目指したのは、“上質な大人の普段靴“。東京浅草発のBROTHER BRIDGEのシューズ。

日本の伝統を受け継いだ“靴の街“、東京・浅草。ここに、世界が注目するシューブランドがある。「お客様へ上質な靴を届けたい。その橋渡しをしたい」。そんな想いから名付けられたBROTHER BRIDGEは、今や浅草から世界へ、大きな橋を掛けようとしている。

高品質を追求した大人の普段靴。

その昔、靴はすべて「上質」だった。職人がひとつひとつ手作りで想いを込めて丁寧に作った靴。そう、昔は「上質」とさえ、言われなかった。なぜなら、それが当たり前だったから。時代は変わり、大量生産・大量消費の波が押し寄せると、初めて「あの頃の靴は上質だった」と言われ始めるようになる。なぜか。上質でないものが跋扈し始めたからに他ならない。

そんな、かつては当たり前だった「上質な靴」を追い求めるブランド、それがBROTHER BRIDGEだ。ブランドの設立は2014年。代表を務める鈴木英明氏は、元々ブーツを製作するファクトリーの工場長だった人物。そこであらゆるブーツ、革靴の製作を叩き込まれてきた。真摯に靴作りに向き合ってきた鈴木氏にとって、「上質」とは、靴を語る上で最も大切な要素だった。

「世の中に『高級靴』も多く存在しますが、僕の作る靴は高品質ではあるけれど、高級靴ではありません。上質な靴を求める大人の普段靴を作りたいんです」。BROTHER BRIDGEの代表作であるHENRYを愛おしそうに眺めながら、そう話す鈴木氏。ちなみにBROTHER BRIDGEというブランド名は、「お客様と上質な靴の橋渡しをしたい」との思いから名付けられた。

BROTHER BRIDGEの靴は、大人の普段靴を目指すだけあって、どこか上品でドレスシューズのような気配すら感じさせる。HENRYも、かつてボクシングで使われていたようなスポーツ用のアスレチックブーツをベースにしながらも、シャープな美しさを漂わせている。

「流行に左右されないスタイル、たとえばワークやミリタリー、スポーツ、トラッド。それらの歴史やスタイルに敬意を表しつつ、そのスタイルに捉われることなく、自由にミックスさせていきたいんです。だって、いろんなスタイルを楽しみたいじゃないですか」

ヴィンテージをモチーフにする時も、ドレス感をプラスしたりしてBROTHER BRIDGEらしさを打ち出していく。ワークっぽくもあり、ドレスっぽくもある。スポーツシューズかと思いきや、ドキッとさせられる色香を放つ。これぞBROTHER BRIDGEの真骨頂であり、これこそが彼らの考える大人の普段靴のあり方なのだ。

自分の納得がいく上質な靴を作るため、自社ファクトリーまで作った鈴木氏。品質に対する、愚直なまでの真摯な姿勢。おそらく、全ての靴が上質だった“あの頃”の靴の在り方を、身をもって我々に見せてくれているのかもしれない。

自社生産にこだわるBROTHER BRIDGEの靴作り。

BROTHER BRIDGEでは、生産はほぼ全て自社ファクトリーで行なっている。そのため、サンプル制作や改良に関してもレスポンスよく対応できるのが、彼らの強みと言えるだろう。上質で堅牢、上品で長く愛せるBROTHER BRIDGEの靴は、こうして生み出されている。

タンニンを多く含んだコシのあるバケッタレザーをポストミシンで縫製していく。モデルによって差異はあるが、基本的に3㎝に12針というピッチで縫っていく。

こちらがHENRYで使用されるパーツの抜き型。革の繊維の方向を読みながら、パーツを抜いていく。BROTHER BRIDGEの靴作りは、ここから始まるのだ。

硬い革の場合、千鳥ミシンを使ってジグザグに縫うことで、足あたりが良くなるという。また足に触れる部分は、摩擦に強い「ベクトラン」という糸を使用する。

こちらでは靴の吊り込みやウェルトのぬい付けなどを行う。雑然としているように見えるが、様々な道具やマシンが機能的に配されている。

1990年代のアメリカ製トゥラスターに木型をセットして吊り込んでいく。このマシンは、油圧ではなく空気圧の力で作動する。

その後、手作業で丹念に吊り込んでいく。非常に力の必要な作業だ。この引っ張り加減で、完成した後の履き心地も変わってくるという。

ヒールの整形マシンにセットし、プレッシャーをかけてかかとの形を整えていく。この後、革の余剰分を手で切り取る工程へと移る。

BROTHER BRIDGEがこだわるグッドイヤーウェルト製法に不可欠なウェルトを縫っていく。こちらは最新のウェルト専用のミシン。

インソールにはドイツのカールフロイデンベルグ社製の軽い不織布のインソールを使用し、シャンクは硬めのものを使用している。

「ジュピター」と言われるアウトステッチャーマシンで出し縫いを行う。かなり力のいる作業だ。これでアウトソールが装着される。

サンドブラストでソール部分を綺麗に削り、なめらかにしていく。こうした細やかな作業の積み重ねが、靴の「美しさ」となって現れるのだ。

コバの角を削っていく「面取り」。アッパーに傷を付けないよう、慎重に行う。角が取れると、靴は見違えるように美しくなる。

コバの仕上げは、まず染料のみのベース材を塗り、その後ワックスを含んだ仕上げ材を塗る。ドレスのような凛とした佇まいへと変貌する。

BROTHER BRIDGEの自社ファクトリーで働く精鋭の職人、志田さん(右)と山本さん(左)。彼らの生み出す靴は、ワイルドさと上品さが同居した唯一無二存在感を放っている。

