着心地は快適。鹿革を知り尽くしたからこそ実現可能な洗練されたシルエットだ。
ボタンホールは「後メス式」ミシンで施す。枠を縫った後に刃でカットするため、縫製糸が擦れにくく耐久性も向上。合理的かつ堅牢な縫製仕様だ。旧式ミシンゆえ、メンテとセッティングには職人の経験と知識が必須。
両脇にはムレを防ぐ通気孔が備わる。金属ハトメではなく、カガリ縫いでヴィンテージと同じ仕様を再現。細部にまで職人の技が光り、存分にこだわりが詰まっているのもThe Flat Headの魅力。
カフスボタン仕様は戦前のスポーツジャケットらしいデザイン。艶のある大ぶりのボタンは水牛の角から削り出した贅沢な素材。細部まで妥協のない作り込みが、プロダクツに上質な雰囲気をプラスする。
鹿革は渋なめし、素仕上げで自然な柔らかさを追求。生前の傷は随所に見られるが、欧州では野生の証として好印象を抱く人も少なくない。迫力あるシボを均等に配置し、バランスを整えることで調和の取れた佇まいを実現。
【問い合わせ】
THE FLAT HEAD
Tel.026-275-3005
https://www.flat-head.com
(出典/「Lightning 2025年5月号 Vol.373」)
Text by K.Sakamoto 坂本桂樹
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