「上質な靴とは何か」「本当にいい靴とは何か」。職人たちが自問自答を繰り返しながら、今日もBROTHER BRIDGEの革靴はここで生み出されている。

【DATA】
BROTHER BRIDGE
Tel.03-6802-7992
https://brotherbridgetokyo.com/

(出典/「CLUTCH2024年2月号 Vol.94」)

この記事を書いた人
CLUTCH Magazine 編集部
この記事を書いた人

CLUTCH Magazine 編集部

世界基準のカルチャーマガジン

日本と世界の架け橋として、国外での販路ももつスタイルカルチャーマガジン。本当に価値のあるモノ、海外記事を世界中から集めた、世界基準の魅力的コンテンツをお届けする。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

「バンソン」のタフネスを、春夏へ。伝説の映画『EASY RIDER』とのコラボアイテムにも注目だ

  • 2026.04.02

バイカーブランドの代名詞、VANSON。今春は軽やかな布帛アイテムでイージーな装いを提案。そして伝説の映画『EASY RIDER』とのコラボレーションも登場。自由なスピリットを、そのまま服に落とし込んだラインナップを紹介する。週末のライドにも、街の散歩にも、着ることで体感できるフリーダムさを、VAN...

夏を装いが物足りない時のひと工夫。涼しげな素材と優しい配色で気軽に“レイヤード”を楽しむ

  • 2026.04.16

シャツとジーパン。それだけで成立することは分かっていながら、やっぱりちょっと物足りない、と感じたときに思い出してほしいキーワード。それは、レイヤードだ。ぜひ夏の装いのひと工夫に加えてもらいたい。 涼しげな素材×優しい配色のレイヤード 夏に着るトップスはシャツとインナーだけになりがち。だが、シャツの下...

大人の夏はゆるくてこなれ感があるコーデが気分。“アジ”のあるピグメントTとデニムさえあればいい

  • 2026.04.17

ハナから古着みたいに着られる、アジのある服が大好きだ。「ジムマスター」が今季推すピグメントTとデニムも、加工感が素敵。いい“アジ”を知り尽くすふたりも、どうやら気に入ったご様子です。 「MIA MIA Kuramae」ヴォーンさんは、ピグメントTにオールインワンを着崩して合わす! 色ムラによる古着ラ...

開襟シャツに刺繍入りジャケット……老舗デニムブランドが提案する、春夏のアメカジスタイル。

  • 2026.04.01

老舗デニムブランドであるステュディオ・ダ・ルチザンが提案する、春夏のアメカジスタイル。定番ジーンズからHBTのワークセットアップ、開襟シャツや刺繍入りジャケットまで、軽やかな素材と遊び心あふれるディテールで、春夏の装いを彩る。 [5743]ボーリングシャツ 1950年代のヴィンテージ・ボーリングシャ...

100本限定生産の「エイトG」大戦モデルは、春にぴったりの履き心地とメリハリのエイジング

  • 2026.04.02

無骨なまでに肉厚なデニムで知られるエイトG。その中でも比較的穿きやすく、この時期にぴったりの一本が、第二次世界大戦期のディテールを落とし込んだ大戦モデルだ。特濃インディゴで染め上げた糸ならではの、メリハリの効いたエイジングは、自分だけの一本になること間違いなしだ! ワイドシルエットが生む、クラシカル...

Pick Up おすすめ記事

【連載】ビートルズのことを考えない日は一日もなかった

  • 2024.02.05

80年代、私的ビートルズ物語。 ビートルズ研究と収集に勤しむビートルデイズを始めて早44年(Since1980)。 なにをするにもビートルズが基準だった『昭和40年男』編集長のビートルズ史を、 当時の出来事とともに振り返ります。

開襟シャツに刺繍入りジャケット……老舗デニムブランドが提案する、春夏のアメカジスタイル。

  • 2026.04.01

老舗デニムブランドであるステュディオ・ダ・ルチザンが提案する、春夏のアメカジスタイル。定番ジーンズからHBTのワークセットアップ、開襟シャツや刺繍入りジャケットまで、軽やかな素材と遊び心あふれるディテールで、春夏の装いを彩る。 [5743]ボーリングシャツ 1950年代のヴィンテージ・ボーリングシャ...

100本限定生産の「エイトG」大戦モデルは、春にぴったりの履き心地とメリハリのエイジング

  • 2026.04.02

無骨なまでに肉厚なデニムで知られるエイトG。その中でも比較的穿きやすく、この時期にぴったりの一本が、第二次世界大戦期のディテールを落とし込んだ大戦モデルだ。特濃インディゴで染め上げた糸ならではの、メリハリの効いたエイジングは、自分だけの一本になること間違いなしだ! ワイドシルエットが生む、クラシカル...

これまでで一番“アイビー”なクラークス誕生! 2026年春夏の新作にペニーローファーやボートシュー ズも登場

  • 2026.04.27

「クラークス」が2026年春夏の新作として発表した「デザートアイビーコレクション」。ブランドのアイコンである[デザートブーツ]や[ワラビー]、[デザートトレック]はアイビーらしい配色に落とし込まれ、アイビーの定番靴であるペニーローファーやボートシューズも顔ぶれに加わる。英国、アメリカ、日本。各国のカ...

これが“未来のヴィンテージ”。綿、糸、編み機……すべてに徹底的にこだわる唯一無二のカットソー

  • 2026.04.27

綿、糸、編み機……。素材から製法まで徹底的にこだわり、唯一無二のカットソーを創り続けるライディングハイ。「FUTURE VINTAGE(未来のヴィンテージ)」を目指す彼らのフィロソフィは如何にして形成されているのか。プロダクトの根幹をなす代表・薄 新大さんの“アイデアの源”に迫る。 More tha...